第42話(累計 第174話) ダムガール、皆で幸せを目指したい!
盛り上がる会議。
グリシュさまが自分から裏切るかもという話をすると、潔癖なリナちゃんが食って掛かる。
もちろん、彼は本気で裏切るつもりなど無いからこそ、こんな場で発言をしたに違いない。
なので、わたしはリナちゃんを諭し、本来の話題に戻す。
「わたくし達には法王国、魔族国家、そして謎の第三勢力が敵として存在します」
「法王国で襲ってきた有人型ゴーレムまで使うという賊か。正直、そんな奴らがいる以上オレ達が仲違いなどしてる暇はねぇな。魔王陛下だって、そんなやつらに襲われたら負けはしねぇだろうが、苦戦はするな」
わたしが新たなる存在の事を提示すると、苦々しい笑みを浮かべてグリシュさまが愚痴る。
……先程の発言が冗談というのを説明した訳ね。
「つまり、魔王さま。もしくは魔王軍なら有人型ゴーレムを倒せる目途があると。そういえば、わたくしの機体に対してもワイヤーや網を準備していましたね」
「ああ。オレ達は魔王陛下らから、巨人対策の戦いかたとして教えてもらったぜ。足元を狙い紐で絡ませて、転がしてしまえば勝ちだってな。実際、内乱でトロールや丘巨人なんかを、この手で倒した事があるな」
ようやく以前の戦いの際の種明かしをしてくださったグリシュさま。
やはり、魔王。
もしくは魔王に近しいものに知恵者。
こと、高度技術を理解する者がいる事が、これで確定した。
……でも、魔族軍全体でレベルアップしている訳じゃないから、そういう意味では勿体ないかな。わたしとティオさまを空中襲撃したとき以来、砲兵隊とかは見ないし。一般兵が弱いままじゃ、勝てないと思うんだけど。
「お察しの通りですわね。ただ、わたくしは元々対抗策に対する対抗策。ワイヤーカッターを準備していたので勝てた訳です。わたくしの知る『世界』では、ワイヤートラップが一時流行。それに対抗してワイヤーカッターが乗り物に装備されたことがあったんです」
「ん? 『世界』?」
「アミータお姉さま。良いのですか? お父ちゃんにお話して……」
わたしの言葉にピクリと反応するグリシュさま
彼ほどの人物であれば、わたしの言葉の意味も察する事が出来るだろう。
……今日、集まっている人。グリシュさま以外は、概ね私の事情を知っているしね。あ、ソルくんも居たか。
「後で詳細は個別に説明します。それで宜しいですね、グリシュさま?」
「おう。まずは話を進めてくれや。第三勢力ってのが気になる。敵の情報は魔王陛下に流して良いか?」
どうやら、粗方を察してくれていたらしいグリシュさま。
うなずいて先に話を進めるよう促してくれるが、第三勢力の情報について魔族国家側に流してもいいかと尋ねてきた。
「今すぐは即答出来ませんが、ティオさま達とも協議して魔王さまに流しても良い情報について取り決めましょう。グリシュさまもご自分の立場を守るために、それなり以上のお手柄が必要でしょうし」
「うむ、助かる。どうも、最近はこまめにアミータ殿の話を魔王が聴きたがる。既に法王国とのゴタゴタと遠征は向こうに情報が流れていて問い合わせがあったから、上手く法王国を黙らせてもう帰ってきているぜって報告したな」
自分が情報を魔王に送ったという話の流れで、魔族側が何処まで情報収集をしていたかを教えてくれたグリシュさま。
……あら、わたしが公爵領を留守にしていたのはバレていたのね。流石に大規模な車列が公爵領を離れるのを見たら、誰が移動したって情報が流れちゃうんだ。でも情報伝達の速度差から確認している間に、わたしが帰ってたので問題無しだったと。
「もう! お父ちゃんは魔王さまに何でも話しちゃだめだよぉ」
「リナちゃん。ちゃんとグリシュさまは考えて情報を流していらっしゃるわ。わたくしが留守の間には何も伝えず、事態が終わって帰還後に無事に帰ってきましたと伝えれば、魔王側も攻め込むのは辞めますもの。留守を狙うつもりがおありだったのなら、留守になる前に何時からいなくなると先に連絡すれば、それで勝ちでしたし」
わたしの回答にうなずきつつ、満足げな笑みを浮かべるグリシュさま。
彼が、わたし達との共存共栄を守るために最大限の協力をしてくれているのが嬉しい。
「さて、第三勢力の敵ですが、これまた高度な技術を要し、練度の高い兵でございました。種族は只人のみと推定。一部兵を捕縛に成功しましたが、即時自害をするような敵。彼らからは殆ど証言が得られていません」
……ここで、敵兵がどれだけ生き残っていたかの情報は流さないの。それにルキウスくんが尋問しただろう情報、まだわたしの耳には入っていないから嘘も言ってないしね。
「ですが、敵兵の使用していた兵器からはかなりの情報を得ています。銃火器は前込め式ではありますが、ライフリングが刻まれていましたし、銃剣も装備してました。更に敵ゴーレムは未知の金属で構成され、機体構造にも工夫がなされており、我らの物と遜色ないレベルにまでなっておりました。幸い、遠距離砲撃能力が無かったため、わたくしが半数以上を殲滅。ティオさまが残敵を掃討してくださいました」
「確かにその情報通りなら、魔王陛下の近衛兵や親衛隊でもないだろう。暗黒騎士らは銃火器を使わぬし、特別砲撃兵も大砲の再生産が上手くいっていないと聞く。完全に第三の勢力だな」
既に大砲の基礎原理くらいは理解しているグリシュさま。
わたしの説明で、魔族側からしても謎の組織が第三勢力だと証明してくれた。
「他にも法王猊下を狂わせた、この『外典』の回収を狙っていましたことから、あきらかに世界外からの干渉。というのが、わたくしの推論です」
「なんと!?」
「やっぱりですよね」
「ああ、アミちゃんが絡むと話が斜め上に飛んでいきますわ」
わたしの推論発表で、グリシュさまは驚き、ティオさまは納得。
もう慣れてしまったとヨハナちゃんは呆れ顔ながら、わたくしに微笑んでくれた。
「ということで、皆さま。現在の幸せで笑顔があふれる公爵領。そして王国や世界を守るために、これからも一致団結。必ず生き残りましょう」
わたしは場を纏める為に宣言する。
みんなが幸せで笑える世界を目指すと。
「そして、ダム! ダムをつくりましょう!」
「アミちゃん。あのね、最後までちゃんとしましょうよ。最後で願望丸出しじゃダメじゃないですかぁ」
「まあ、アミお姉さんらしいですよ。お姉さんの願望は世界を幸せにする物ですから良いじゃないですか」
そして、ついぞ漏らしてしまった願望に会場は爆笑状態。
ヨハナちゃんやティオさまに突っ込まれてしまったのは、お約束ではないか。
「うふふ。やっぱり笑顔が良いよね」
わたしは、うふふと笑みを浮かべ、愉快な仲間たちを眺めた。
(第四部 完結)




