第33話(累計 第165話) ダムガール、ピンチを乗り切る!
「はぁはぁ。の、残り三機ぃ!」
石畳に火花を散らす脚部ダッシュローラー。
急制動や急加速時に激しく炎を吹き出す機動スラスター。
敵ゴーレムから距離を取りつつ、逃げ回る愛機タロス号。
武装が中遠距離砲撃戦向きの仕様なので、近接戦闘を仕掛けられると困ってしまうからだ。
脚部や機動スラスターが悲鳴を上げるのを感じながらも、敵の振り回す巨大メイスから逃げ回るわたし。
上空で支援をしてくれているファフさんも、時折に超音波ブレスを放つのだが、ゴーレムの重装甲の前に殆ど効果が出ていない。
「も、もうバズーカーなんて当たらないわ! まだ弾が残っているけど、投棄して左手ガトリングガンに変更します」
「はい、アミちゃん」
……動き回る敵にバズーカー砲を当てるのは難しいよぉ。当たりやすいガトリングに変えなきゃ。
わたしは背後方向に逃げながら、右手に握っていたバズーカーを投棄。
左腕に装着していた大型ガトリング砲を敵に向けようと……。
「うわぁぁ!」
しかし、関節部ベアリングが無いはずの敵機が想像以上の踏み込みをしてきて、わたしの機体は押し倒されてしまった。
「ぐぅぅ」
「アミちゃん!!」
馬乗りになられて、倒れされた愛機。
操縦席からは、各関節から火花を放つ黒い騎士型ゴーレムがヒビの入った強化ガラス窓いっぱいに見える。
ガトリング砲を持つ左腕も脚で抑え込まれ、撃つ事が出来ない。
メイスが振り上げらえるのを見、心が恐怖でいっぱいになった。
「D<5%%!」
……何? この声というか、音は? あ、今はそれどころじゃない!
「くそぉぉ! 死んでたまるかぁぁぁ」
……こんなところで、まだ死ねないのぉぉ!
やけくそになったわたし。
汚い言葉を吐きながら、隠し武器。
悪あがきに機体胸部装備の小型ガトリング砲を起動。
装甲が薄いだろう敵機頭部に集弾させる。
「HCT@3###!」
再び意味不明の声らしき音を発し、顔をメイスを持った腕で庇う敵機。
「今だぁぁ!」
敵機がひるんだ隙。
それを狙い、バインダのアーム。
そして各部スラスターを全開運転しながら機体を転がす。
まるで悲鳴のような金属がきしむ音をさせながらも、やっと敵機の束縛から逃げたタロス号。
起き上がって、怯んだ敵機胸部へとぶつける様に左腕の大型ガトリングガンを突き刺した。
「いっけぇぇ!」
そしてゼロ距離。
いや、接射でガトリング砲を連続でぶち込んだ。
「F@T#U##……」
穴だらけになった敵機は、またまた謎の言葉を吐きながら崩れ落ちた。
「はぁはぁはぁ……。ヨハナちゃん、大丈夫?」
「し、死んだかと思いましたぁぁ。機体ですが、各部がいっぱいいぱいですぅ」
視線をサブモニターやヒビの入った前面強化ガラス窓から眼を離さず、ヨハナちゃんに問いかけるわたし。
魔力不足を感じながらも、まだまだ敵は残っているため、油断できない。
……かなり無理な機動をさせすぎちゃった。残り敵は二機!
レーダーに視線を向けると、二機ともタロス号に向かってきている。
挟み撃ちにあえば、流石にもたない。
急いで逃げようと思うが、スラスターも溶け落ちていて、もう機能の半分も生かせない。
また瓦礫だらけの路面では、脚部ダッシュローラーも機能が完全に生かせない。
「ああ、このままじゃ! ティオさま!! 助けて―!」
二体に囲まれる様に追い詰められるわたし。
思わず弱音を吐き、泣きながらティオさまの名前を叫んだ。
「アミおねえさーーん!」
その瞬間。
わたしが待ち望んでいた人の声。
ティオさまの声が戦場に大きく響いた。
「今、助けます!」
天空から声が響く。
また同じく魔導ロケットの甲高い機動音も聞こえた。
「いっけぇぇ!」
「きゃぁぁぁ!」
二人の若い男女の声が聞こえたかと思うと、空からティオさまの愛機が轟音と共にロケットランスを前に特攻してくる。
そして、わたしを襲おうとしてきた敵機にぶち当たり、一撃で文字通りバラバラに粉砕した。
「凄い! あれがロケットランスの威力なのね」
「お見事ですぅぅ」
ティオさまの機体が右手に握っていたロケットランス。
その基部には沢山のスラスターを装備しており、加速ブースターとしても使える複合武器。
高速移動からの魔法銀ランスによる突撃に耐えられる金属ゴーレムなど存在しない。
「残り一機! ティオさま、早く片付けましょう。あれ? 今の声は??」
少年の声は確かにティオさまの声。
もう一人の少女らしき声も、どこかで聞き覚えがある。
「うーん。誰だったかしら? あの女の子の声は?」
「アミちゃん、今は敵に集中です。あれ、ドゥーナさまですよ?」
ティオさまの機体から聞こえてきた声が誰かを考えながら、機体を動かしていたら、ヨハナちゃんに怒られてしまう。
そして、声の主がドゥーナちゃんだと教えてくれた。
「どうしてドゥーナちゃんがティオさまの機体に? あ、そうか。ジャンプスラスターやロケットランスの調整のために乗ったんだ!」
「そ、そうですぅぅぅ、姫さまぁ。怖いけど、アタイがやるしかないんですぅぅ」
「ドゥーナさん。舌を噛みますから、しゃべらないで!」
ティオさまは激突の衝撃で折れ曲がったロケットランスを捨て、左手に構えた盾を前に突き出す。
そして右手に持った燃え盛る剣で敵機を追い詰めていく
わたしも動きが鈍くなってきている機体を無理やり動かし、敵機を射界に追い詰めようと動かす。
「ここだぁ!」
ティオさまと激しい剣戟を繰り返す敵機の背後に回り込み、ガトリングを一射。
敵機の右足を吹き飛ばした。
「お姉さん、ナイスアシスト! やぁぁ!」
動きを止めた敵機に対し、燃える剣で真っ向切りを仕掛けるティオ様の愛機。
見事に一刀両断に敵機を切り倒した。
「お見事です、ティオさま! ヨハナちゃん、周囲にマナ反応は?」
「今のところ、ゴーレムクラスの反応は無し。レーダーに映るのは味方の武装トラックだけです」
周囲を警戒しながら、ティオさまの機体の側に歩み寄る。
純白で塗装されていたはずのティオさまの愛機。
火事による煤で薄汚れ、打撃を受け歪んだ装甲がとても痛々しい。
「アミお姉さん! このまま、敵を殲滅しますよ」
「はいです」
そしてわたし達は随伴歩兵と協力して、残敵を掃討し始めた。




