第32話(累計 第164話) ダムガール、戦場に舞い降りる!!
「ヨハナちゃん、機体の各部調子はどうかしら?
「全く問題無しですぅ。いつでも発進可能でございます。なお、魔導レーダーに、敵ゴーレムの存在を感知しました」
宵闇の空が白み始め、紫色になる。
紫霄と呼ばれる空の元。
愛機「タロス号改 三式」のコクピット内。
わたしはメインシートに座り、サブシートのヨハナちゃんからの状況説明を聞きつつ、機体のセットアップをする。
……今回、実戦で初使用する機能も多いから、気を付けなきゃね。あ、空気に煙の匂いがするわ。
「バインダーの様子はどうかしら? スラスターは?」
「テストの際に、連続可動が120秒を越えたらバーニア部分が溶けたとドゥーナさまから報告を聞いています。なので、稼働時間にはお気をつけて。休み休みにお使いくださいませとの事です」
こと、両肩に装備した大型バインダー。
わたしの機体以外には装備していない特殊な装備。
盾として、高速機動時のスタビライザーとして。
更に高機動スラスター、武装コンテナとしての役目を二枚の羽に纏めている。
……ティオさまの機体は、純白の騎士。肩と腰に機動スラスターを付け、脚部にダッシュローラーを装備した比較的スタンダードな機体。わたしの機体は特殊装備の実験機体になっているの。
「アミお姉さん! こちらは、いつでも発進可能です」
「了解ですわ、ティオさま。ファフさん、敵の状況をお知らせくださいませ」
<はい、アミータさま。今、敵ゴーレムは神殿宮殿を破壊しています。敵の姿ですが、黒一色の騎士型。王国内では見たことが無いタイプです。武装はメイスや剣に見えます。飛び道具は……持っていない様子。砲撃を受けても、自分から遠距離攻撃はしていません>
ファフさんの魔法通信と同時に、彼の背中の上に乗るゴブリン娘通信士の持つ映像魔道具からの中継暗視映像が、ゴーレムのモニターに映る。
「アミお姉さん。敵ゴーレムは、今まで見たことが無いタイプですね。どう攻めますか?」
「そうですねぇ。遠距離攻撃をしてこないのなら、わたくしが遠距離砲撃で牽制。その隙をついてティオさまが接近戦を挑むのが良いでしょう。随伴部隊は、うかつに接近せずロケット弾などで砲撃支援。といった感じですね。まずは、敵ゴーレムを殲滅しましょう。歩兵はその後に対処でしょうか?」
……手足を動かす際に火花が散っているのを見た感じ、ベアリングは使われていないのね。なら、動きはこちらの方が早いわ。
映像と報告から六体の敵ゴーレムが、魔法攻撃や銃撃を気にせず建物を破壊しているのが分かる。
火花を散らして動く腕に持つ大きなメイスを石壁に叩きつけ、そこにいる人ごと叩き潰している。
「ぐ! もう待てませんですわ。一気に飛翔して空中から砲撃しつつ接近します。ドゥーナちゃん、バズーカーの準備をお願い!」
「了解です、姫さま! イグナティオさまには、ロケットランサーを装備お願いです」
「ちょっと待って、お姉さん。ああ、もうしょうがない。後から必ず追いつきますから、無茶はしないでくださいね」
悲劇を見て、もう我慢できないわたし。
工兵隊から新装備の多連装バズーカー砲を受け取り、庭の真ん中。
開けた場所にゴーレムの脚を進める。
そしてしゃがみ込み、脚部に力を貯める。
羽を広げ、スラスターを露出。
長距離ジャンプの準備をした。
「ヨハナちゃん。飛翔方向を指示お願い!」
「はいです。えっと二時十五分の方向……。はい、そのままどうぞ」
「では、行きます! アミータ、タロス号、発進します!」
力をため込んだ脚を一気に解放。
地面を思いっきり踏み込んで飛びあがる機体。
更に魔導スラスターを全開噴射して、東雲色の空に飛びあがった。
「ぐぅぅぅ! ヨハナちゃん、頑張ってぇ」
「はいですぅぅ!!」
凄まじい加速度が、わたし達を襲う。
眼を開けていられないくらいの衝撃が伝わってくるが、なんとか顔を上にあげる。
「スラスター停止します!」
「了解ですわ」
ヨハナちゃんが、溶けだす前にスラスターを止めてくれる。
後は慣性飛行、しばらく低重力を感じながらも頭部カメラを拡大表示する。
「FCS魔法陣起動! バズーカーを構えます」
少しずつ明るくなっていく聖都。
爆炎が見える近くで金属巨人、漆黒装甲のゴーレムが暴れている。
「照準……、良し! 撃ちます」
落下状態のゴーレムが構えたバズーカーの前後から火炎が吹き出す。
無反動砲式な砲から飛び出したロケット弾が回転をしながら前に飛ぶ。
「弾着……、今ですぅ。 そろそろ着地準備を!」
「ヨハナちゃん、了解」
モニターの中、爆炎に包まれ崩れ落ちるゴーレムが映る。
「スラスター、逆噴射で減速! 神殿前の大広場に着地します。ヨハナちゃん、気を付けて」
「はい!」
充分な減速が間に合わないが、機体の構造強化魔法に魔力を全力でぶち込む。
機体はギシッと大きく音を立てて軋みながらも、着地に成功した。
「ああぁ。綺麗な石畳の道路に大きな穴を開けちゃったわ。あ、次の敵を!」
ロケット弾による爆炎と着地時の土埃の中、わたしは急いで機体姿勢を直す。
そしてレーダーに従って、敵ゴーレムに向けて給弾をしたバズーカーを向ける。
「もう一機! 当たれぇぇ!」
棒立ちになっていたゴーレムへロケット弾が着弾、一撃で爆散した。
「残り、四機!」
わたしは、敵から距離を取りつつ、バズーカーに次弾を装填した。




