表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

過酷な運命

 カイルは父親に似て大きくたくましく成長し、立派な猟師になりました。そして気だての良くて可愛い村の娘と結婚しました。

 やがてカイルに娘が生まれ、アルルは孫娘にノンナという名を付けました。

 息子夫婦と孫娘と一緒に、穏やかな日々を過ごし、アルルはずっとカイの帰りを待っていました。しかしなかなかカイは帰ってきません。

 もう帰って来ないのではないか……そう弱音をこぼすと、ベルはいつも優しく慰めてくれました。


 そしてカイが旅立って25年が立った頃、やっとカイが帰ってきたのです。アルルは大きく驚きました。カイの左腕がなくなっていたのです。


「邪神に左腕が呪われて、仕方なく切り落としたんだ。でも大丈夫。この腕以外は元気だから」


 残された右腕で優しくアルルの頭を撫でると、アルルは泣きながらカイに抱きつきました。


 それからアルルとカイは、息子夫婦と孫に囲まれて幸せに暮らしました。カイはだいぶ年老いて、歩く時には杖が必要になっていました。

 これほど老いて、片腕しかないカイが旅立つ事はないだろう。そう思っていたので、カイとアベルは穏やかな残りの人生を、のんびりと楽しむつもりでした。




 しかしある時また村に天使が舞い降りたのです。


「勇者よ。東の国に邪神が復活しました。東の国の民は亡霊達に襲われて苦しんでいます。今度こそ邪神を滅ぼす為に、旅立ちなさい」


 カイは驚きました。老いた体を見下ろし、天使にこう言いました。


「私は左腕を失いました。もう杖をつかないと歩く事も出来ません。こんな体で戦いになどいけません」


 女神は微笑するとカイに近づいて、カイの左肩に手を置きました。するとカイの肩から突然光がでて。気がつくと腕が元通りになっていたのです。


「勇者よ。勇者の剣を持ちなさい。そうすれば貴方は若い頃のように元気に走り回れるでしょう。さあ旅立ちなさい」


 カイが勇者の剣を手に取ると、重い剣を持っても全く気にならない程体が軽くなりました。

 カイはアルルを見つめました。アルルの顔には深いしわが刻まれて、カイもアルルももう年老いたのだと気がつきました。

 もし今度旅立てば、アルルが生きているうちに帰れないかもしれない。

 そう思うと今度こそ旅立つ事が出来ませんでした。


 アルルと結婚してから40年近くたちます。しかしアルルと過ごした時間は3年にもみたないのです。長い時間待たせてばかりだったアルルの最後も看取れないなんて、そんな酷い事はできません。


「天使様……どうかお願いがあります……」


 カイは何かを天使に願って旅立ちました。カイが天使に何を願ったのか誰も知りませんでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ