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姉弟だけどいいじゃない!!  作者: 毒の花


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第7話 名前だけどいいじゃない!!

遅刻ギリギリでどうにか間に合った。


「おっす。おはよ」


「遅いわよ。遅刻ギリギリじゃな―――」


急に言葉を止めてあたしを凝視する美奈。なんだよ? あたしの顔に何かついてるのか?


「栗栖さんおはようで―――」


紗彩も止まった。


「おまえらどうしたんだよ?」


「どうって……」


「ええ~と……」


よく見ると二人だけじゃなくてクラス全員があたしを―――正確に言えばあたしの頭の上を凝視している。


「「「「「ツッコミ待ち⁉」」」」」


「何言ってんだよ。わけわかんねぇ。なぁ」


皆がわけのわからんことを言うので上に向かって同意を求める。


「にゃぁ……」


これは同意だ同意。たとえ『つっこまれるよね普通』って感じでもあたしに対しては同意なんだうん。


「わけわかんないじゃないわよ‼ なんで猫なんて乗っけてるのよ⁉」


「なんでって言われてもなぁ」


1人(1匹?)にするわけにもいかねぇし。


「とにかく、その猫どうにかしなさい」


「しゃーねーな」


とりあえず優希を机に乗せる。あたしはリボンを外し、胸元を軽くはだけさせる。


「さ、来い」


「何やってんのよ‼」


べしんっと頭を叩かれる。いてぇぞなにすんだコラ。


「何って見りゃわかんだろ。胸の谷間に隠すんだろうが」


「平然と何言ってんのかしらこの痴女は……」


「寄せても谷間が出来ねぇからってムクれんじゃねぇよ」


「こいつ本気で殺してやろうかしら……‼」


なんか黒いオーラを放っている美奈はほっといて優希を見る。……なんか横に首を振ってる。嫌なのか。


なんとなく胸を揺らして挑発してみる。……相変わらず首を横に振るが視線は固定されている。しかも尻尾振ってる。


「ホントは入りたいんじゃないか?」


「うにゃっ⁉ にゃにゃ‼」


くくく……エロいやつ。けっこう面白いな。


「HR始めますよ~」


「あ、やべ」


担任が来たから慌てて優希を鞄に押し込めて隠す。「ふにゃっ」っと呻き声が聞こえたが大丈夫だろたぶん。


 - ☆ - ☆ - ☆ -


「今日優希は休みなのね」


「ああ。ちょっと体調が悪くてな」


昼休み。中庭で昼メシを食べる。中学と違って給食がないから購買でパン買ってきた。


「にしても意外だな」


「何がだよ?」


優希に猫缶を開けてやりながら尋ねる。なんとも言えない感じで猫缶を見つめている優希。朝食ったんだから別にいいだろ。


「いやさ、栗栖のことだから優希の看病するとか言って休みそうだろ」


「ああ確かに」


「そうね」


「ありえるです」


「いや、まぁ……」


ここに居るし。


「あたし達も四六時中一緒にいるわけじゃねぇんだよ」


「「「「嘘だ(です)ッ!!」」」」


……ひぐらしなんて鳴いてねぇぞ。


「何言ってんだかなぁ」


「にゃん」


優希にツナサンドを与えてみる。……そういや、猫が食えないものはどうなんだ? 母さんに聞いとくべきか?


「うにゃうにゃ」


ま、たぶん大丈夫だろ。普通に食ってるし。


「猫さんかわいいです。そういえば、名前はなんです?」


「名前?」


紗彩の言葉に思わず優希と見つめ合う。


「…………」


「…………」


しまったぁーーー!!


名前とか考えてねぇよ!! まさか優希だなんて言えねぇし!!


「にゃぁ……」


すがるような目で優希が見つめてくる。これはあれか、あたしに決めろっていうのか。センスないぞ、あたし。


「えぇ~とだな……」


なんにすべきか。黒いからクロに―――いや、さすがに単純すぎるか。日本語じゃなくて外国語にしてみるか。英語だとブラック、フランス語だとノワール、ドイツ語だとシュバルツ、イタリア語だとネロか。

……そういや、あたしってイタリア人とのハーフって聞いたな。ならイタリア繋がりでネロにするか。


「こいつの名前はネロ。イタリア語で黒って意味だ」


「へぇ~、そうなんです。ネロ、よろしくです」


「にゃ~」


優希改めネロは前足を振って紗彩に答える。


ふっ……乗り切ってやったぜ……


「何やりきった感だしてるのよ?」


ほっといてくれ。


 - ☆ - ☆ - ☆ -


「ただいまー」


「にゃー」


再びネロを頭に載せて帰宅。んー、二人ともまだ帰ってないか。


「じゃ、あたし着替えてくるから」


「にゃ」


しゅたっと飛び降りるネロ。優希のときより運動能力高いんじゃないかこいつ。


あー、それにしても今日はなんか汗かいたし着替えるついでに先に風呂にでも―――


「……まてよ」


あたしの野望の一つである―――優希と一緒に風呂ができるんじゃないか?


「…………」


「にゃ?」


優希とは幼稚園の頃以来、一緒に風呂に入っていない。その頃はまだ恋愛感情とか無くて周りにからかわれるのが嫌で入るのをやめたんだっけ。で、いろいろあって……まぁ、その、なんだ……恋人同士っぽくなってからは優希の方が恥ずかしがって入っていないんだよな。


今なら……イケる。今はネロだが……猫なら抱きかかえて連れて行けるし、1人じゃ洗えないからという大義名分まである。なら―――


「捕獲!!」


「うにゃ!?」


ネロを捕まえ、ダッシュで脱衣所に連れ込み扉を閉める。


「にゃー!! うにゃー!!」


「くくく……猫ならば扉は開けれまい。観念するんだな」


手早く制服を脱ぎ、今度は風呂場に連れ込む。念の為、鍵もかけとく。


「これで袋の鼠ってやつだ。猫だけど」


「うにゃぁ……」


観念したのか、うなだれるネロ。それでも、チラチラとこちらを見ているが。男のチラ見は女のガン見ってやつだ。よくわかる。


「まずはおまえを洗うか。えーとなになに……」


タライにお湯を溜めて猫用シャンプーでネロを洗っていく。なんであるのか疑問だったけど母さんが使っていたんだな。


「うみゃ~♪」


やっぱり猫だからか、喉元やお腹を洗ってやると気持ちよさそうにする。


「……こんなもんか」


シャワーで泡を落としていく。ネロはこのままお湯に浸けておこう。さてと、次はあたしか。


「ふんふんふ~ん♪」


「みゃぁ……」


今更向こうむいてなくていいのに。むしろ見ろ。


「……よしっと。さぁ~てネロ、湯船入るか~」


「にゃ? にゃにゃっ!!」


これはたぶん『溺れちゃうよ!!』とか言ってるな。


「あたしが抱きかかえればいいだろ」


「にゃ?」


じーっとあたしの顔を見て、その視線が下がって……胸で止まる。うん、まぁ、抱きかかえるならその位置になるよな。


「うみゃあっ!!」


しゅたっと扉に向かうが、


「無駄だ。鍵をかけたのだからな。さあ大人しくしろ。別に痛くないからな。へっへっへ、じゅるり」


「悪役のセリフだぞ、それ」


「えー、そうか? ……ん?」


脱衣所に目をやると影が一つ。


「母さん?」


「とりあえず、さっさと出てこい」


 - ☆ - ☆ - ☆ -


体を拭いてリビングに来る。父さんはまだ帰ってないのか。……そういや、どんな仕事をしてんだ? 今まで聞いたことねぇぞ。


「優希、今日はどうだった?」


「にゃあ。にゃにゃ、うにゃあ」


「ほほう、そんなことが。その姿の時はネロか」


今のでわかんのかよ!!


「で、どうすりゃ戻るんだよ?」


「まぁ見てろ」


ポンッと猫になる母さん。母さんは三毛猫か。


母さんがチョイチョイっと尻尾でネロの鼻をくすぐる。


「くちゅんっ」


ポンッと優希に戻った。……服とかどうなってんだ? うーむ、謎だ。


「戻るときはクシャミか? なんつー古典的な方法だ」


「んー、そうでもないよ」


ポンッとネロになり、また優希に戻る。


「コツ掴んだから自分の意志で変身できるよ」


……コツ掴んだ、ねぇ。


「ねぇ、お姉ちゃん」


「ん?」


「優希とネロ、どっちのボクがいい?」


何言ってんだか。


「どっちもおまえじゃねぇか」


「えへへ、だからお姉ちゃんのこと大好き」


嬉しそうに尻尾を振る優希。


「ところで……耳と尻尾残ってるぞ」


「うにゃあっ!?」




最近スランプで何事も手につきません(T_T)


いろいろと忙しくなってきますし、ただでさえ遅い更新がさらに遅くなってしまうかもしれませんが、どうかご容赦ください。

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