第6話 猫だけどいいじゃない!!
気づいたら間空いてましたね。スミマセン……
今回チラッと出てくる空見高校は黒猫トムさんの小説から借りました。現在は公開を停止していますが、再開したら読んでみてください。この小説とはなんら関係ありませんが……
以上、宣伝でした。
高校にも慣れてきたある日。
「ふぁ~……ん~?」
朝起きると、優希が居ない。まだ寝てるのだろうか?
「珍しいな」
いつもならあたしより早く起きてるってのに。遅くまで勉強でもしてたのか?
「じゃ、今日はあたしが起こすか」
善は急げとばかりに優希の部屋へ行く。さぞかしかわいい寝顔なんだろうなと期待と共に扉を開ける。
「ゆう―――ん?」
ベッドの上には誰もいない。いや、布団が小さく盛り上がってるから何かは居る。
バサッっと布団をどけるとそこに居たのは―――
「猫?」
尻尾の先だけ白い小さな黒猫(子猫か?)が丸まって寝ている。
隠れて飼っていたのか……? いやそれよりも優希はどこ行ったんだ?
「ふみゃ~……うにゃうにゃ」
黒猫が起きた。前足で顔を洗って―――いや、眠い目を擦っているように見える。ずいぶんと人間臭い猫だな。
ん……? 人間臭い……? まさか―――
「いやいやいや」
常日頃から猫っぽいやつだなとは思っていたけど、さすがにそんなことはありえないだろう。
「にゃ~、うにゃん♪ ……にゃ?」
黒猫は挨拶? っぽいことをすると首をかしげた。自分の前足を見たり、尻尾を振ったりする。
「にゃにゃあ!?」
そして慌てだす。
「にゃーにゃーうにゃー」
何言ってんだかわかんねぇけど慌ててるのはわかる。
「なぁ、おまえ優希か?」
「にゃんっ!!」
返事した。んーでも確証があるわけじゃないな。
「これから優希しか知らない質問をするから答えろ」
「うにゃ」
「よし、じゃあいくぞ。優希が持っているエロ本の隠し場所は?
1.机の三番目の引き出しの二重底の下
2.本棚の2段目の壁を二重にしている
3.クローゼットの二重天井の中
4.全部
さぁどれだ!?」
「うにゃあ!?」
『なんで知ってるの!?』とでも言いたげな黒猫を無視して机の上のノートに1~4の番号を書く。
「ほれ、選べ」
「うにゃぁ……」
渋々といった様子で前足で4を叩く。
「正解」
「うにゃぁ……にゃぁ……」
『なんでボク、身を削ってるんだろう……』って言ってるなこれは。
「ていうかマジで優希かよ!?」
あたしは黒猫―――優希の首根っこを掴みリビングに駆けていく。
「た、大変だぁ!!」
「どうしたんだい?」
「なんだ騒々しい。……ん? そいつは―――」
「じ、実はっ」
「あー、とりあえず下してやれ。そこ持たれるのは結構辛いんだ」
とりあえず優希をテーブルに下す。
「で、こいつは」
「優希だろう?」
さらっと言われた。
「な、なんでわかんだよ!?」
「わかるさ。いずれこうなるだろうと予想できたし」
「どういうことだよ!!」
予想ってなんだよ!?
「まぁ落ち着け。今から説明するから」
とりあえずコーヒーで一服(父さんが淹れた)して母さんに向き直る。片手で優希を撫でながら。手触りいいなこいつ。
「じゃあまずは母さんが異世界からきたところから―――」
「ちょっと待てぇ!!」
のっけからわけわかんねぇこと言われた!?
「なんだその言葉遣いは。それが母親に対するものか?」
「言葉遣いうんぬんの前にツッコミどころだろここは!!」
「何言ってんだ。今どき異世界なんて珍しくもなんともないだろう。この間も空見高校だったか? そこで神隠しがあったらしいし、他の場所でも勇者として召喚されたりとかあるらしいし」
「いや知らねぇよ」
なんでそれが当たり前だとばかりに言ってんだよ。
「話を進めるぞ。母さんは異世界から来たんだが実は人間じゃなくてなぁ」
だからさらっと衝撃的事実を言うな。というか、えらくファンタジーな設定だなそれ。
「こっちで言うところの……あー、猫又とか妖猫とかだな。まぁ、こっち来てほとんど力は失ってるからヒトに変身できるただの猫だと思ってくれればいい」
変身できる時点でただの猫じゃねぇよ。
「つーことは何か? 優希は実は猫だったと」
「うーむ。それは少し語弊があるな。いいか? 異種族の間で生まれる子供は主に母親の性質を継ぐ。そして種族は母親が子供を産む姿で決まる」
「……つまりどういうことだ?」
「母さんが優希を妊娠、出産した時はヒトの姿をしていたから優希は人間だ。ただし、母さんの性質を継いでいるから猫になることもできる。つまり、『ヒトに変身できる猫』である母さんと違って優希は『猫に変身できる人間』ということになる」
「そうなのか……」
「にゃぁ……」
にわかには信じられないことだが納得するしかないよなぁ。
「ていうか母さんの遺伝なのか。あたしとしては父さんからかと思ったんだが。その白髪とか絶対何かあるだろ」
「あははは、そんな大したことはないよ」
「秘密があること否定しなかったっ……!!」
やべぇ……何があるんだ……!?
「あ、もうこんな時間か。そろそろ出ないと」
あ、やべ。急がないと遅刻する時間じゃねぇか。朝メシは……ギリギリ食えるか。
「優希、メシ―――て猫のまんまじゃねぇか!! 戻れるか!?」
「にゃ。にゃ~~~……うにゃぁ……」
力んでみたが戻れないようだ。
「母さん!! どうすりゃ戻るんだ!?」
「そうだな……その姿に慣れるためにも今日一日は猫のままがいいんじゃないか?」
いやメシどうすんだよ? あたしも母さんも料理は壊滅的じゃねぇか。
「僕が簡単に作るから、ちょっと待ってなさい」
そう言って台所へ行く父さん。父さんは少し出来たっけな。
「優希、私達はそのまま食べられるものがあるからそれを食べよう」
「にゃ」
「あ、ずりぃぞ。そんなんあるならあたしにも―――」
パコッ
「食べるか? 猫缶」
「……いらねぇ」
優希は猫缶を前にして『た、食べるべきなの……? 食べちゃっていいの……?』といった感じで戦慄いていた。
ということで優希の秘密とは猫になれることでした。ぶっちゃけると単なる思いつきです。今後、活かせられるかは不安ですね……
感想で、秘密とはあの白髪が関係していますか?と質問をいただきましたが、実はアレは二次創作でとある設定がありました。第1話の前書きで書いた通り優希と他数名は二次創作で作ったキャラです。ですので、白髪の秘密は『出そうと思えば出せるけど……』といった感じで微妙なんです。今後出るかは未定ですね。




