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姉弟だけどいいじゃない!!  作者: 毒の花


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第36話 文化祭だけどいいじゃない!! 前編

気が付けば1年近く更新していなかったですね。い、忙しかったんです(震え声)

今後も不定期更新ですね。詳しくは活動報告にでも書いておきます。


ちょっと場面展開の記号を変えました。コミケスタイルに統一したいと思います。前話までも変えておきました。

「チョコバナナいかがですかー」


「いらっしゃいませ。何に致しますか?」


文化祭が始まった。前日の準備や練習のおかげで特に失敗をすることもなく盛況だ。ちなみにボクは客引きをやっている。呼びかけるのもなかなか大変だね。


「あ、天道君。そろそろシフト終わるから回ってきてもいいよ」


「本当? じゃあ行ってこよっかな」


「でしたら、わたくしと一緒に回りませんか?」


「いいよ。皆も誘おう」


「あ、いえ、わたくしとふた―――」


「皆~、一緒に行こう~。雅さん、何か言った?」


「……なんでもないです」


なんか何でもなくないような顔してるんだけど……


「雅さん、また何か悩み事でもあるの?」


「いえ、そういったわけではないのですが」


「本当? ボクならいつでも相談に乗るから遠慮しないで言ってね」


「はい。……本当に、どうして細かい気配りはできるのに、こうも鈍いのですかね……」


なんだか呆れられてる気がする。なんでだろう?


「神代も大変だな」


「……マサは人のこと言えない」


「なんでだよ」


マサくんと愛理沙さんが近づいてきた。2人もシフトが終わったようだ。


「カズくんは?」


「まだ終わってないみたいだな。ま、昨日サボったツケだな」


「あはは、そっか。じゃ、4人で行こっか。どこに行く?」


「んー、そうだな―――うぐっ」


いきなりマサくんが呻き声を上げたので何事かと思ったら愛理沙さんがマサくんの足を踏んでいた。何やってるの? 痛そうだよ。


「なにすんだよ」


「(……マサは……気配りが足りない……応援するべき)」


「(でも優希って栗栖一筋じゃ)」


「(……応援すべき)」


「(んー、まぁそうだな)」


ひそひそと何話してるの?


「あー、やっぱ俺達は別行動でいいか?」


「え? 別にいいけど……なんで?」


「うっ、それはあれだ、えーと……」


「…………」


パチパチと愛理沙さんがウインクをしてくる。何かの合図かな? うーん……


「(優希さん、ここは2人で行かせて差し上げるべきですよ)」


「え……あ、そっか」


雅さんが耳打ちしてくれたおかげで愛理沙さんの意図に気づけた。いやー、あぶなかったね。


「じゃあ別々に行こっか」


「おう。また後でな」


「さ、行きますか。(愛理沙さん、ありがとうございます)」


「……(お互い様)」


というわけで雅さんと2人で回ることに。


「まずはどこに行きますか?」


「お姉ちゃんのところに行こうよ。休憩時間聞いてこないと」


お姉ちゃんの休憩時間を把握するの忘れちゃったんだよね。まぁボクの休憩時間を言ってあるからたぶん重なってると思うけど。


「い、いきなり出鼻を挫かれましたわ……」


どうしたの?


 - ☆ - ☆ - ☆ -


1年2組の教室の前に到着。確か、お化け屋敷をやるって言ってたっけ。お化け苦手なのに大丈夫なのかな。


「お、来たのか」


受付にはお姉ちゃんが座っていた。受付やることにしたのかな? いやそれよりも……


「それどうしたの?」


「母さんに借りたんだ」


お姉ちゃんは巫女服を着ていた。うわぁ……


「へへっ、いいだろ。おまえ巫女さん萌えだもんなー」


「うえぇっ、なんでっ!?」


「夏祭りの時巫女さんチラチラ見てたし、引き出しの二重底の下のやつもそうだしな。あたしの目を誤魔化せると思ったか」


「ボクのプライバシーが!!」


「優希さんが好きなのでしたら、わたくしも巫女服を着ましょうか?」


「え、本当に―――じゃなくて、着なくていいから!!」


うぅ、時々雅さんが分からなくなってくる……なんかドキッとさせられるようなことが増えてきたなぁ。


「で、うちのクラスの出し物見てくか? お化け屋敷『拉麺ラーメン』に」


なんかおいしそうな名前だね。まぁ、せっかくだから入ろうかな。ちなみに、この拉麺って漢字は日本の当て字らしいね。


「ほいこれメニュー」


「メニュー?」


「いいからなんか選べ」


書いてあるのは醤油やら豚骨やら塩やら……うーん、選んだものによって内容が変わるとか?


「じゃあボクは塩かな」


「わたくしは味噌で」


「OK、んじゃ入りな」


ガラッと扉を開けて教室に入る。中は墓場を模した作りになっており、おどろおどろしい雰囲気を醸し出している。中華風かと思いきや和風なのはなんでなんだろう?


「これは……林間学校の時とはまた違った怖さがありますね」


「今度は向こうが驚かしてくるからね。いったいどんな感じで来るんだろう」


「ふふ、楽しみましょうか」


「ふみゃっ」


いきなり雅さんが腕を組んでくる。ふよん、と柔らかい感触が伝わってきてドキドキしてしまう。


「さ、行きましょう。……どうかしましたか?」


「う、腕組んでるんだけど……」


「嫌ですか?」


「別にそういうわけじゃ」


柔らかくて気持ちいから、むしろずっとしていた―――ってボクは何を考えているのさ!!


「なにしてんだてめぇ……!!」


視線を感じたので振り返ると、扉の隙間からお姉ちゃんが睨んでいた。べ、別に浮気とかじゃないよ!!


「あら、何か問題でも?」


「むしろ問題しかねぇよ!!」


「いいではありませんか。それよりも、受付を放り出していいのですか?」


「うぐっ」


「わたくし達は先に進みますね」


「お姉ちゃん、また後でね」


雅さんに引きずられるようにして進みだす。うーん、あのお墓の血痕とかリアルだなぁ。


「どんな驚かし方をしてくるのでしょうね」


「さぁ? やっぱりオーソドックスに―――」


「ばあぁぁぁぁぁ」


「みゃあぁぁぁぁぁっ!!」


「きゃっ」


いきなり出てきたお化けに驚いて雅さんに抱きついてしまう。


「あー、終わった終わった。じゃ、失礼しまーす」


「ずいぶん俗っぽいですね。優希さん、いなくなりましたよ」


「び、びっくりしたぁ。いきなり抱きついちゃったりしてごめんね」


「いえいえ、いくらでもどうぞ。……あら、頭に何か―――」


雅さんに気付かれる前にサッと手で頭のものを押さえて消す。


「頭? なにもないよ?」


「あ、あら……? 見間違いでしょうか」


危ない危ない。猫耳を見られるところだった。びっくりしたから、つい出ちゃったのかなぁ。気を付けないと。


べちょ


「ふみゃぁっ!?」


なんかべちょってしたのが頭にぃぃぃぃ!!


「お、落ち着いてください。ただのこんにゃくですよ」


ふえぇぇぇぇ……びっくりしたぁ……あ、また抱きついちゃった。


「意外とドキドキするね」


「ええ、ドキドキしますわ……別の意味で」


「こんなとこ早く出よう」


「(わたくしとしては、ずっといてもいいのですけど)」


早く出るためにちょっと駆け足で進んでいく。途中で「ちっ、リア充が」って聞こえた後は驚かし方が大胆になった。理不尽な……


「あ、もうすぐ出口みたいだよ」


出口っぽい扉が見えてきたところで、エプロン姿の男子生徒が出てきた。


「どうも、ご注文の品です。熱いので気をつけてください」


「あ、どうも」


「頂きますね」


ボクは塩ラーメン、雅さんは味噌ラーメンの小丼を受け取る。


はふはふ、ズルルル~……


「ごちそうさま」


「おいしかったです」


「ありがとうございます。出口はあちらとなっております。またのご来店をお待ちしております」


小丼を返して教室から出ていく。交代したのか、お姉ちゃんが近づいてくる。


「どうだった?」


んー、とりあえず言いたいことは―――


「最後のラーメンなに!?」


なんでお化け屋敷でラーメン出るの!? 最初のメニューってこのためだったの!?


「あー、あれな。いやさ、間違えて中華麺を大量に注文しちゃってさ、返品もできないし腐らせるのももったいないから提供するかってことになったんだよ」


お化け屋敷かラーメン店か、どちらかにすべきだったと思うよ。


「ま、まぁそれより、お姉ちゃんもそろそろシフトが終わりだったよね? 一緒に回ろうよ」


「ん? まぁ確かに終わりだけどそろそろ―――」


―――っは!! 邪悪な気配!!


「逃げよう!!」


「だが回り込まれてしまった♪」


「みぎゃあぁぁぁぁぁ!!」


「ミスコンが始まる―――あ、先輩」


くぅぅ~……まさかこんなにあっさり捕まっちゃうなんて。


「さあ優希たん、無駄な抵抗はやめて大人しくついてきなさい!! 大丈夫、とぉっても可愛くしてあげるからねぇハァハァ」


ひぃぃぃっ!! 怖い、怖いぃぃぃぃっ!! 助けてぇぇぇぇぇ!!


「わたくし達も行かなくては」


「そーだな」


そうだ2人とも出るんだった。神は死んだ!!


 - ☆ - ☆ - ☆ -


「はふはふ……うまいなこのたこ焼き。夏祭りの時の屋台のやつと遜色ないぞ」


「……イカ焼きもいける」


「焼きそばもおいしいわよ」


優希達と別れた後、俺は愛理沙とまわってたんだが……なぜか美奈がすごい勢いでやってきて、なし崩し的に一緒に行動することになった。2人が対抗するように連れ回すから疲れてきたな。


「お、そろそろ体育館のステージでミスコンが始まるんじゃないか?」


「あら、もうそんな時間?」


「……余興が楽しみ」


余興? あぁ、女装コンテストか。まったく、いったい誰がこんなん思いついたんだか。誰得だよ。余興は毎年違うとはいえ、これを考え付くやつはどういう神経してんだか。


「……優希の写真は……高く売れる」


「どこに売ってるのよそんなもん」


そんなこんなで体育館に着く。おっ、結構混んでるな。


『これより、星山学園ミスコンテストを開催します。司会進行は私、鹿井(しかい)(すすむ)と、』


『解説は私、加井(かい)節哉(せつや)がお送りします』


ちょうど始まった。プログラムを見る限り、まずミスコンをやって投票と集計中に余興をやるみたいだな。


『それではさっそく参りましょう。まずは1年1組、神代雅さんです』


コールと同時に神代が入ってくる。エプロン姿の神代はステージの中央に立って軽くお辞儀をする。このミスコン、各クラスの出し物の宣伝も兼ねているから衣装は出し物に関係したものじゃないといけないんだと。ちなみに女装コンテストにその制限はない。


『1組はチョコバナナを売っているそうです。いやー、綺麗な子ですね』


『ほほう、エプロンで分かりづらいが、なかなか立派なものをお持ちのようだ』


『そんな下世話なことじゃなくてまともな解説をお願いします』


『裸エプロンならなおのこと良しですね』


『私の言ったこと理解してますか?』


……なかなか個性的な司会と解説だな。


『えー、気を取り直して、続いて2組、天道栗栖さんです』


今度は栗栖が入ってくる。あれは……巫女服か?


『2組はお化け屋敷をやっているそうです。こんな巫女さんに除霊してほしいですね』


『これはまたすごい……是非、挟んでほし―――ふおぉっ!?』


『どうしました!?』


『ほ、包丁が飛んできた』


……優希か? あいつは準備中のはずだが……深く考えるのはよそう、うん。


『セクハラするからですよ。ちゃんと解説してください』


『そんなことよりも1つ聞きたいことがある』


『なんです?』


『下着は着けているのかな?』


『一周回って清々しくなるようなセクハラをしないでください。天道さん、後でこいつを殴っていいですよ』


『むしろご褒美です』


『もうお前黙ってろ。……ゴホン、気を取り直してどんどんいきましょう。続いては―――』


そんなこんなで出場者の紹介が終わる。あの解説者、最後までセクハラしてたな。いったいどういう人選してるんだ。


『では、投票と集計を始めます。その間に余興が入ります』


『今年は女装コンテストでしたね。まったく、誰得な企画ですね』


『確か加井さんが発案者でしたよね?』


こいつが発案者かよ。


『まぁ進めましょうか、どうせ余興ですし。えー、ではまず1年1組からですね』


お、優希の出番か。結局、どんな衣装になったんだ? 裏漫研部の先輩方が作ったって聞いたぐらいだから知らないんだよな。


『ほとんどのクラスが女子制服を着てくる中、数少ない衣装持参クラスの1つです。では、どうぞ』


司会に促されて優希が出てきた時、一瞬だけ体育館に静寂が訪れた。


優希が纏っていた衣装は黒を基調としたドレス。白いレースやフリル、リボンなどで豪奢に飾り付けられており、スカートをパニエで少し膨らませ、編上げのブーツを履いている。ヘッドドレスで飾られた髪は、三つ編みの白髪と対称的になるように黒髪も一房だけ三つ編みにし、残りは背中にふわっと広がるように垂らしている。そして、これまたレースやフリルのついた黒い日傘を優雅に差している。


まるで高級なビスクドールのような―――そんな美しさと愛らしさを醸し出していた。


「すごいな……あいつ、本当に男なのか疑問に思えてくるな」


「女として色々負けた気が……にしても、あのゴスロリ? だっけ。よく似合ってるわね」


「……違う……本来ならゴシック調のメイク……今回はナチュラルメイクだから……あくまでゴスロリのコスプレ……間違えると……怒る人もいる」


一眼レフでパシャパシャと撮っている愛理沙が否定の言葉を出した。へー、そんなの知らなかったな。説明受けても違いが分からないし。


「ちょっと待て、そのカメラどこから出した? さっきまで持ってなかっただろうが」


「……異空間から出した」


「異空間ってアンタ何言ってんの?」


「……この学校の半分くらいは……人外」


「何言ってんのよ」


「愛理沙にしては下手なジョークだな」


そんなファンタジーなことあるわけないだろ。


「……むぅ(……優希も……似たような感じ……でも、薄い?)」


『さ、最初からすごい子が来ましたね~。さあ、どんどん参りましょう!!』


そんなこんなで女装コンテストも進んでいく。ムキムキのマッチョが女装していたり、優希に負けず劣らずの男の娘が出てきたりと意外と盛り上がった。見ていて損の方が多い気がするが。


『いやー、思いのほか盛り上がりましたね~……さて、そろそろ集計が終わるころでしょうか。結果発表に移りたいと―――はい? えっ、(ゴニョゴニョ)』


うん? どうしたんだ?


『えー、非常に申しにくいのですが、どうやら集計に問題が発生したらしく、未だ終わっていないようです。なのでミスコンの結果は明日の朝発表させていただき、1位から3位までの表彰をしたいと思います。どうも申し訳ございませんでした』


何があったんだか。


「なんかお開きみたいな雰囲気だし他のとこまわらない? まだシフトじゃないし」


「んー、そうだな。優希たちも誘うか」


「……優希は無理……だと思う」


「なんでだよ」


愛理沙はスッと指を指す。そっちになんかあるのかと視線をずらすと―――


「きゃー、かわいい!!」


「おねーさんといいことしない?」


「これから一緒にどこか回らない? その格好で」


「俺は!! 男でも!! 構わん!!」


なんか人だかりが出来ていた。あれは優希と……さっきコンテストに出ていた―――


「……みんな、男の娘」


あー……


「行くか」


「そうね」


「……ん」


まぁ、放っておいても大丈夫……だよな?




後編は明日更新です。

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