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姉弟だけどいいじゃない!!  作者: 毒の花


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第33話 風邪だけどいいじゃない!!

「コホッ、コホッ」


「あー、こりゃどう考えても風邪だな」


朝。何時までも起きてこない優希を不審に思い部屋に来てみれば、咳をして熱を出していた。季節の変わり目って風邪をひきやすいって言うしなぁ。


「今日は学校休め」


「……ん。そうする」


熱のせいか、頬が上気し、潤んだ瞳で見つめてくる。……ヤベぇ、めっちゃかわいい。押し倒したい。


「って、あたしは病人相手に何考えてんだーーー!!」


「どうしたの?」


「あ、いや、なんでもない」


とりあえず冷却シートを張ってやる。にしても、1人にしとくの心配だな。あたしも学校休もうか。


「ボクのことはいいから、お姉ちゃんは学校行きなよ」


「えー、でもよ」


「大丈夫だから」


優希に押し切られ渋々行く羽目に。あー、心配だなぁ。


 - ☆ - ☆ - ☆ -


「優希さん、お休みなんですか?」


「ちょっと風邪ひいてな」


「いつもアンタが負担かけてるからじゃない?」


「んなこと!! あるわけないだろ……」


「今語尾が小さくなったぞ」


「……優希、いつもがんばってる」


「今までの疲れとかが出たのかもな」


「ちょっとお見舞いに行くです」


というわけで放課後、みんなでお見舞いで家に来ることに。


「おーい優希、起きてるか?」


「あ、お姉ちゃんに皆。来てくれたの?」


部屋に入るとちょうど優希が起きていた。寝てたからちょっとはマシになったのかな。


「ちゃんとメシ食ったか?」


「……食欲ない」


「いけませんよ。ちゃんと食べないと薬が飲めませんよ」


「でも」


「ちょっとでも食べるべきです。台所をお借りしてもよろしいですか? お粥でも作りますから」


「そんな、悪いよ」


「遠慮しないでください。風邪を治すほうが大事です」


「じゃぁ、お願い。調味料とか、好きに使っていいから」


有無を言わせぬ口調の雅に優希も折れる。了承を得た雅は部屋から出てく。別に案内も要らんだろう。くそっ、あたしが料理できたら作ってやるのに。


「……待ってる間に……わたしの持ってきたもの飲んで……病人には……これがいいらしい」


愛理沙のやつ、いつの間に用意したんだ? 病人にいいやつってなんだろ。


「……はい」


愛理沙がどこからともなく取り出したのは___イクラ?


「……え、イクラ?」


「なんでまたイクラ?」


「なんか湯気が出てるです」


湯気が立ち上っており、熱そうなイクラだ。なんで熱そうなんだよ、イクラって温めるもんじゃねぇだろ。


「……風邪のときには……温かい卵鮭がいいって」


「卵鮭じゃなくて卵酒だろ!?」


「……え?」


「素かよ!!」


「それに卵酒はアルコールだから優希は飲めないぞ」


「……ガーン」


自分で言うなよ。


「あー、そうだ。あたし、薬とってくるな」


一旦部屋を後にすることにする。ま、皆がいれば大丈夫だろ。


 - ☆ - ☆ - ☆ -


薬箱を見つけて部屋に戻る。普段使わないから探すのに手間取っちまった。


「はい、優希さん。あーん」


「あーん」


「何ナチュラルにあーんやってんだよ!!」


帰ってきて早々イラッとさせるな。ここらで一度、優希はあたしのもんだって見せつけてやったほうがいいか?


「あら栗栖さん、ずいぶんかかりましたね」


「まぁ滅多に使わないからな」


あ、例の卵鮭、お粥の中に入ってる。


「ごちそうさま。おいしかったよ」


「お粗末さまです」


「メシ食ったし、次は薬だな。えーと、風邪薬はどれだ?」


「あ、これはどう?」


「それ使用期限切れてるじゃないか」


うわ、よく見るとほとんどの薬が切れてやがる。


「あんま使わないからなぁ。買ってきたほうがいいか」


「お姉ちゃん、スーパーに入ってる薬屋さんよりも駅前のドラッグストアのほうが安いからそっちで買ってきてね」


家計の管理もこいつがやってたっけ……? マジで負担かけすぎだな。


「確か、常備薬セットが売ってたような……」


「ふーん。じゃ、それを買ってくるかな」


「あ、警察の人に中を見せてって言われたら走って逃げるんだよ」


「常備薬セットなんだよな?」


こいつ、熱でどうにかなってんのか?


「こちらの粉薬、ギリギリ大丈夫なようですよ」


「お、じゃあそれ飲ますか」


いやー、見つかってよかった。


「……苦いの、や」


「わがまま言わずに飲めよ。治るもんも治らんぞ」


「やー」


ぷいっとそっぽを向く優希。風邪のせいで幼児化してんのか?


「オブラートにでも包むか?」


「それよりも子供用の薬用ゼリーを買ってきたほうがよろしいのでは?」


「あー、あれか。そうだな、イチゴ味のやつでも買ってくるか」


「お前ら優希を甘やかせすぎだぞ」


いいじゃねぇか別に。


「口移しで飲ませてやれよ」


「く、口移しだなんてそんな……」


「それはないだろ」


「アンタほんとバカねぇ」


「カズさん、もうちょっとよく考えていってほしいです」


「……思いつきすぎ」


酷評だな。あーでもそうか、口移しか。


「よし、」


「どうしました?」


あたしは薬を口に入れ、水を含む。水と薬が混ざるように舌で軽く撹拌する。苦いな、これ。


「お姉ちゃん?」


優希の顔に手を添えて固定する。そのまま、口づけする。


「「「「「「なっ!?」」」」」」


優希の口をこじ開けて薬を流し込んでやる。急なことで驚いたのか、優希はされるがままに薬を飲みこむ。


「……ふぅ」


「はぅぅ……」


全部流し込んで離れる。これで薬もOKだな。


「なななな、何してるんですか!?」


「見りゃわかんだろ」


「口移しだなんてそんな羨ま―――はしたないマネしないでください!!」


おい今本音が透けて見えたぞ。


「あ、おい優希大丈夫か!?」


「どうした!!」


見ると優希は真っ赤になって倒れている。もしかして気を失ってんのか!?


「熱が上がってる……なんてこった、風邪が悪化したのか? この薬、不良品だな」


「どう考えてもおまえのせいだろ!!」


そうかー?


~翌日~


「ゴッホ、ゴッホ」


「移しちゃってごめんね……」


「うぅっ、頭が痛いー、身体が熱いー……これは俗に言う妊娠だな。とするとこの吐き気はつわりか」


「どう考えても風邪だよ!!」


「身体の中に生命の息吹を感じる……」


「それウイルスが繁殖してるだけだから!!」


「これが母親になる辛さってやつか」


「違うからね!! というか相手は誰なの!? ボクじゃなかったら相手とお姉ちゃん殺して僕も死ぬぅーーー!!」


「調子こいてサーセンしたぁぁぁぁぁぁ!!」


「そんな土下座しなくても……ほら、今日は大人しく寝てよう?」


「おう……」


「ちゃんとボクが看病してあげるからね」


「…………」


「…………」


「……なあ」


「なに?」


「ベタベタのオチを治す薬はないか?」


「それはないねー」




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