第32話 決定だけどいいじゃない!!
ようやく投稿できました。2学期が始まります。
「―――それでは、文化祭の出し物を発表します」
夏休み明けの始業式。その日のHRで文化祭の出し物を決めることになった。
「多数決の結果、屋台でチョコバナナを売るになりました」
雅さんが黒板に書かれた候補のうち、チョコバナナに丸を付ける。教室に歓声や悲鳴が広まる。
「チョコバナナだって~」
「いっぱい売って儲けるか!!」
「ちくしょーーー!! メイド喫茶がーーー!!」
「まだ諦めるな!! 売り子がかわいい服装をするかもしれないだろう!!」
「そうだ!! 諦めたらそこで試合終了だ!!」
「優希たんのエプロン姿……ハァハァ」
「場所とかどこになるだろうね~」
「立地は重要だよね」
「原価率とかもじっくりと計算して……」
あれ、今おかしなの混ざってなかった?
「皆さん、お静かにお願いします」
雅さんの一言で静かになる。何その団結力。
「バナナやチョコレートの入荷先はまた後日決めましょう。先生も、それでよろしいですか?」
「いいですよ~」
水澤先生ののんびりした口調も久しぶりに聞いたな~
「あ~、それと~、ミスコンに出る人を~、決めないといけませんね~」
「ミスコン……ですか? そういったものは普通、希望者が出場するものでは?」
「いえいえ~、各クラスの代表が~、1人ずつ~、出るのですよ~、出し物の宣伝もするので~」
「そうなのですか。どなたか、出たい人はいますか?」
雅さんがクラスを見渡す。う~ん、ボクとしては雅さんが出ればいいと思うけど。
「あたしヤダなー」
「私も~」
「神代さんがいいです!!」
「美人だしな!!」
「神代さんなら宣伝とかもちゃんとやってくれそうだしね~」
クラスの大多数が雅さんを推す感じになってきた。
「えぇっと、この件もまた後日ということにしましょう。参加したい人はわたくしに申し出てください。いなければ、わたくしが出ますね」
この空気の中じゃ立候補しづらいもんね~。雅さんは何時もよく考えてるね。
「あぁ~、ミスコンで~、思い出しました~」
水澤先生が思い出したかのようにポンと手を叩く。
「ミスコンの~、余興として~、女装コンテストがありました~、確か~、天道くんが出場するんでしたね~」
それは思い出さないでほしかった……!!
「ゆ、優希さんの女装ですか……衣装を決めなくてはなりませんね」
雅さんは何を言っているのだろう? 普通に女子制服でいいよね。いや普通にってのもおかしいけど。
「やっぱメイドだろ!!」
「待て、ナースも捨てがたい!!」
「駅前の喫茶店の制服とかかわいいよね~」
「優希たんハァハァ優希たんハァハァ」
「バニーとかどうだ?」
「チャイナドレスとか」
なんで皆ノリノリなの!? そして危ない人は誰!?
ダダダダダダダダッ―――バァンッ!!
走ってくる足音と共に、教室の扉が勢いよく開けられる。
「優希が女装すると聞いて!!」
「お帰りください」
「んだとコラァ!!」
お、お姉ちゃん!? なんでここに?
「栗栖さん、今はHR中ですよ。部外者は出て行ってください」
「いいやあるね!! 優希の女装だろ。だったらあたしも関係者だ!!」
何その理論。
「だいいち、貴女のクラスもHR中では?」
「んなことはどうでもいい!!」
良くないよ。乾先生が泣いちゃうよ。
「優希の衣装をあたし抜きで話し合うとか無いだろ!!」
「そもそも衣装を作る必要はないんじゃないかな!?」
そろそろ自己主張しないと危ないかもしれない……!!
「まぁ、優希さんが嫌だというのならば無理強いはしませんが……」
さすが雅さん。ボクの気持ち、わかってくれるよね?
「おいおい雅。今更いい子ちゃんぶるなよ。本性曝け出してみろよ。ん?」
「ほ、本性ってどういう意味ですか」
「……ここに……優希の……猫耳メイド服姿の……写真がある」
「言い値で買い取りましょう(即答)」
「雅さぁん!?」
「ふふーん。どうだ、化けの皮を剥がしてやったぞ」
「剥がしたの愛理沙だろ」
「わ、わたくしとしたことが……」
ガーンとショックを受けた様子の雅さん。ボクもショックだよ。雅さんが注文するなんて……
「そうショックを受けるなよ。かわいい男の娘にかわいい服を着せたくなるのは人間として当然のことだ。自分を卑下するなよ」
「栗栖さん……」
「さあ、欲望のままに行動しようぜ!!」
「はい!!」
「いやいやいや、なに良い話風に進めてるの!? 雅さんも目からうろこみたいな表情しないで!! 当然のことじゃないからね!?」
この二人、結構趣味が合ってるのかな。……あー、でも、なんか細かいとこでケンカしそう。
「そんじゃ衣装決めようぜ。やっぱ優希には大人っぽい服装よりもかわいい系のほうがいいと思うんだ」
「そうですね。ですが服だけでは味気ないので少々背伸びした感じでアクセサリーを付けましょう。きっとワンポイントになっていいと思います」
「アクセサリーか」
「はい。ネックレスや指輪ですね。優希さんは色白ですし、赤い石が似合いそうです」
そんな真剣に考えないでよ!!
「そもそも、なんでボクに女装なんてさせたいのさ?」
「だってその、優希さんはとてもかわいらしいですし」
「あたしら男の娘萌えだから」
「優希さんの女装はなんかこう、クるものがあるといいますか、とにかく、いいものなんです!!」
「だよなー」
「女装するということに恥じらいがあり、その恥じらっているところがいいといいんです」
「はあ? 男の娘萌えってのは一見ついて無いように見えんのに実はついてるっつーギャップがいいんだろうが」
あれ? ここで意見の相違?
「そもそも恥じらいなんていずれ無くなるもんだろ」
「いえいえ、慣れたように見えても、実際には言動の節々に恥じらいが出てきます。そこをうまく見つけるべきですわ。それよりも、ギャップというのは必ずしもいいものではありません。最初はいいかもしれませんが、いずれ新鮮味がなくなってしまいますわ」
「ほー、あたしに意見するとはいい度胸だな」
バチバチッと二人の間に火花が散った様に見えた。あぁ……雅さんが壊れてく……
「あ、オレ思うんだけどさ」
ここでカズくんが立ち上がる。どうしたの?
「アクセサリーなら猫耳カチューシャとか良くね?」
「……今ここで言うセリフなの?」
「それよりも猫耳はアクセサリーなのか?」
マサくんのつっこみに雷を受けたような衝撃を受けた表情のカズくん。
「そ、そうだよな!! 猫耳はカチューシャなんてもんじゃなくて直に生えてるほうが萌えるよな!! そのことに気付かせるなんて……はっ、まさか、マサはオレの萌えの先導者だったのか!?」
「俺をそっちに巻き込むな!!」
どうしよう、なんだかカオスになってきた。
ダダダダダダダダッ―――バァンッ!!
走ってくる足音と共に、教室の扉が勢いよく開けられる。……2回目?
「話は聞かせてもらったわ!!」
「……えっ、誰?」
入ってきたのは上級生であろう女子生徒。顔もスタイルはそこそこ良く、ショートカットが活発な印象を受ける。10人に聞けば7人くらいが美人だと答えそうな人だ。
「ふふふふ、私の名前は井上美玖よ!!」
「……えっ、誰?」
「2回目!?」
いや知らないし。
「こう言えばわかるかしら。私は裏漫研部の部長よ!!」
「……えっ、誰?」
「3回目!?」
裏漫研部ってなんだっけ……?
「ほら優希、あれだよ。BL書いてる」
……あぁ、そういえば。忘れたかったから覚えてなかったんだ。
「で、その裏漫研部の部長さんが何の用ですか?」
「聞くところによると優希たんの衣装で困ってるらしいじゃない」
たんはやめてよたんは。
「で、日ごろお世話になっていることだし、ここは裏漫研部が総力を挙げてプロデュースしようかと」
「お断りします」
「即答しないで!!」
いやだって、変なの着せられても嫌だし……というか、日ごろお世話って……なんかやだ。
「別にゲームやアニメのコスプレなんてさせないから!!」
「と、言われても……」
「いいじゃないのいいじゃないの」
ガシッと掴まれる。結構力強い。
「さあさ、遠慮しないで行きましょう」
「い、嫌です!! お姉ちゃん、助けて!!」
「―――だからギャップなんだよ。今まで女だと思っていたのに実は男だとか意外性でグッとくるから―――」
「―――恥じらいというものは少々いじめてしまっているのかもしれませんが、好きな子をいじめたくなるのはよくあることで―――」
「まだやってたの!?」
「さーあ、さっそく採寸よ~」
グイグイッと強い押しに負けて連れ去られる。ドナドナ~
活動報告にも書きましたが、別の小説も書かなければなりません。ですが、こちらの小説もちゃんと完結させるつもりなのでよろしくお願いします。




