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姉弟だけどいいじゃない!!  作者: 毒の花


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第29話 臨海学校だけどいいじゃない!! Part4

夕飯後、先生たちの企画するレクレーションがあるらしく、生徒たちは旅館の前に集められた。


「え~と、これから~、皆さんには~、肝試しをしてもらいます~」


へー、肝試しやるんだ。


「肝試しだって。どんなのだろうね。……お姉ちゃん? どうしたの?」


「な、なんでもねぇよ」


「本当?」


なんか、ただでさえ白い肌が更に白くなってる気がするんだけど。


「肝試しってあれだろ、誰が一番キモいか競うやつだろ」


「それはどこの肝試しなの……」


そんなキモ試しは嫌だよ。……あぁ、そっか。


「お姉ちゃんって幽霊とかホラー系って苦手だっけ」


「べ、べべべべ別に苦手とかそんなんじゃねぇよ」


見栄張らなくていいんだよ。何年弟やってると思ってるの。


「栗栖さんは幽霊が苦手なんですか」


「意外な弱点です」


「うっせーな!! 殴れねーもんは苦手なんだよ!!」


そんな物理的な理由だっけ? 確か、幼稚園の頃の肝試しで怖い目にあっておもらししたことがトラウマになってるんじゃなかったっけ? まぁ黙っといてあげよう。


「……栗栖」


「なんだよ」


「……猫とか……動物が虚空を……見つめるのは……そこに何かがいるからだって」


「このタイミングでそんなこと言うなぁぁぁぁぁ!! そんなのデマだよな!! な!!」


同意を求めるようにこちらを見てくる。えーと、


「…………(←)」


「目ぇ逸らすなぁぁぁぁぁ!!」


「落ち着いて。別に大丈夫だよ」


「そ、そうか?」


「害はないから」


「ぎゃあぁぁぁぁぁ!!」


あれおかしいな。落ち着かせようと思ったのに逆効果みたい。どうしよう。


「栗栖さんは放っておいて行きましょう。さあ」


雅さんに腕を取られ、引きずられるようにして連れ去られる。え、ちょ、お姉ちゃんは?


「あっ、待てっ!!」


こちらに気が付いたお姉ちゃんが走ってくる。そして雅さんとは反対の腕を取ってくる。ボクは連行される宇宙人かなにか?


「お姉ちゃん大丈夫? なんなら、参加しないで待ってれば?」


「おまえたちを2人きりにする方が怖いわ!!」


えー?


 - ☆ - ☆ - ☆ -


うっそうと茂った林の中、月明かりと懐中電灯の明かりだけを頼りに進んでいく。


「えーと、この道だよね」


貰った地図に目を落とす。えーと目印になりそうなものがこの「うおっ、今なんかいたぞ!!(むにゅっ)」抱き着いてきたおっぱいが「わたくしにも見せてくださいな(むにゅっ)」左右からやーらかいのがくるからうにゃー


「道はあってそうですね。……どうしました?」


「べ、別になんでもないよ」


「そうですか。ふふふ(むにむに)」


「な、なんか今物音がしなかったか!?(むにむに)」


更に密着してくる2人。ううっ、無理に振りほどけないなぁこれは。


「にしてもなんでレクが肝試しなんだよ」


「そりゃあ、怖い思いして納涼しようってことでしょう?」


「納涼なんてできるかーーー!! 納涼じゃなくてNO・涼だろこれ!!」


お姉ちゃん、実は案外余裕なんじゃないかなぁ。


「あ、ここの墓地を通っていくみたいですよ。で、向こうにあるお寺に用意してある物を持ちかえれば終了です。」


しばらく歩いていたら墓地が出てきた。うーん、雰囲気がでてる。


「……2人とも」


「なんですか?」


「どうしたのお姉ちゃん」


「急がば廻るんだよ!!」


あ、逃げを選んだ。ちょっと涙目だね。


「なんだよここは!! 絶対『ゆ』で始まって『い』で終わるものが出てくるだろ!!」


「有袋類は出てこないんじゃないかなぁ」


「ああ有袋類は出てこねぇよ!!」


「ここを通らなければなりませんので、諦めてください」


「く、くそぅ……」


「怖いなら手を繋ごうよ」


そう言い終わるか否かでギュッと手を握られる。身長差があるから腕を組むことが出来なくて残念。


「ゆ、優希さん、わたくしも怖いです!!」


「えっ? 雅さん、今まで全然平気だったよね?」


「怖いです!!」


「いやだから―――」


「こ わ い で す」


「……雅さんもどうぞ」


反対の手をギュッと握られる。なんか今、雅さんが怖かったよ……


「ゆ、優希周りに何かいないか探ってくれ。匂いとかでわかるだろ」


「そんなことできないよ……」


確かに人よりは鼻がいいけど。でも幽霊に匂いなんてあるのかな?


「できないのか。いい案だと思ったんだがなぁ―――うぎゃあ!!」


「どうしたの?」


「な、ななななんかベチャッとしたのが額に!!」


見ると、何か白いものが木にぶら下がっている。


「えーと、白滝のようですね」


白滝? 普通そこはこんにゃくじゃないの?


「うおっ!? 何か足に引っかかった!!」


「長ネギですね」


「わっ!! 石畳じゃねぇぞここ!!」


「豆腐が敷き詰めてありますね」


「墓になんか黒いシミみたいなもんがあるぞ!!」


「この匂いは……醤油、でしょうか」


「盛り塩がある!? やっぱなんかいるんだここ!!」


「……あ、これ、塩ではなくて砂糖のようですね」


「なんか変な臭いがぁーーー!!」


「これは酢……いえ、みりんでしょうか」


「ぎゃあぁぁぁぁ!! 赤い塊が落ちてるぅぅぅぅ!!」


「牛肉ですね。放置しておくとはもったいないです」


すき焼きでも作るの? そしてお姉ちゃんビビりすぎ。何時もの堂々とした態度はどこ行ったの……?


「や、やっと着いた……」


しばらく歩いてようやくお寺に着いた。お姉ちゃんはぐったりしている。かなりビビってたもんね。


「ここに用意してある物を持ちかえればいいんだよね。どこにあるんだろう?」


「あの箱がそうなのでは?」


雅さんの指差す方向に箱が置いてあった。


「何が入ってんだそれ?」


「開けてみましょうか」


「わー、なんだろう? 楽しみだね」


パカッと箱を開け、3人で中を覗く。


「…………」


「…………」


「…………」


本当に、なんだろう……?


「なに、この黒い名状しがたい物体」


「えっ? あたしにはモザイク模様に見えるぞ」


「わたくしにはまだら模様でうねうね動いているように見えます」


「あ、なんか形変わった」


どうやら見る人物と角度によって形状が違うらしい。


…………


ボクは無言で箱を閉じた。


「見なかったことにしよっか」


「そうだな」


「ですね」


さ、旅館に戻ろうかな。


 - ☆ - ☆ - ☆ -


「あ、皆トランプやってるの?」


謎の多い肝試しが終わってから、ボクはお風呂に入り、昨日同様お姉ちゃんたちの部屋でドライヤーをかけてから部屋に戻ってきた。


「お、今日は戻ってきたんだな」


「さすがに二日とも女子部屋に泊まる気にはなれないよ」


「布団もう一枚敷くか」


「あ、5枚しか敷かれてない!!」


ここ6人部屋なのに。ボクだって男なんだからここで寝るんだよ。


「まぁまぁ、天道もトランプやるか?」


「やるー」


というわけで皆で大富豪をやることに。


「なー、天道」


「なに?」


「なんでお前ってねーちゃんのこと好きなの?」


「あ、それオレも聞きたい」


「マサは中学のころから一緒だったんだっけ?」


「そうだな。優希は昔からこんな感じだったぞ」


「理由とかあんのか?」


皆が興味深々な様子で聞いてくる。


「ボクのことより、皆はどうなの? 彼女とかいないの?」


「いない」


「いねーよ」


「リア充爆発しろ」


「俺も特にいないな」


「いたら苦労せんわっ!!」


今ナチュラルに罵倒された!?


「とゆーわけで天道、お前の恋バナを聞かせろ」


「優希、諦めろ。こいつら止められないぞ」


「うぅっ、仕方ないなぁ……」


なんでお姉ちゃんのことが好きかだよね。んーと、


…………


「うーん、特に思いつかないなぁ」


は? といった顔で皆が見つめてくる。


「綺麗だとか、凛々しいとか、実は怖がりなところがかわいいとか、好きなところはいくらでも挙げられるよ。でもね、それは好きな理由じゃないと思うの。全部、後から見つけたものなんだから」


それでも、強いて好きな理由を挙げるとするなら―――


「たぶん、お姉ちゃんだから好きなんだと思うよ。他の誰でもない、お姉ちゃんだからこそ好きなの」


ボクがそう言うと、しばらくの間沈黙が部屋を包み込んだ。


「……栗栖は幸せ者だな。こんなに優希に想われてて」


「あー、俺も彼女欲しー」


「リア充爆発しろ」


「お前それしか言わないな……」


「えへへ……」


なんだか照れくさいね。


「どうしたら彼女出来るかねぇ。……はいあがり」


「榎本はモテていいよな。俺もあがり」


「そうか? 俺、彼女とかいないが。あがりだな」


「リア充爆発しろ。あがり」


「オレもリア充になりてぇ!! あがりだ!!」


いつの間にか皆があがってる!?


「大貧民は優希か」


「よーし、罰ゲームしようぜ」


「恥ずかしい話をした罰も含めてな」


「皆が言わせたんじゃない!!」


「それっ、くすぐってやれ!!」


「えっ、ちょっ、まっ、にゃははははははははっ!!」


~5分後~


「はひぃ……はぁ……はぁ……」


「……なんかエロいな」


「浴衣もけっこう乱れちゃったな」


「やりすぎたか?」


わ、笑いすぎて苦しい……


「優希ー、あたしらの部屋に忘れもんだぞー」


「おい栗栖。ノックぐらいしろ」


「ああ悪……い……」


突然、部屋に入ってきたお姉ちゃんがピシッと固まる。


「ゆ、優希……どうしたんだ……?」


「はぁ……はぁ……ちょっと……皆が……激しくて」


「この変態どもがぁーーー!! 優希になにをしやがったぁーーー!?」


「ご、誤解だ!! 別にやましいことなんて―――」


「黙れ変態ども!! こんなとこで優希を寝かせられるか!! こいつはあたしらの部屋に連れて行く!!」


そう言うや否や、お姉ちゃんはボクを横抱きに、いわゆるお姫様抱っこをして走り出す。


こうして女子部屋で二泊することになって臨海学校は幕を閉じた。あの5人にはホモ疑惑が、ボクには女子疑惑が沸き起こったことは言うまでもない。




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