第26話 臨海学校だけどいいじゃない!! Part1
バタバタしていたらもう8月も終わりですか……
まずいですね。夏休み編が全然終わらない。まぁ、リアルは無視してマイペースに進んでいきますけど。
「わぁ、海だぁ!!」
バスの窓から見えた風景に思わず感嘆の声をあげてしまう。今日から二泊三日の臨海学校なのだ。といっても、今日はバス移動で時間を食っちゃってるから明日からが本番みたいなものだけれど。
「海、綺麗ですね。今日は泳げませんが、明日が楽しみですね」
隣の席の雅さんも楽しみにしてるみたい。バスはクラスごとだから、お姉ちゃんと離れちゃったのは寂しいなぁ。
「海楽しみだな!!」
「俺なんて楽しみすぎて昨日から寝てねぇよ!!」
「甘いな。俺は一週間以上寝てないぞ」
「レベル高ぇーーー!!」
「あー、私、水着になるの嫌だなー。太っちゃったもん」
「私は夏バテで痩せたけど?」
「ええっ、羨ましー!!」
「胸からだけどね」
「……なんかゴメン」
「俺、今日のために有り金はたいてカメラ買ったんだ。防水性もばっちり」
「そりゃすごいな。海でも撮れていいじゃん」
「ちゃんと旅館の見取り図も手に入れたぜ」
「おまえは何を撮るつもりなんだ」
皆も楽しそうに話している。とりあえず、後でカメラは破壊しとこうっと。
「皆さん~、もう着きますよ~」
水澤先生がクラス全体に話しかけてくる。
「旅館には~、一般の~、お客さんもいるので~、迷惑にならないように~。それと~、消灯後に~、男女それぞれの~、部屋への行き来は~、禁止です~。わかりましたか~、天道君~」
「なんでボクだけ名指しなんですか!?」
「天道君は~、混ざってても~、違和感が無さそうだからです~」
「「「「「ああぁーーー」」」」」
「ああぁーーーじゃないよ!! なに納得してるの!!」
「……先生」
愛理沙さんがピシッと手を挙げる。なんだろう?
「……優希はむしろ……女子部屋で……保護すべきでは?」
「一考の~、余地がありますね~」
「ないです!! ないですよ!!」
- ☆ - ☆ - ☆ -
「ふぅ……癒されます……」
食事を終えたわたくし達は入浴している。ここは露天風呂なので微かに潮の香りがする。今は一、二組が入る時間です。
「……すごい」
「あの、椎崎さん? 人の胸をそんなに凝視しないでくださいますか」
思わず胸元を隠してしまう。ここは濁り湯なので、あまり隠す必要はないのですけれど。
「でも羨ましいです。触ってもいいです?」
「すみません、お断りします」
皆で入浴するとこういうことがあってちょっと嫌ですね。
「何言ってんのよあんた達……あ、ちょっと詰めてくれる?」
「はい」
少々ずれると高橋さんが入ってくる。その高橋さんを国枝さんと椎崎さんがじっと見つめる。そしてわたくしにも目を向け、再び高橋さんに目を戻す。
「驚異の差です……!!」
「……ん……胸囲の差」
「そんなに沈められたいかあんたら」
「まぁまぁ、落ち着いてください」
「うっさい!! 持つ者には持たざる者の気持ちなんてわからないのよ!!」
「……巨乳と言えば……栗栖はどこ?」
その「と言えば」はおかしいような……
「そういえば居ないわね」
「どこ行ったです?」
「ん? 呼んだか?」
噂すれば影とはこのことですね。
「どこ行ってたのよ」
「ちょっと覗き穴がないか探しててな。結局なかった」
「そんなもん探すんじゃないわよ!!」
「なんだと!? 隣で優希が入ってんだぞ!! 覗くだろ普通!!」
それはどこの普通ですか……
『オレが一番乗りだ!!』
『おい、カズ走るな』
『(ゴツン!!)いってぇーーー!!』
『言わんこっちゃない』
あら、男子が入ってきたみたいですね。
『いやー、気持ちいいな』
『だなー……どうした落ち込んで』
『せっかくのカメラが壊されてて……』
『覗こうとすっからだろ』
『こうなったら直接!!』
『やめとけって。今入ってんのって1組と2組だろ? 天道に殺されるぞ』
『だよなぁ……ちなみに、姉と弟のどっちに?』
『もちろん弟』
どうやら、覗かれる心配はなさそうですね。
『にしても湯気がすごいな』
『そうだな』
『お待たせ~』
あ、この声は優希さん。まだ入っていなかったのですか。
『おー、遅かったな』
『髪洗うのに時間かかっちゃって』
『ふーん。そんだけ長いとめんどくさそうだな』
『切ったりしないのか?』
『んー、お姉ちゃんが嫌がるから』
「栗栖さん……なにを強要しているのですか」
「あ? 長いほうが似合うだろ」
まぁ、否定できませんが。
『マサくん場所開けて』
『ほらよ』
『ありがとう。んしょっと』
『髪上げるんだな』
『お湯につけちゃうと髪が傷んじゃうから』
発想が乙女ですわね。栗栖さんなんてそのままにしているのに。
『……なぁ、俺、覗けなくても満足かも』
『あ、おまえも?』
『天道と一緒だと混浴してる気分だよな。濁り湯だからなおさら』
「……優希、こっちに入るべきだった?」
「確かにな。このままじゃ掘られるかもしれん」
二人とも何を言ってるのですか……
『それにしてもマサくんはいいなぁ。大きいし、固いし』
『そうか?』
「「「「!!!???」」」」
い、一体何の話ですか!?
「あいつら……何やってんのよ……!!」
「え、えっと、比べてるです?」
「……ナニを」
椎崎さん、もうちょっとオブラートに……あら? なぜ栗栖さんは食いつかないのでしょう? いつもなら真っ先に食いつきそうですのに。
『オレだってそうだぞ!!(ザバァッ)』
『……俺と同じぐらいじゃないか?』
『マサくんのほうが固そうに見えるね』
『なにをー!?』
『まぁ、鍛えてるからな。ちょっとだけだけど』
『羨ましいなぁ……ボクって小っちゃいし、柔らかいし、鍛えたほうがいいかなぁ』
「き、鍛えることってできるのかしら?」
「……きっと……わたしたちには……わからない……方法がある」
ゆ、優希さんのですか……そういえば、この向こうには優希さんが裸で―――
『でも鍛えると背が伸びにくくなるって言うよな』
「「「「……えっ?」」」」
背?
『え、そうなの? でも筋肉が固いとかっこいいじゃない』
『お前はそのままがいいよ』
『うんうん。かわいいほうがいいもんなー』
『むぅ~~~、かわいいじゃなくて、かっこいいって言われたい!!』
『でもかわいいって言われて嬉しいだろ?』
『えっ、あ……うん』
『(こいつもう手遅れかもなぁ……)』
き、筋肉のことですか……
「おまえらなに想像してたんだよ」
「なんであんたは平気なのよ」
「いやまぁ、どうせこんなことだろうなって予想してたし」
「むむむ、なんかズルいです」
「……恥ずかしい」
「お前らいったいどんな妄想してたんだ? 特に雅。顔真っ赤じゃねぇか」
そんなの、言えるわけないじゃないですか……




