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姉弟だけどいいじゃない!!  作者: 毒の花


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第25話 水族館だけどいいじゃない!! 裏話

2話連続投稿です。

時間は昼になる少し前くらい。優希がいそいそと出かける準備をしているのに気が付いた。


「どっか出かけんのか?」


「あ、お姉ちゃん。ちょっと雅さんと遊ぶ約束してるの」


「なにぃ!?」


あの女と遊ぶだとぉ!? しかもあたしの知らない合間に約束してたのか!?


「お姉ちゃんも一緒に行く?」


「当たり前だ。あの女と一緒とか、なにされるかわかったもんじゃな―――ん? メールか」


えーと、雅からか。噂をすれば何とやらだな。なになに……『同人誌を手伝ったのだから邪魔はしないでくださいね』……くそっ、あの女、痛いところを突いてきやがる。


「くそっ、悪いが優希、一緒に行けなくなっちまった」


「そうなの? 残念だなぁ。じゃあ、1人で行くよ。お土産買ってくるね。いってきまーす」


「おう……さてと」


優希を見送った後、あたしも外出の準備をする。このままでいると思うなよ……!!


 - ☆ - ☆ - ☆ -


「お、いたいた」


急いで日焼け止めを塗り、帽子とサングラスを用意して出てきた。夏は嫌だな。暑いし、紫外線多くなるし。


「にしてもなんだあの格好は。誘惑する気満々じゃねぇか」


雅はやけに露出度の高い服を着ていた。デートだからって張り切りやがったな。唯一の救いは優希がデートってわかってないことか。


「あれ、栗栖じゃない。何やってるのよ?」


「栗栖さん、こんにちはです」


「ん? 美奈と紗彩か」


美奈と紗彩がやってきた。これで愛理沙まで来たらいつもの女子メンバーが集合だな。


「……呼んだ?」


「うおっ!? いきなり出てくんなよ!!」


相変わらず神出鬼没な奴だな。


「で、なにやってんのよ?」


「……気になる」


「あれだよ」


クイッと優希たちの方を示す。


「雅が優希をラブホに連れ込まないように監視してんだよ」


「そんなことするわけないでしょ……」


いいやするね。あいつは虎視眈々と優希を狙ってんだよ。あいつの本性はエロいんだよ!!


「でもなんで2人きりです? 栗栖さんは行かなくていいです?」


「あいつに同人誌手伝ったから邪魔すんなっつーメールが来たんだよ」


「あんたも義理堅いわねぇ」


「でもま、あたしの目の黒いうちは2人っきりになんてさせないけどな」


「栗栖さんの目は紅いです」


「言葉のあやだよ流せよそこは!!」


「……動き出した」


「なに!?」


見ると2人が手を繋いで歩き出していた。なんで手ぇつないでんだよあいつは……!! 優希もなんで振りほどかないんだよ!!


「く、栗栖さん、怖いです」


「……殺気が」


「行くぞ!!」


「え、私達もついていくの?」


 - ☆ - ☆ - ☆ -


早めの昼飯を摂り、ついていった先は水族館。ここは確か最近オープンしたばかりのとこだったか?


「よし、チケット買ってこい。金は出す。任せたぞ紗彩」


「任せたです愛理沙さん」


「……任せた、美奈」


「任せた―――って誰もいない。仕方ないわねぇ」


美奈に買いに行かせて水族館に入る。いやー、中は涼しい。屋内だから助かるな。


「……すごい」


「壮大ですぅ」


「中々いいところね」


館内はデカい水槽とかがあって結構すごい。


「にしても美味そうな魚がたくさんいるな」


「生簀じゃないんだから……」


優希に今日の夕食は刺身がいいってメールしとこ。……お、すぐに返信きた。


『あっ!! マンタがいるよ!! マンタが!! マンタだよマンタ!! マンタマンタ!!』


なんかマンタにえらい反応してんな。優希とマンタってなんか関係でもあったっけ?


その後も進んでいき、今度は触れ合いコーナーとやらに来た。


「結構寄ってくるです」


「……くすぐったい」


「おもしろいわね。せっかくなんだし、栗栖も楽しんだら?」


「雅め~、あんなくっつきやがって~」


「聞いてないし……」


あー、くそっ、なにかぶつけてやるかなぁ。……お、ヒトデだ。ヒトデってなんか手裏剣みたいだよな。


「くらえっ!!」


シャッ!! と手裏剣のようにヒトデを投げる。


『きゃっ……ヒトデ?』


ちっ、受け止めやがったか。


「ちょっとあんた何やってんのよ!!」


「ああ? 見てわかんねぇか? 雅にヒトデ投げたんだろうが」


「私が聞きたいのはなんでそんな事をしたのかよ!!」


「イラッときてやった。後悔も反省もしていない」


「反省ぐらいしなさいよーーー!!」


「二人とも、そんな大声出したら見つかるです」


「……移動しよう」


「あ、ちょ、二人が見えなくなる……!!」


三人がかりで引きずっていかされた。くそぅ、心配だ……!!


 - ☆ - ☆ - ☆ -


なんやかんやで出口まで来てしまった。水族館から出てくる二人を確認する。パッと見、何かがあったわけじゃなさそうだ。……あの袋はお土産か? 楽しみだな。


「あ、向こうに駆けて行ったです」


「なんかあるのか?」


「……クレープ屋」


あぁ、甘いもの好きだからなぁ。


「私たちも食べに行こうか」


「紗彩はミックスベリーがいいです」


「……食べるラー油入りのイカスミと納豆の生クリーム和えがいい」


「愛理沙が長文をしゃべった!?」


「つっこむとこ、そこじゃないでしょ!!」


というわけであたしらもクレープを食べることに。こそこそっと買ってきて、優希たちが見える草むらに隠れる。


「はむっ……そういえば、なんで私たちまで隠れるのよ」


「まぁまぁ、楽しいです。……ん~、おいしいです」


「……イケる」


「独特の匂いだな、それ」


変な匂いでバレやしないかと思ったが、大丈夫のようだ。


おー、それにしても幸せそうに食べてんなぁ。カメラがあったら激写してやるのに。……あ、頬にクリームが付いてる。あ、雅がとった。それを優希が―――


「なっ―――」


舐めただとぉぉぉぉ!?


思わず草むらから出て雅を殴りに行こうとしたら3人に羽交い絞めにされた。


「ちょ、落ち着きなさい!!」


「これが落ち着いていられるか!!」


「大人しくするです!!」


「……暴れるのはよくない」


ガサガサと音をたてていた所為か、2人はどこかへ行ってしまったようだ。もう見る影もない。


「くそっ、見失っちまったじゃねぇか!!」


「まぁまぁ、もう大人しく帰りなさいよ」


「別に雅さんは変なことしたりしないです」


「……安心できる……たぶん」


「できねーよ!!」


あー!! 不安だ!! 襲われていないかめちゃくちゃ不安だ!! 夏は人を開放的にさせるからな!!


「はぁ……ブラコンってめんどくさいわね」


「優希さんほどじゃないけど、栗栖さんも嫉妬深い方です?」


「……重症」


「なんでこんなになっちゃったのかしらね。中学の最初の方はブラコンでもなかったと思うんだけど」


「それ、本当です?」


「……びっくり」


二人がいないことにはしょうがないよなぁ……迫られても優希が拒否できると信じて今日はもう帰るか。


「あたし、そろそろ帰るな」


「え、ちょ、昔の話を聞きたいです」


「……気になる」


「はあ? なんでそんなもん聞きたいんだよ。とにかくもう帰るな。じゃあな」


めんどくさいし暑いからさっさと帰るに限る。


 - ☆ - ☆ - ☆ -


あたしが帰ってきてしばらくして、優希が帰ってきた。スーパーの袋を持っているところを見るに、買い物帰りだろう。


「ただいま~」


「おう、おかえり」


それにしてもよかった。朝帰りとかじゃなくてよかった。何かされた様子もないし。


「あれ、どこか出かけてたの? 赤くなってるよ」


あー、日焼け止めつけたんだけどなぁ。これだから夏は嫌なんだ。


「まぁちょっとな。それより、楽しかったか?」


「うん。あ、これお土産ね」


「サンキュー。……うおっ!! なにこれキモッ!!」


袋から出てきたのはデカいダンゴ虫みたいなぬいぐるみ。キモすぎる。


「ダイオウグソクムシだよ」


「キモい!! でもなんかツボに入る!! ありがとな!!」


「喜んでくれてよかったぁ」


「あ、そうだ。優希、ちょっと来い」


「なに―――んむぅ!?」


無警戒に近づいてきた優希の唇を奪う。へへっ、消毒しないとな。




ダイオウグソクムシのキモさといったら、もうたまりません。

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