第20話 勉強会だけどいいじゃない!!
何の変哲もない平穏な日常。皆と和気あいあいと食べるお弁当はおいしい。そんな中―――
「そういえば、もうすぐ期末テストでしたね」
雅さんの一言でピシリと空気が凍りついた。
「あ、あの、皆さんどうされました?」
「……たぶん、皆勉強してないんじゃない?」
テストなんて嫌なことだから忘れていたかったのかも。
「俺は勉強してるけど……やっぱテストは嫌だな」
「私もやり始めてるわよ。部活も今は無いし」
「紗彩もです。でも手芸は家でも出来るし中々はかどらないです」
「……わかる……家だと……誘惑が多い」
「お姉ちゃんは?」
お姉ちゃんは箸を置き、ふぅ~とため息をついた。あ、この後の展開読めたかも。
「……勉強、教えてくれ」
何とも予想通りな反応。
「そう言うと思ったよ……」
「頼む!! 補習くらって夏休みが無くなるのは勘弁したい!!」
「やれやれ……別にいいよ。教えてあげる」
夏休みにお姉ちゃんと一緒に居れないのは嫌だし。
「……なぁ優希」
「なに? カズくん」
「オレにも教えてくれ……いやお願いします教えてください」
うわぁ、なんて綺麗な土下座。
「わ、わかったよ……カズくんも教えてあげる」
「ありがとうございます!!」
ビシッと敬礼をするカズくん。そんなに危ないの?
「でもどこでやる? 今の時期、図書室や自習室はいっぱいだろうし」
「まったく……テスト前だけ勉強しやがって」
お姉ちゃん人のこと言えないでしょ。
「う~ん……あ、なんなら家でやる? そんなに遅くまで出来るわけじゃないけど」
「勉強教えてくれるならどこでもいいぜ!!」
「優希さんのお宅ですか……」
なんか雅さんがチラチラと見てくる。
「どうかしたの?」
「いえ、その……わたくしもお邪魔させてもらえませんか?」
「雅さんに教えることなんてないと思うんだけど……?」
むしろ教えてもらう感じだよね。
「……そういうことではなくて……その」
「?」
どういうこと?
「あ~、俺も行っていいか? 俺も教えてほしいことあるし」
「……マサが行くなら……わたしも」
「なら私も行く」
「紗彩も行くです。皆で勉強会です」
勉強会かぁ……確かに皆でやればはかどるかな? でもボク1人じゃ大変かな……
「だったら雅さんも一緒にどう? いろいろ教えてくれると嬉しいな」
「はい!! 是非ともご一緒させてください!!」
なぜかテンションの高くなる雅さん。そんなに勉強したいの?
「こいつも案外鈍いよな」
「マサさんが言えることじゃないです」
「そうね。あんたにだけは言われたくないわね」
「……マサに……言う資格ない」
「なんでだよ!!」
- ☆ - ☆ - ☆ -
「ここが優希さんのお宅ですか」
「うん。さ、上がって」
「……お邪魔します」
「お邪魔するです」
「ここに来るのも久々だな」
「上がらせてもらうな~」
この人数だと部屋では出来ないのでリビングでやることになる。全員分のお茶を用意してさっそく始めることにする。
「で、2人はどこが分からないの?」
「そうだなぁ……苦手なもんはいろいろあるが特に数学がわかんねぇな」
「オレは全部!!」
「カズくんに教えられることはもうないよ……」
「おい!! 諦めるなよ!! 諦めたらそこで試合終了だぞ!!」
そもそも試合すら出来ない状況じゃない。
「カズくんには皆で教えようか……」
それなら一縷の望みがありそうだし。
「そうだな……」
「仕方ないです」
「まったく、しょうがないわねぇ」
「……勉強の合間に……教えればいい」
「ありがとう!! 頼りにしてるぜみんな!!」
「やれやれ……」
今度こそ勉強を始める。
「え~と、ここでこっちの計算式の値をこっちに代入して……うん? 変な値が出たぞ? どうなってんだ?」
「お姉ちゃん落ち着いて。やり方はあってるよ。どこかで計算ミスしてるんじゃない?」
「……あ、ここか」
「やり方があっていても計算ミスしたら0点だから気をつけてね」
「優希さんも間違えていますよ」
「え? どこどこ?」
「ふふふ、やり方があっていても計算ミスをしたら0点ですから気をつけてくださいね」
「うぅっ……」
雅さんがボクを、ボクがお姉ちゃんを教えるという構図が出来上がっていた。雅さんには迷惑かけっぱなしだなぁ。
「オレも美女に囲まれて勉強したい……」
「おまえはこっちに集中しろ。全然できてねぇじゃんか」
「だってモチベーションがよぉ……」
「夏休み無くなるわよ」
「うげぇ……」
「ほら次の問題だ。呼吸するときに何を吸って何を出す?」
「え~と……ちょっと待ってろ。今調べる。すー、はー、すー、はー」
「そんなんで分かる訳ないだろ」
そんなこんなで勉強会をやっていった。
~テスト返却日~
「やったぞ!! 補習回避だ!!」
「わぁ~、やったね。これで夏休み遊べるよ」
「おまえはどうだった? って、聞くまでもないか」
「もちろん補習じゃないよ。でも常日頃から予習復習をしっかりとすれば慌てることもないんだよ」
「うぐ……この優等生め。あ、そういえば予習はばっちりなんだけど復習の出来てない科目があるな。ちょっと一緒にやらないか?」
「いいよ。何の教科?」
「ん~……強いて言うなら保健体育の実技だな」
「……ごめん。まだ一人でやってて」
「ちっ……だったらキスしようぜ。補習回避祝いとして」
「まぁそれくらいなら……ん」
「ん……」
「…………」
「…………」
「……なぁ優希」
「……なぁーに?」
「や ら な い か ? (キリッ」
「いろいろと台無しだよ!!」




