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姉弟だけどいいじゃない!!  作者: 毒の花


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第19話 デパートだけどいいじゃない!!

気が付いたら3月は一度も更新していなかったという事実。

夕日の差し込む教室で、あたしと優希は見つめ合っている。周りには誰も居ず完全に2人っきりの状態だ。


「お姉ちゃん……」


優希はスッと目を閉じて背伸びをする。頬が赤いのは夕日のせいか、それとも羞恥心のせいか……


身長差があるとやりづらいな、と思いつつ顔を近づけていく。そして、唇が重なる。


「……ん」


柔らかくて、なんだか気持ちいい。ずっとこうしていたいくらいだ。


しばらくして離れる。優希は目をとろんとさせて、こちらがグッとくる表情をしている。このまま襲ってしまいたい……!!


「お姉ちゃん……もっとしたい……」


今日はやけに積極的だな。


「おまえがしたいならいくらでもしていいぞ―――おっ?」


いきなり優希に押し倒された。それほど強い力でもないのにだ。


「ゆ、優希……?」


「もっと先までしたいの……」


えっ? ということは遂に一線を越えるってことか? 大人の階段駆け上がっちゃうわけだな!? でも初体験が放課後の教室とかマニアックだなオイ。あたしとしては何時でも何処でもウェルカムなわけだが、ちょっとこう、なんというか……


「ダメ……?」


そんなわけあるか。ええい女は度胸だ!! 優希が望むんなら応えてやる!!


「い、いいぞ」


そう答えて目をつむる。優希の息遣いがだんだんと近づいてきて、そして―――


 - ☆ - ☆ - ☆ -


「……ん?」


目を開けると、そこは自室だった。朝日が差し込んできている。


「夢かよっ!!」


思わずガバッと起き上がる。そして「はぁ~~~」と深いため息をつく。……何であんな夢見たんだか。


「……溜まってんのかなぁ、あたし」


それにしてもいいとこで目覚めちまったな……もうちょっと見ていたかった。二度寝すれば見れるかなぁ。


再び布団をかぶって横になる。なんとしても続きが見たい。


コンコン


「お姉ちゃん朝ごはん出来たよー……あ、やっぱり寝てる。起きて。休みの日だからっていつまでも寝てちゃダメだよ」


「あぁ~、分かったわかった。今起きる」


ったく、こいつは人の気も知らないで。そもそも、優希がもっと積極的だったらこんなことで悩まなくても済みそうなんだが……そういや、こいつって猫なんだよな。


「なぁ優希」


「なに?」


「おまえって発情期来るのか?」


「いきなり何言ってるの!?」


「だっておまえ猫なんだろ。だったら発情期が来るはずだろ」


それとも人間ベースだから来ないのか?


「~~~~っ!! 変なこと言ってないで早く起きてよ!! お母さん達もう出ちゃったんだからね!!」


顔を真っ赤にしながら出ていく。どうやら二度寝はできなそうだ。


「……そういや」


ふと夢の内容を思い出しながら、そっと指で唇をなぞる。


「最近、ちゃんとキスしてねぇな……」


 - ☆ - ☆ - ☆ -


朝食を食べた後、ソファに寝転がりながらファッション雑誌をパラパラとめくる。夏が近いせいか水着特集が目立つ。


水着ねぇ……新しいの買うべきか? 去年のはちょっと小さいだろうし。それに雅がきわどい水着で優希を誘惑しそうだし。ここは新しい水着で悩殺するべきだな。


「……あ」


「どうした?」


ふと優希を見るとチラシを持ってわなわなと震えていた。あれは……ペットショップのチラシ?


「見てよこれ!! いつもの猫缶が大安売りだよ!! これは買いに行くしかないよ!!」


「そ、そうか」


あぁ……もう食うのに抵抗はないんだな……


「……ん? こっちのドライフードの方が安くなってるじゃねぇか。栄養価も高いしこっちの方がいいんじゃないか?」


「そうなんだけど……そっちはあんまり好きじゃないから。それに栄養は人間の食べ物で摂れてるからボクにとって猫缶はおやつみたいなものだよ」


ふーん。そんな気に入るほど美味いのか。……そういや、キャットフードを人間が食っても害はないって聞いたことがあるな。いや食わんけど。


「じゃあ、ちょっとデパートまで行ってくるね」


「あ、デパート行くならあたしも行く。ちょうど欲しいものがあったんだ」


「そう? じゃあ一緒に行こっか」


「5分待ってろ。日焼け止め塗ってくるから」


「うん、わかった。えへへ…」


「なんか上機嫌だな」


そんなに猫缶食いたいのか?


「だってお姉ちゃんと二人っきりで出かけるなんて久しぶりなんだもん。これってデートだよね?」


「……やっぱ30分待ってろ。着替えてくる」


そうだよデートだよなんでそんなことに気づかないんだあたしは!! とにかく余所行きの服装に着替えないと!!


 - ☆ - ☆ - ☆ -


というわけでデパートに到着。まずはあたしの水着を見に行くことになった。猫缶って重いし。


「うわぁ~、水着ってこんな時期から売ってるんだね」


「ファッションってのはな、季節を先取りするもんなんだぞ。その季節になって買おうとしたら売れ残りばっかになって泣くはめになるんだ」


「へ~、そうなんだ」


尊敬の眼差しで見つめられる。言えない……雑誌の受け売りだなんて絶対に言えない……!!


「あれ、おまえたちも水着買いに来たのか?」


「ん?」


「あ、マサくん」


何でこいつがここに居るんだよ? せっかくのデートだってのに……話しかけてくることないだろ。


「……なんで俺は睨まれてんだ?」


「てめぇの胸に聞いてみろ」


「は?」


「それでマサくんはなんでここに?」


「あの2人に無理やり連れてこられたんだよ。水着選んでくれって」


マサの指差す方向には美奈と愛理沙が。なるほど、デートに誘ったわけだな。こいつは無自覚だけど。


「ちょっとマサ早く来なさいよ……ってあら?」


「……栗栖と……優希?」


「よっ。邪魔して悪いな。おまえらもデートか?」


「べっ、べべ別にでででデートって訳じゃないんだからね!?」


分かりやすい反応だな。そんなんで誤魔化せるのはマサだけだぞ。


「なーんだ。デートじゃないんだ」


ここにも居た。将来、悪いやつに騙されないか心配だな。


「……2人は……デート?」


「おう。つっても軽く買い物する程度だけど」


でもまぁデートはデートだ。


「……マサ……早く水着……選んで」


「そういや、なんで俺が選ばなきゃならないんだ? 水着ぐらい自分の好みで買えよ」


「……やっぱり……バカには見えない……水着がいい?」


「おまえは露出狂か!? 節度を持てよ!!」


「……じゃあ……選んで」


「わかったよ……」


「あ、私のも選んでちょうだい」


「は? なんでだよ?」


「い い か ら え ら び な さ い」


「……ハイ」


こいつ将来は尻に敷かれるタイプだな。


「優希もあたしの選んでくれよ」


「えっ、ボクが? うーん……」


「それともおまえもバカには見えない水着がいいのか?」


「絶対やめて!!」


「そんなことしたら優希の嫉妬で夏の海が血の海になるぞ……」


 - ☆ - ☆ - ☆ -


「ただいまー」


買い物を終えて帰ってきた。いい水着があってよかった。これは臨海学校の時に着るかな。


「おかえり。どこに行ってたんだ?」


「あ、母さん。帰ってたのか」


「今日は猫缶が安売りしてたから買いに行ってたんだよ」


「ほぅ……それはよかったな」


「父さんは帰ってないのか?」


「お父さんなら今お茶を淹れてる。なんでも、取引先の人から珍しい茶葉を貰ったそうだ。2人も飲むか?」


「おう」


「わーい楽しみー」


「おーい、お父さん、コップ2つ追加だー」


「はいはい、今持っていくよ」


父さんの入れてくれたお茶で一息つく。


「ん……不思議な味だな」


緑茶っぽいけどなんか違う。まぁ、悪くはない。


「ふにゃ~」


いきなり優希が抱き着いてきた。どうしたんだ?


「うにゃぁ~おねーちゃん……ゴロゴロ~」


喉を鳴らしながらすりすりしてくる。いやホントどうした?


「優希?」


「みゃぁ~ゴロゴロ~」


なんだか様子がおかしい。目をとろんとさせて頬がほんのりと上気している。


「なぁ、優希の様子がおかしいんだが」


「お父さん~ゴロゴロ~」


「そっちもかよ!! いったいどうなってんだ!!」


「いや~、これ貰った時、2人は喜ぶだろうなと思ったけど、まさかこうなるとは」


「あのお茶なんだったんだ?」


「またたび茶だよ」


「猫にんなもん飲ませんなよ!!」


ということは酔っぱらってんのかこいつ。


「みゃ~」


今度は膝枕の状態であたしの太ももに頬ずりしてくる。こいつ、酔うとベタベタ甘えてくるんだな。


またたび茶……なかなかいいもんな。へへへ…




猫というものは雌が発情し、その匂いを嗅いで雄が発情するらしいです。ということは優希が単体で発情することはないですね。

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