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姉弟だけどいいじゃない!!  作者: 毒の花


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第17話 体育祭だけどいいじゃない!! Part4

ようやく体育祭が終わりましたね。長かったです……執筆時間が。

『えー、これより男女混合リレー、1年生の部を開始します』


「お、出番だな」


「頑張ろうね」


ついに最後の種目になった。結局、神代さんの代理はボクになった。なんでも、女子に混ざってても違和感がないからとか。そろそろ怒ってもいいよね?


「うん? なんでおまえがいるんだ?」


集合場所にはお姉ちゃんがいた。やっぱり足が速いから出場するんだ。


「ちょっと代理でね。お姉ちゃんは?」


「あたしはアンカーなんだよ」


わー、すごいな。


「にしても、おまえらに負けててムカつくな」


「まあまあ、そんなこと言わないでよ」


今、ボク達1組の総合得点は二位に大差をつけてトップを独走している。これなら優勝間違いなしだね。


「あーあ、優希の女装がパァだ」


「ボクにとっては良かったけどね」


いったい誰が女装コンテストなんて思いついたんだか。


『なお、一位になったクラスには一億点が加算されます』


「……え?」


なんか耳を疑いたくなるような放送が聞こえてきた。


「ならまだ優勝のチャンスが残ってるってことか。こりゃあ負けらんねぇな」


「ええええ!? 今までの点数はなんだったの!?」


『それでは位置について、よーい』


「始まっちゃうの!?」


パァンと銃声が鳴り響き一斉にスタートする。


「あああああ、始まっちゃった……」


「落ち着け。最悪おまえが女装すればいいんだ」


「それが嫌なんだよ!! 皆頑張ってー!!」


悲痛な祈りを込めて応援する。


すると祈りが届いたのか、皆は常にトップを走り、ボクの番になる頃には二位と半周くらいの差がついていた。


「よし!!」


パシッとバトンを受け取って走り出す。このまま行けば一番になれるはず。


一生懸命にコースを走る。この勝負、絶対に負けられない……!!


「そう簡単に勝てると思うなよ!!」


声が聞こえてきたので、チラリと後ろを見るとお姉ちゃんがすごい勢いで迫っていた。


「うわぁっ!?」


もっと速く走らないと!! もっと、もっと速く___


 - ☆ - ☆ - ☆ -


保健室でわたくしは一人、ベッドの上でぼんやりと窓の外を眺めていた。もう体育祭は終わり、皆が片づけをしている。わたくしは何をするでもなく、それを眺めていた。


「あ、まだ残っていたんだね」


天道さんが入ってきた。何か保健委員としての仕事が残っているのでしょうか?


「どう? 疲れはとれた?」


「ええ。……あの、わざわざそれを言いに?」


「うん。心配だったし」


……なんて律儀な人だろうか。思わず笑みがこぼれてしまう。


「どうしたの?」


「いえ別に……立ち話もなんですから、こちらに座ってください」


ポンポンとわたくしの座っているベッドを叩く。天道さんは少し考える素振りを見せてから座った。


「……こういうの、あんまりしない方がいいんじゃない?」


「こういうのとは?」


「こう、男を同じベッドに座らせることとか」


あら、わたくしが無防備だと言いたいのかしら?


「ふふふ、心配しなくても、こんなこと致しませんよ。それに、どちらかというと天道さんが襲われる方では?」


「襲われちゃうのボク!?」


「別に襲いませんからそう身構えなくても……」


ですがまぁ、本当にかわいらしいですわね。ちょっとした仕草も女の子のようですから余計に。そこいらの女の子よりもずっとかわいいですね。思わずギュッとしたくなります。皆が妹扱いする気持ちが分かりますわ。


「む、なんだか怒りが湧いてきたような……」


鋭いですわね。


「ふふふ……そういえば、リレーは残念でしたね」


「うっ……見てたの?」


「ここから見えますからね」


あっさりとお姉さんに抜かれた天道さんは転んでしまい、けっきょく最下位になってしまった。


「うぅ~……女装やだなぁ……まぁいいや。神代さんも元気になったみたいだし、ボクはそろそろ戻るよ」


「あ、待ってください。少し、お願いが……」


「え? なに?」


「あ、いえ、その……これからは、雅と呼んでくれませんか?」


「えっ?」


「あの、その……天道さんはお友達を名前で呼んでますし、わたくしももっと親しくなれたらと思いまして……」


ごにょごにょと語尾が尻すぼみになってしまう。な、なんだかドキドキしますわ。


「だ、ダメでしょうか……?」


「ううん。別にいいよ雅さん」


にっこりと満面の笑顔で名前を呼んでくれる。そのせいか、さっきとは違う意味でドキドキしてしまう。


「ボクのことも名前でいいよ。名字だとお姉ちゃんとごちゃごちゃになっちゃうし―――ってどうしたの? 顔、赤いよ?」


「……なんでもありませんわ。夕日のせいです」


本当は貴方のせいですと言いたいのですが……それはまだ、言えそうにありませんね。


「それと、昼間のことですが……わたくしは諦めるなんてことはできそうにありませんわ。わたくし、けっこう負けず嫌いですから」


そもそも、わたくしが姉を目指しているのも、学校で一番でいるのも、負けたくないからですから。


「……ん。そっか。それでもいいと思うよ」


「はい。ですけど、たまには休憩したいです。なので、わたくしの休み場所になってくれませんか?」


「……? ボクで役に立てるならいいよ」


「では、さっそく」


ギュッと優希さんを抱き寄せる。なかなか、抱き心地がいいですわね。それに、なんだかホッとします。


「ふみゃっ!? み、雅さん!?」


赤くなる優希さん。なんだかこう……グッときますね。


「雅さん、なんだか目が怖い……」


あぁ……本当にかわいらしい。先ほど、冗談で襲うと言っていましたが、本当に襲ってしまいそうですわ。


「優希っ!! 今貞操の危機なんじゃないか!?」


突如、扉が勢いよく開き、天道さんが乱入してきた。どういう勘の良さですか。


「あっ、てめっ、優希から離れろ!!」


グイッと引き離される。あぁ、せっかくの癒しが……


「優希も引っ付くんじゃない!! こういう乳のデカい女はエロいから何されるかわかったもんじゃねぇぞ!!」


「なんですのその偏見は……第一、その理論で言うと貴女もそうであるということでは?」


「あたしはエロいんじゃない!! 欲望に忠実なだけだ!!」


「余計悪いですわ!!」


「ふ、二人とも落ち着いてよ!! なんでいきなりケンカなんてするの?」


「おまえのせいだ!!」


「貴方のせいですわ!!」


「ええっ!! なんで!?」


うろたえる優希さんを他所にわたくしと天道さんは視線を交える。それだけですべてが通じた。


「やらねーぞ」


「奪ってみせますわ」


お互いにライバル宣言。けど、負けませんわ。わたくし、負けず嫌いですから一番は譲りません。絶対に……!!




念の為の補足説明

男女混合リレーとは男子と女子が交互に走るリレーです。別に男子vs女子というわけではありません。

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