18話 ハントの時間。
18話 ハントの時間。
全てを晒したあとで、センは立ち上がり、肩をすくめた。
「さすがだぜ。さんざん好き放題やっておいて、責任なんか知ったことじゃないって? おまけに、今日この集まりに顔も出さず、とっくに逃走中とは、類まれな悪党だぜ」
スクリーンが切り替わり、逃走経路のオーバーレイが走る。
港区タワマンのエレベーターログ、地下駐車場でナンバー偽装したSUV、湾岸ヘリポートの離着陸記録、川沿い倉庫街での積み替え、環状線北上の防犯カメラ群――最後は郊外の貸し別荘。
名義は例のSPV。
窓の内側で動く闇川の影、その顔には脂汗がびっしり。
センは顔も上げずに告げる。
「全国民に通達だ。懸賞金を出す。俺が出してもいいが……ここはクラファンにしようか。一口、一円でいい。透明エスクローは俺がやる。入出金は全公開、取り分の契約も俺が魔法で封印する。不正は一切できない。闇川権之助を『生け捕り』にした者に、全額をくれてやる。大金ってのは、こういうときに使うもんだ」
全国民のスマホが震え、黒地に『〈闇川権之助 懸賞金〉』のバーが現れた。
報道を見ていた者たちは、一斉に送金しはじめる。
数字は雨粒のように跳ね、数千、数十万、百万、数千万……と加速していく。
――五分後、カウンタは容赦なく桁を繰り上げ〈三十二億〉で一度だけ息をつく。誰の号令でもない。
これは国民の怒りの指数。
センは最後に釘を刺した。
「OK。それでは、皆さま……ハントの時間だ。一狩りいこうぜ。……ただし殺すな。半殺しは許す。かならず、生かして俺の前に連れてこい。闇川は俺がやる。以上だ。諸君の健闘を祈る」
応接室の隅で主計局長が顔を上げる。
恐怖でも屈辱でもない、どこか、晴れやかな顔。
理財局長が低くつぶやく。
「……これが、戦後の終わりか。」
主税局長が頷く。
「……こんな日が来るとはな……」
★
天井のスクリーンでは、逃走中の影の輪郭がまだ小さく揺れている。
汗だくで、泥だらけの闇川が、山の中を走っていた。
追いかける民衆の影も映りこむ。
捕獲までカウントダウン。
センは短く言い捨てる。
「走れよ、闇川権之助。お前が踏んだ地面のひとつひとつが、お前の逃げ道を消していく。人の怒りをナメたツケを払え」
センは椅子に戻り、背筋を伸ばした。
応接室に秒針の音が戻る。




