17話 闇川家は悪魔の家系。
17話 闇川家は悪魔の家系。
「……お前らに関しては、今後、死ぬ気で国民に尽くすということで罰は与えない」
そこで、センは、グっと眉間にしわをよせて、
「……しかぁし、闇川の息子――闇川権之助。てめぇはダメだ!!」
大臣室に隣接する応接室の天井が低くうなり、白い面が巨大なスクリーンへと変じる。
都市の俯瞰地図、監視カメラの時系列ログ、
金融トランザクションが幾層にも重なって浮かび上がった。
センは人差し指をひとつ払う。
「――首相の闇川も大概だったが、それ以上の悪だな、お前は。逆に尊敬できるレベルだぜ」
まず映ったのは『人事の系譜』だった。霞が関の組織図に赤線が走り、〈大臣官房参事官(特命)〉で止まる。
小さく〈非常勤内閣官房参与(税制)兼務〉、さらに〈主税局税制企画室 室長補佐(兼務)〉の薄字。
正面ルートを踏まず『上から差し込む』ための穴――敗戦国流の抜け道を闇川権之助が最短距離で渡っていた。
「これらは全て、内部監査ログと省内端末のタイムスタンプ、そして俺が拾った通信の断片を突き合わせた結果だ」
次に『還付スキーム』。
輸出大手のロゴ群から矢印がインボイス登録データへ、
そこから『共同事務所』の箱に流れ込み、国庫の仕入税額控除へ折り返す。
〈見込み還付額:年▲1,128億〉。
横には〈処理手数料3〜5%/実働は一社当たり数クリック〉。
――データを見ながら、センが淡々と言う。
「登録データを先回りで押さえた。企業の『手間』を肩代わりする体裁で、実質は還付金の抜き取り。やり口が古いのに、図太い。賢いと言ってやってもいいが……あまりにあくどすぎるから、流石に褒めるのはやめておくぜ」
『国有財産の売却ログ』。
湾岸の倉庫、都心の旧官舎、地方宿舎跡が赤く点滅する。
どれも一度SPVへ落ち、即座に『第三者』へ転売。
棒グラフの頂に〈差益合計:68億〉。
フッターの薄墨には、
『〇〇インベストメント・パートナーズ 非常勤アドバイザー:闇川権之助』とある。
『国策ファンドの横流し』。
公的出資が二段で別ファンドへ。
片方はベンチャー投資、もう片方は『諮問料』……
その先にケイマン籍のLP。
〈諮問料名目流出:14億〉。
ミキサーを三段通した暗号資産の糸が青白く残り、終点は匿名信託『闇川財閥信託』。
『先回り取引』。
国債入札のカレンダー直前に、いつも立つ先物ポジション。
わずかな金利差をレバレッジで刈り取り、〈推計利益:年9億〉。
発信元は省内VPNの特定端末、使用者欄に『闇川権之助』の文字。
――幹部たちの肩が揃って落ちた。
主計局長は机の下で拳を握り、理財局長の眉間には深い皺、主税局長は目を閉じる。
「ま、まさか、ここまでとは……」
「……ひどすぎる……」
財務省の幹部たちも『闇川が黒い』という噂は常々耳にしていた。
だが、それは『政治家の口利きや小規模な還付ビジネス程度』と考えられていた。
省内の監査や決裁は縦割りで細分化され、誰も全貌を把握できない仕組みになっている。 加えて、闇川は親の威光で横滑り的にポストを得ており、通常のキャリア官僚のチェック網から外れていた。
だからこそ、ここまで巨大で多層的な不正スキームを組んでいた事実は、他の財務省幹部にとっても初めて突きつけられる驚愕の事実だった。
★
【SNS】
〈は? 闇川権之助って誰? 有名人?〉
〈センに殺された元首相のドラ息子。裏口で官僚ポストにねじ込まれてた〉
〈え、何やったの?〉
〈簡単に言うと、消費税の『還付金』を合法っぽく抜き取ってた。企業の代わりに申請データを押さえて、『処理手数料』って名目で国庫から金を吸い上げる仕組み〉
〈還付ってのは、輸出企業とかが消費税を払いすぎた分を返してもらう制度。それを闇川が『代理で申請してやるよ』って顔して、実際は手数料名目で抜いてた〉
〈しかも年間千億超えw 3クリックで億単位ww〉
〈国有地の売却もやってたよな〉
〈そうそう。一回ペーパーカンパニーに落として、すぐ転売。差益は丸ごとポケット。役職は『アドバイザー』って肩書きw〉
〈国策ファンドからも抜いてたんでしょ?〉
〈投資ファンド経由で『諮問料』って名前にして、結局はケイマン諸島に。暗号資産に変えて『闇川財閥信託』に流してた〉
〈財閥名乗ってんの草〉
〈まあ、解体される前は実際財閥だったしな。闇川の家は〉
〈極めつけは国債の先回り取引。入札直前に先物ポジション立てて、金利差をレバレッジで刈り取る。年9億確定とかチートすぎw〉
〈……もうさ、これ一人の人間がやる悪事のフルコースだろ〉
〈教科書に載せたいレベルの汚職のデパート〉
〈殺せよ、そんなやつ。俺が許す〉




