7話 センエースが好きなの?
7話 センエースが好きなの?
「俺、君のことが好きなんだ」
トコはその告白に対し、一切動揺することなく、
間髪入れず、極めてクールに返した。
「そうか。あたしはセンエースが好き」
「……ぇ」
「対抗できそうか? あの怪物くんに」
「……いや……それは……流石に……」
城聖の肩が落ちる。
トコはその様子を見ながら、心の中で苦笑した。
(便利やな。あの怪物くんの名前を出したら、みんな、秒で引き下がる)
テロ以来、勇気ある学生が何人か告白してきた。
『強い女が好き』というモノ好きが、この世には結構な割合で存在する。
いわゆるバブみというやつ。
面倒事が嫌いなトコは、すべての告白を『センが好きだから』で断ってきた。
方便のつもり――そう思っている。
だが、自分の本心はまだわからない。恋なのか、別の感情なのか、不明なまま。
★
――ユズは、城聖とトコのやりとりを見ていた。
廊下の影から現れ、鋭い瞳でトコを射抜く。
城聖が消えたところで、トコに近づいていき、
「……あんた、センエースが好きなの?」
「……え、ああ、聞いとったん? あんた、あたしのことのぞきすぎやで」
「答えて」
「……あんな怪物、好きにはならんやろ。常識的に考えて。……ただ、そういうことにしといた方が、いろいろと楽やから」
「センエースを、そういうのに使うのは……やめた方がいいんじゃない?」
トコは冷たい視線を返す。
「……ずいぶんとまっとうなこと言うやん。男をアクセサリーかトロフィーとしか思ってない女王様が」
「……」
「……」
バチバチと睨み合う。
やがて、ユズが一歩踏み込み、低い声で囁いた。
「薬宮……あんたって結局、なんなの? 全国模試一位とかとる変態のくせに、なんで、こんな普通の学校にいるんだよ。よくよくみたら、運動神経とかも異常だし。隠しても分かるんだよ、こっちだってバカじゃないんだから」
「勉強はそれなりの結果を出しとるけど……運動神経に関しては、言うて、普通やで。ま、ちょっと平均は超えとるやろうけど。体力に関してはゴリゴリに普通やし。総合的に見て、普通やろ。センエースとか、ロキとか、ああいう本物の変態と比べれば」
のらりくらいと追及の手をかわすトコに、
ユズは、決心したように、
「……それに……」
「それになんやねん」
「転生文学センエースの作者……あんたやろ?」
声量を抑えて、トコの耳元で、そう言った。
トコの目が光る。
(なんで……)
心の中で疑問符を抱いていると、ユズが続けて、
「なろうのマイページ……見ればわかる。私も……ぁ、いや、彼氏の一人が、そういうのやってたから……」
「あ、そう……それは……正直、まいったな……別に困るってほどでもないんやけど……いや、最近のバズり方を考えると……普通に困ることもありそうやな……」
ぐだぐだと言っているトコに、
ユズは、揺るぎない瞳で問いかける。
「あんたはセンエースのなんなん?」
トコはスマホを握りしめ、息を詰めた。




