トコ21話 守護神。
トコ21話 守護神。
「全一プレイヤーと素人じゃ、勝負にならないってだけの話だ」
センの冷笑混じりの声が、体育館の隅々まで届いた。
「こ、こんなに差があるわけがない! 俺は人間の頂点に立つ鬼神!!」
ロキは歯を食いしばり、血走った目で睨みつける。
「ぉ、俺は……死ぬ気で武術を磨いてきたんだ……! 果てしない鍛錬を積んできた! 死ぬ気で努力をしてきた! 神であろうと、俺を超えることなどありえない!」
その叫びを、センは軽くあしらった。
「奇遇だな。俺もだよ」
「な……なに……」
センは静かに言葉を重ねた。
「お前の過去を知らないから、正確な数字は出せないが――ざっと見積もって、お前の8億倍は頑張ってきた自負がある」
「ふ……ふざけたことを……っ!」
ロキの顔は屈辱に歪んだ。
呼吸が荒れ、瞳に焦りが混じっていく。
そのとき、彼の視線が床に転がる銃を捉えた。
一瞬の逡巡ののち――ロキは飛びつく。
「同じ肉体なら銃で死ぬだろ!」
咆哮と共に銃口を生徒たちへ向ける。
センに向けないのは『そのままセンに撃っても避けられる』と分かっているから。
「ガキを庇って死ぬか、ガキを見殺しにするか……好きな方を選べぇっ!」
バンッ、バンッ、バンッ――!!
無差別な乱射が体育館を切り裂いた。
悲鳴、泣き声、混乱。
体育館は一瞬にして阿鼻叫喚に変わる。
「きゃあああ!」
「た、助けて!」
「し……死んだっ!」
銃声と絶叫が交錯し、空気が血の匂いに染まりかけた――が。
「……うるせぇな。問題ねぇから、黙って見てろ」
乾いた銃声の合間に、落ち着き払ったセンの声が響いた。
彼は既に別の銃を拾い上げ、トリガーを引いていた。
ロキが放つ弾丸を、センの撃つ弾丸が正確に迎撃する。
火花が散り、弾丸同士が空中で打ち消し合う。
奇跡の連続。いや、奇跡ではなかった。
これこそが、極限を超えた鍛錬の結晶。
「な……っ!?」
ロキの目が見開かれる。
弾丸はすべて相殺され、誰ひとり傷つかない……そんな狂気を目の当りにして絶句。
センは静かに銃口を傾ける。
余裕の笑みを浮かべ、
「銃の鍛錬も、それなりに頑張ったもんでね。……なかなか上手いもんだろう?」
ユズはその姿に目を奪われ、両手を胸にぎゅっと握りしめた。
涙で滲む視界の中、ただ一言、心の底からこぼれる。
「……す、すごい……」
生徒たちの絶叫は、やがて歓声に変わっていった。
「な、なんだ今の!? 弾が……消えたのか!?」
「違う! センエースが撃った弾で、ロキの弾を弾き落としたんだよ!」
「はぁ!? そんなこと出来るわけ――」
「マジでやったんだって! すげぇ!! マジで神、やべぇ!」
「同じ銃なのに、なんで、センが撃った弾の方が速いんだ?」
「知るか」
「人間じゃねぇ……」
誰かが興奮して叫ぶたび、周囲のざわめきが熱を増していく。
恐怖で固まっていた空気は、今や信じられない光景に沸き立っていた。




