157380話 それでも……
157380話 それでも……
「――と、割と本気で思うわけだが……シャレじゃなく、ガチ目に、しんどくて泣きたいんだが……」
センは息を整え、目を細める。
たまった愚痴と弱音を吐き終えて、顎をあげる。
その瞳の奥に宿るのは、
「けど……」
これまでに積み重ねてきた全て。
「それでも……叫び続ける勇気を……」
バチバチと、全身に電気が走る。
「ぶっ壊れて、歪んで、腐って……」
低く告げる声が、
「それでもなくさなかった全てを……集めて……」
戦場の空気を凍らせる。
パチパチとゆらめく。
絶対零度に溶けた灼熱よりも鋭利に、
センエースの全てが神々しく瞬く。
「奪い返すぞ……全てを……俺の命全部使ってでも……」
そうつぶやいた直後、背後から、
「――だから、死ぬなぁ言うてるやろ、ぼけぇ。分からん男やなぁ」
聞き馴染みのある声がして、センは振り返る。
そこには、トコが立っていた。
「生きとったんか、ワレェ!」
「いや、死んどるよ。ついさっき、ラストの中で、エンヴィーに殺された」
そう言いながら、ラストを指さすトコ。
ラストは、死者トコを警戒してか、セン&トコから距離をとっている。
センは、トコに、
「もしかして……ドラフト?」
「もしかしてってなんやねん。ノートに書いてたやろ……って、あんた、もしかして、最初のページしか見てへんのか? 何してんねんっ」
「…………俺は悪くない。政治が悪い」
「……はぁ。……2ページ目に、『あたしが死んだあと』のことも書いといたんや。この状況になるってな」
トコは、プロットだけではなくドラフトも併用してプライドを使っていた。
計算し尽くされた謀略。
トコは、
「生者プライドを奪ったことで、ラストのメモリはもうない。これでようやく……あんたの翼になれる」
そう言いながら、『毘沙門天の剣翼』の中へと溶けていくトコ。
「センエース……あんたの底は、まだまだ深い……もっとある。あたしはそれを知っとるよ。あんたが積み重ねてきた全部は……ラストごときに負けるほど軽くない」
「……知った風な口きくんじゃねぇよ」
いいながら、センは、翼をはためかす。
――受け取った想いと、
注がれた愛が、
『熟成された経験値』と混ざり合い、
沸々と湧き立つ。
無限を超えていく。
『その程度で止まるんじゃねぇぞ』とシュプレヒコール。
心臓の韻律が光速を追い越していく。
『まだもう少し早くなれる』とアンコール。
陳腐で低俗なフロウで乱高下に罪を背負う。
大丈夫。
飛べる。
積んで、
積んで、
詰んで、
詰んで、
それでも折れずに重ねてきた狂気が、
今、ここで、遥かなる結晶へと昇華されていく。
奇跡を願ったワケじゃねぇ。
そんなもんにすがったことは一度もねぇ!
1+1の答えが2になるのはご都合主義じゃねぇ!
ただ、思ったより咲くのに時間がかかっただけの話!!
「……毘沙門天……限界を殺すから……手を貸せ」




