157377話 狡猾で性根の腐った作戦。
157377話 狡猾で性根の腐った作戦。
「……ほう……」
センは感嘆の声をもらしてから、
目を細め、ノートを閉じる。
胸の奥で、ようやくひとつの感情が形を取った。
それは、怒りと、呆れと、畏敬の入り混じった感情だった。
ラストに視線を向けて、
「どうやら、トコの方が一枚上手だったようだ……ハメられたな、ラスト」
静かな宣告。
トコの本当の狙いを理解した者の、確信に満ちた声。
「は? どういう……うっ」
そこで、ラストはゴフっと血を吐く。
黒い影の表面に、赤い飛沫が花のように散った。
苦しんでいるラストを見ながら、センは、
「トコは、さっき、『俺の剣になる』とかなんとか言っていたが……あれは嘘だ。あいつが、プライドを使って描いた未来……それは、『お前に吸収されて、中からぶっ壊す』という狂気」
淡々と説明しながらも、その声にはわずかな震えが混ざっていた。
自分の命を完全に道具として扱うその発想に、感心と怒りが同居している。
これまで、ユズだの、ロキだの、闇川だの、
みんな、散々、異能を奪われていた。
奪われた瞬間、力は敵の手札に加わり、こちらを追い詰める道具へと変わった。
だから、トコは思った。
自分の力だって奪われるんじゃないかと。
だったら、それを前提にワナを張ってやれ……というのが、トコの本当の作戦にして切り札。
自分の死も吸収も、『予定通り』としてプロットの中に組み込んだ。
そこまでやって初めて、彼女にとっての『最高傑作』になる。
絶対にセンエースの命を守り切るための、命をかけた究極の鬼作(奇策)。
「俺の剣になることではなく、トロイの木馬になることを選ぶ……なかなか、性根が腐っているじゃないか。嫌いだぜ」
センは苦笑を漏らしながらも、その声音には確かな誇りが宿っていた。
自分と同じく、いや、自分以上に性根の悪い選択を平然とやってのけたトコへの評価。
そう言いながら、センはまっすぐに、ラストの元へと歩いていく。
一歩ごとに、地面が軋む。
それでも彼は足を止めない。
この先にあるのが、トコとの約束を果たすための道だと理解しているからだ。
「存在値がガクっと下がっているぞ。現時点で1500京ちょい。まだ下がりそうだな」
センの言葉に、ラストの身体がびくりと震える。
内側から食い荒らされている感覚は、いままさに進行中なのだろう。
「ぐ……ぅうう……」
ラストのうめき声が漏れる。
膨れ上がっていた黒い質量が、ところどころ歪み、ひび割れていく。
「これなら、どうにかなりそうだ……お前を殺し、ロキも闇川も殺す。その上で、薬宮と葛葉と他の連中全員を奪い返して復活させる。それで、トゥルーエンドだ」




