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C章 プリズンブレイク黙示録。

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157369話 茶をしばく。


 157369話 茶をしばく。


「ええ加減にせぇ! 殺すぞ!」


「花も恥じらう乙女が、語気を荒げて……はしたないっ。お里が知れますことよ」


 軽口を叩き合いながら、二人は改札を抜ける。

 エスカレーターを上がると、目の前に広がったのは、広い空と海と、整然と並んだビル群。

 潮の匂いを含んだ風が、トコのゆるく巻いた髪をふわりと揺らした。


 海沿いの遊歩道へ出ると、休日の人混みが適度にバラけていた。

 カップルや家族連れ、観光客が思い思いに歩いている。

 トコはセンの少し前を歩きながら、時々振り返って、ちゃんとついてきているかを確認した。


「うふふ、楽しいね、トコてぃん」


 トコの背後から、いかにもふざけた響きの声が飛んでくる。

 トコが視線を向けると、キャピった言葉とは裏腹に、センは腕を組んだまま、だらしなく歩いていた。


「……ほんまに楽しいと思うとるか?」


 トコは半眼で詰問。

 センは明後日を見つめながら、ボソっと、


「海を見ながら歩くだけじゃ、カタルシスは得られねぇ」


「情緒が足りんのう」


 トコは小さくため息をつきながらも、歩みを止めない。

 左手には海、右手にはガラス張りのショップやカフェ。

 波の反射が白く瞬き、観覧車が遠くで静かに回っている。


 センは、その景色を、


「美しすぎて泣いちゃうねぇ」


 などと切り捨てながらも、トコの歩幅に合わせてきちんと隣を歩いていた。


 少し歩いたところで、二人は海の見えるカフェに入った。

 ガラス越しに港を見下ろせる窓際の席。

 トコが先に椅子へ腰を下ろし、センは向かい側に座る。


「神でも食事は普通にとるんやな」


 メニューをめくりながら、トコが何気なく言う。

 センの前には、水の入ったグラスが置かれたままだ。


「食わなくても大丈夫な魔法とか神器とかあるけどな……そもそも俺、不老不死だし」


「あたし、これまでのループで、何回か、あんたが死ぬところを見てんねんけど」


「この場合における不死は、殺されない限り死なないってやつだな」


 さらりと言い放つセンの声は、淡々としていて感情の揺れを感じさせない。

 トコは口をへの字にしながら、メニューの文字を追った。

 彼の不死だの死だのという話題は、いまは深追いしたくない。

 今日は、ただ『一緒にご飯を食べる』という、それだけの行為を大事にしたかった。


 軽食と飲み物が運ばれてくる。

 トコはアイスティーのストローをくるくる回しながら、窓の外の白い船を眺めた。

 センは目の前の料理を一瞥し、いつも通りの所作で淡々と口に運ぶ。

 特別、美味いとも不味いとも言わないが、残す様子もない。



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― 新着の感想 ―
殺すぞ!から始まるのに、ちゃんと歩幅を合わせて隣を歩いている二人の距離感が最高にエモいです……。
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