157357話 スマホで小説を書くのはダルすぎる。
157357話 スマホで小説を書くのはダルすぎる。
ぐちゃぐちゃになった自室の真ん中で、トコは肩で息をしながら、
「ふ……ふざけんな……くそがぁ……」
足が震え、その場に倒れこむ。
両手で頭を抱え、指が震え、嗚咽が漏れた。
「むり……勝てへん……あんなもん……ここから、何回くりかえしても……敵が無限に強くなるだけ」
心を砕かれてしまった。
なんとか、ギリギリのところでタイムリープすることは出来た。
しかし、『立ち向かう勇気』などは、とうに失われている。
胸の奥に残ったのは、底なしの恐怖と虚無感だけだった。
「……もう無理……あたしが何回ループしようと、命を棄てようと……関係ない。……あいつは無限に強くなる。あたしが強くなったら、それ以上に強くなって……あたしをあざ笑うだけ……」
絶望感に押しつぶされる。
へたりこんだまま、指一本たりとも動かせなくなる。
★
「どうした、この部屋」
死んだ目をして椅子に座っているトコに、
『センエース』は、眉をひそめながら声をかけた。
部屋の中は、まるで襲撃でも受けたかのようにズタボロだった。
砕けたガラスが床に散らばり、机はへし折られ、パソコンは半壊、壁紙は雑に剥がされている。
部屋中に漂っている荒れ果てた空気を背に、センは、
「転生文学センエースの件で文句を言いにきたんだが……これは、どういう状態? 部屋はボロボロで、お前の目が死んでて……もしかして、強盗に凌辱でもされた? 警察呼ぶ? ハナシ聞こか?」
トコは返事もできず、かすかに身じろぎしただけだった。
精神は削れ、心はもう限界を越えていた。
それでも、ギリギリのところで、転生文学センエースを投稿していたのは、
どこかで『これを書けば、センエースが来てくれる』という淡い期待があったから。
そうでもなければ、とても筆を持つ気にはなれない。
「たす……けて……」
かすれた声で搾り出すように頼むトコ。
センはその様子を見下ろしながら、頭をぼりぼりとかき、
「ご機嫌じゃねぇか」
と、歪んだ言葉を吐き出した。
だがその目は、状況を正確に見抜こうとする鋭さを帯びている。
「……説明しろよ。その尋常じゃないツラ……そして、この部屋。いったい何がどうした?」
促され、トコは震える声で語り始めた。
これから起こること――。
どれだけ対策しても、毎回それを上回ってくるラスト(闇川)という脅威について。
何度繰り返そうと、努力すればするほど敵が先を行き、絶望だけが積み上がっていく構造について。
その恐怖を、搾り出すように言葉へ乗せていった。




