157355話 完全なる無限。
157355話 完全なる無限。
渦はただ飲み込むのではなかった。
センの存在そのものを、引き裂き、削り、吸い尽くそうとする異能の暴風。
皮膚が千切れ、筋肉が裂け、内側に引きずられるように体が軋む。
センの背中が一瞬だけ震える。
倒れまいと踏みとどまる意地がそこにあった。
――だが、
黒い渦がセンの胸元へ深く食い込む。
光がひとつ、すっと消えるように、
――センの輪郭が溶けはじめた。
足、腕、そして胸元までもが黒に侵食され、抵抗するために伸ばした手が、空気をつかむように虚しく震える。
最後に残ったのは、トコの方へ伸ばそうとした右腕――
それすらも黒に沈み、音もなく、世界から消えた。
センの姿は、影が引き抜かれるように跡形もなく消え去った。
黒い渦を飲み込んだ闇川の体は、みるみる膨張していく。
皮膚の下で異様な力が脈動し、蛇のようにうねり、破裂しそうなほど肥大化していく。
骨の形すら変わり、存在そのものが膨れ上がるたびに、地面が震えた。
そして叫ぶ。
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――――――:――――――
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「――栄華大罪・究極超神化8/アンリミテッド――」
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――――――:――――――
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膨張したオーラが綺麗に結晶化していく。
完全なる邪神へと昇華されていく。
――その存在値は、『1200京』を超えていた。
「ぁ……ああ……」
トコは目を見開いたまま固まった。
体温が一気に抜け落ちるような、冷たい錯覚が背筋を走る。
「……セン……」
胸の内で絶望が暴れ出す。
喉が塞がり、声がうまく出ない。
足元の地面が遠ざかっていくように、世界が揺らぐ。
たった一つの希望。
心の支え。
絶対的な精神の支柱が――
奪われてしまった。
「嘘やろ……セン……まで……」
トコの震える視線の先で、闇川は自らの中で膨張する力に酔いしれていた。
「ああ……素晴らしいぃ……この力……この高み……正しい究極超神化の最果て。真醒でもプラチナムでもない。本物の……『究極超神化8』……センエースですら超えられなかった極み……」
その声は陶酔に満ち、世界の音を塗りつぶすほど濁っていた。
圧倒的な力の波が押し寄せるたび、空気が震え、地面が低く唸る。
その暴力の中心に向き合わされて、
トコは、
「ぅ……ぅう……」
声にならない呻きを漏らした。胸の奥がつぶれるように痛む。
視界の端が白く揺れ、全身から力が抜けていく。
このまま死んでしまいたい……。
そんな暗い衝動が、深海の泥のように心を覆い尽くす。
もうタイムリープしたくない。
このまま死にたい。
もう嫌だ。




