157352話 心折れる。アンコール溶ける。
157352話 心折れる。アンコール溶ける。
トコの精神力はとっくに限界を超えていた。
連続するタイムリープ、失敗と修正、そのたびに積み重なる絶望の重さが、心の芯をきしませていた。
センエースという心の支えがいるので、どうにか頑張れているが、
もし、これが、一人旅だったら、確実に、ここまでのどこかでヘシ折れていただろう。
歯を食いしばり、センエースと一緒に、
必死になって、自身の異能『ミシャンドラ』を鍛え続けた。
失敗してはリライト。
消して、リライトして……
そんな作業を、数え切れないほど繰り返した。
その結果、トコは、たどり着いた。
自分の指先一つで世界の線を引き直せるところまで、異能を研ぎ澄ませた。
つまりは――存在値900京の怪物を倒せるほどの圧倒的な数値。
「行ける!! 今度こそ間違いなく殺せる!!」
トコは、震える胸を押さえ込むように叫ぶ。
追い詰められた末の覚悟だけで絶唱。
そんな彼女の狂気に、闇川は苦悶の表情を浮かべ、
「なんでぇええ! グラトニーも、ラストも、エンヴィーも、スロースも、グリードも持っている私がぁあああ! なんで、お前みたいな小娘一人にぃいいい!!」
トコが召喚した死者ラストにボコボコにされた『闇川』は、地面に膝をつき、
満身創痍の肉体を引きずりながら、死に際で、
「……ま……負けてたまるかぁあああああああ!!」
喉が潰れかけているのに、それでも絞り出した絶叫。
息は荒く、血混じりの唾が口元からこぼれ落ちる。
最後の意地を暴走させる。
その叫びに応じるように、
――闇川の体から『巨大な黒い渦』が噴き上がった。
まるで『センの魔法』をまねたような、その『黒い渦』は、最初は肩口から立ち上る煙のように細かったが、
瞬く間に太さを増し、闇川の全身を包み込む柱と化していく。
闇川は、グラトニーを発動させた。
力を限界まで解放し、対象を指定する。
――地球上に存在する、すべての人間――
その瞬間、世界そのものが引き剝がされるような衝撃が走った。
空間が歪み、無数の場所とこの場とが、強引に直結される。
次々と、人間が現れる。
街にいた者、家にいた者、眠っていた者、逃げる暇すら与えられないまま、
世界中の人間が一斉に、この空間へと引きずり出された。
人数は、もはや把握不能。
個人の区別は意味を失い、そこにあるのは『全人類』という一つの塊だけ。
闇川は、そのすべてを魔法で包み込む。
海の底みたいな圧力がかかる。
逃げ場はない。
ぐしゃり、と、肉が跳ねた。
悲鳴も、抵抗も、瞬時に押し潰され、
人間だったものは形を失い、まとめて圧縮されていく。
無数の命は混ざり合い、巨大な肉の塊となって頭上に浮かび上がった。
闇川の口が、常識を無視した大きさに裂ける。
そして、肉団子を――
――丸のみしていく。




