73657話 2回。
73657話 2回。
トコはそのまま膝から崩れ落ちるようにへたり込み、
手を床についたまま、俯いて肩を震わせた。
センは、渋い顔で、頭をかきながら彼女を見つめている。
どう扱うべきか悩みつつも、立ち去る気配は微塵もなかった。
★
――ラスト関連の事をあらかた伝えたトコ。
その声は乾いていて、長く続く緊張に磨り減った心が透けて見えるようだった。
話を聞いたセンは、腕を組んだまま、じっと彼女の顔色を読み取り、
「……薬宮、お前……何回、タイムリープした?」
「……2回」
トコは視線を泳がせるでもなく、ただ淡々と告げた。
その口ぶりとは裏腹に、瞳の奥はひどく疲れていた。
「豆腐メンタルすぎねぇ? 2回で、そんなに壊れるものかね?」
センは呆れたように眉をひそめる。
トコは、センエースの詰問に対し、心底疲れ果てたような顔で、
「うっさいのう……毎回、毎回、聞きくさりやがって……なんや、100万回とでも言えば満足なんか? それともリップサービスで1億回って言うたろか? そしたら、絶頂するんか?」
苛立ちと疲労がないまぜになった声が、部屋の乾いた空気を揺らした。
「……『他人のタイムリープ回数を聞いて絶頂するような変態にだけはなるな』ってのがウチの社訓でなぁ。自社の理念は裏切れねぇ」
センはため息交じりにそう呟き、肩の力をひとつ抜いた。
「とりあえず、もうタイムリープするな」
その言葉には、確かな心配がにじんでいた。
センの想いを理解した上で、それでも、トコは、
「命令すんな。彼氏気取りか」
むくれた表情で吐き捨てる。
声の端には、無数の感情が乗っている……が、センエースはそれに気づかない。
鈍感系主人公……というわけでもないが、その辺の詫びサビを敏感に感じ取る技能に欠けているのは事実。
「彼氏だったら、彼女にタイムリープするなって命令するものなの? ごめん、その辺の機微は『彼女いない歴=年齢』だからわかんねぇわ」
センは自嘲気味に言い、しかし視線だけはトコから外さない。
いまの彼女を放置するつもりがないのが、態度からもにじみ出ていた。
トコは、気だるげに、
「タイムリープはもうせん。する必要がない……今回で殺せる」
静かに宣言した。
その瞳には、先ほどまでの揺らぎとは別の色が宿っていた。
覚悟とも、執念ともつかない強い光。
「散々積んできた……絶対に殺す――」
★
――そして、また、紆余曲折あって、
ラスト戦に至ったトコとセンエース。
戦場は空間そのものがひしゃげたような異様な光景で、
地平の向こうから吹き込む風すら、ざらついた金属音のように轟々と響いていた。




