6087話 いくら偏差値が高くても、感情論は理解できない。
6087話 いくら偏差値が高くても、感情論は理解できない。
「ハッキリ言う。あたしは、あいつと、なんにもならへん」
トコの言葉は淡々としていた。
だが、その無表情さが、火に油を注ぐ。
「……」
「ええか。何度でも言うで。センエースとあたしの関係性は、完全にゼロなんや。それ以上でもそれ以下でもない」
薬宮トコは、非常に優秀な女子高生である。
素晴らしい頭脳、運動神経、根性、理性、優しさを兼ね備えたスーパーガール。
しかし、
「わかったか? あたしとあいつは、演者とスタッフみたいなもん。つまり、あたしに嫉妬する必要とかはないねん」
『人の心』に対する理解度で言えば、
――正直、まったく足りていない。
その点は、まだまだお子様。
人生経験が足りないクソガキッズ。
何もわかっていない。
人の感情の怖さ。
その複雑さ。
その狂気。
ユズは、眉間にしわを寄せて、
目の奥に鋭い光を宿した。
「煽ってんの?」
声が怒気を帯び、空気が震える。
唇が引きつり、拳が震えた。
この件に関して、ユズは何も悪くない。
どう考えても、トコが悪い。
しかし、トコは分からない。
自分が何をミスったのか。
★
その後も色々と話し合って、
『わだかまりをなくしたつもり』になるトコ。
親友とは言わないし、言いたくもないが、
『風通しのよくなった関係になれた』と錯覚して、
少しだけ肩の力を抜いていた。
――で、また紆余曲折あってラスト戦に突入。
今度こそ勝てる……と思って挑んだ闘い。
荒野のような戦場。
空気は焼けつくように熱く、地平の向こうでは、黒い雲が渦を巻いている。
当然と言えば当然だが、
結局、ユズの『エンヴィー』が発動。
嫉妬による絶対無敵。
なんだったら、前回よりも強烈に効果を発揮した。
首をかしげるトコに、
ラストが、呆れた顔で、
「……人の嫉妬心をナメるな。『センエースが薬宮トコを大事にしていること』は見ていればわかる。そして、センエースは葛葉ユズのことを全く見ていない。その現実がある以上、何をしたところで、葛葉ユズの嫉妬心は消えない」
『邪神が呆れて諭してくる』という、人としてデッドエンドな状況。
トコは、唇を引きつらせたまま、何も言えなかった。
正直なところ、いまだに、『ユズの感情』がよくわかっていないのが実情。
死者ラストも、冷たい視線をトコに向ける。
トコは、結局、何が何だか分からないまま、
胸の奥からこみ上げた焦りと苛立ちを爆発させた。
「くそがぁあ! もうええ!! 死者ラスト、行けぇえええ!! なんかわからんけど、なんかならんかぁああぁあ?!」




