6086話 煮詰まる高次のメロウなエンヴィー。
6086話 煮詰まる高次のメロウなエンヴィー。
片手で頭をガシガシとかきむしるトコ。
疲労と苛立ちが混じった溜息が、無機質な部屋に落ちた。
タイムリープの影響で、大事な記憶がまた薄れたが、もはや気にしない。
それがどれほど重要なものであっても、今は立ち止まっていられなかった。
今は、そんなものよりも大事なものがある。
センチメンタルに浸っている余裕などない。
「……んー……まあ、普通に、葛葉を処理せんといかん感じかなぁ……だるぅ……なんで、あたしが譲歩せなあかんねん……クソむかつくわ、あのゴミ女ぁ……」
舌打ちとともに吐き捨てる。
壁際に立てかけた剣が、彼女の動きに反応して小さく震えた。
本当に嫌だったが、
そうしないと、ラストに勝てない……
その現実がある以上、この面倒から逃げるわけにはいかなかった。
ユズの存在が、どうしても避けて通れない障害になっている。
そのことを理解しているからこそ、苛立ちは深まる。
「だっるぅ……」
小さく呟き、トコは顔を覆った。
その指の隙間から、戦う覚悟を宿した瞳が覗く。
★
トコは、ユズを呼び出し、話し合いの場をもうけた。
学校の中庭。
風が吹き抜け、鉄柵がかすかに軋む。
どういう風にユズを懐柔しようかと色々と考えたが、
結局トコは、
「あたしに対して思っとることを全部教えてほしい」
と、だいぶ直球の一手に出た。
回りくどい舌戦は抜きで、真正面から殴り合うつもりだった。
逃げも隠れもせず、ただ正面からぶつかる。
「……は? 急になに?」
当然、最初は困惑していたユズだが、
その目には警戒と敵意がちらついている。
「腹を割って話をしたい。あたしはあんたが嫌いや。あんたもそうやろ。その前提で、わだかまりみたいなもんは解消したい。嫌いは嫌いでええ。けど、それ以外の余計な感情は処理しておきたい」
風に乗って、トコの声が冷たく響いた。
表情は真剣そのもの。
だが、その真面目さが、逆にユズの神経を逆なでした。
(なんだ、こいつ……なに、余計な感情って……余計……)
すでにユズは苛ついている。
しかし、トコは、そのことに気づかず、
「まず、一番大事なセンエースに関してやけど、あたしは、あいつのことをなんとも思ってへん」
「……嘘つけ」
即座に返すユズの声は、低く震えていた。
拳を握る指先が白くなる。
イライラゲージがグイっと上昇する。
「仮に、何かしらの感情を抱いとるとしても、あたしは、あいつと関わる気はない。ハッキリ言う。あたしは、あいつと、なんにもならへん」




