6084話 嫉妬。
6084話 嫉妬。
低く響いた声に、トコが息を呑んだ。
「は?! なんで葛葉を?!」
瞬間、地面に魔方陣が浮かび上がる。
その中心から、ユズの姿が引きずり出されるように現れた。
彼女の目は虚ろで、意識はほとんど残っていない。
生者ラストは微笑を浮かべ、右手を彼女の頭上に置いた。
次の瞬間、ユズの脳が赤い光に包まれ、ぐしゃりと嫌な音を立てる。
「ぎぃいいいあああああああああああああああああああ!!」
悲痛な悲鳴が響き渡る。
その後、血の涙を流しながら、ユズは、
「……プラ……チナ……スペシャル……」
覚醒する。
ラストの手による強制的な目覚め。
彼女の中に眠っていた異能……その名は『エンヴィー』。
ラストは、ユズを強制的に覚醒させると同時、
そのままユズを抱きしめるようにして、自分の中へと取り込む。
空間がきしみ、空気が歪む。
生者ラストの瞳に、かつてない輝きが宿った。
そのまま、ラストは、ユズの中に眠っていた『エンヴィー』の異能を発動させる。
その効果は――『嫉妬心を抱いている相手に対して無敵になる』。
ユズは、トコに強い嫉妬心を抱いていた。
つまり、ユズと融合したことで、生者ラストはトコに対して完全な無敵を得たということ。
エンヴィーの効果により……『トコの持つ全ての力』は、生者ラストに対して効果を失う。
「葛葉ユズの異能『エンヴィー』は間違いなく私の中で機能している。嫉妬心を抱いている相手に対して無敵になる力。葛葉ユズの薬宮トコに対する感情は十分に無敵となるための条件を満たしている。……これで、もう……誰も私を殺せない」
無防備に『暴露』を積む生者ラストの背後から、死者ラストが拳を叩き込む。
トコの命令に従って、律儀に戦い続ける死者ラスト。
だが、その一撃は『見えない壁』に弾かれ、衝撃だけが虚空に散った。
続く蹴りも斬撃も、すべてが届かない。
トコは目を見開いて歯噛みをする。
その顔から血の気が引いていた。
――死者ラストは、もう生者ラストに傷一つつけられない。
空気が張りつめ、誰も動けない。
――生者ラストは、センにもトコにも、完全な無敵となった。
その現実を前に、トコは天を仰いで、かすかに唇を震わせる。
「……詰んだ……」
隣にいるセンが、視線を生者ラストに向けたまま、静かに、
「嫉妬している相手に対して無敵……条件のヌルさのわりに効果がえぐすぎるな。ラストが無敵になるための条件は片割れが死ぬことだぞ。葛葉ユズの異能、ハンパねぇな……」




