6082話 死者ラスト。
6082話 死者ラスト。
センは、瓦礫と静寂の中に立ち尽くし、わずかに目を細めた。
焦げた大地の上に、彼女の放った力の余韻がまだ漂っている。
「おお随分と存在値が上がったじゃねぇか。……500京から700京へと爆裂上昇。普通に、俺よりもはるかに高い数字を誇っていて……その上で、俺相手には無敵。はは、笑えるぜ。強い上に無敵じゃ話にならねぇ」
ダルそうにそうつぶやく。
声には諦念よりも、むしろ愉快そうな響きがあった。
絶望すらも計算の一部とするような、老獪な戦士の眼差し。
「こうなってしまえば、もうお手上げだ。というわけで……ここからは、昨今における萌えアニメの定理にならって……天才美少女にお願いしようと思う。今は、むさいジジイではなく、美少女がラスボスを殺す時代。俺なんてもんは、出王子のカマセでしかないのさ」
そう言いながら、センはパチンと指をならした。
瞬間、空間が揺らぎ、ひび割れる音が響く。
センの目の前に次元の亀裂が走り、そこから冷たい光が漏れ出した。
ひびは縦横無尽に広がり、やがて裂け目の奥から一人の少女が姿を現す。
薬宮トコ。
ミシャンドラという特異な異能を持つJK。
制服の裾が亀裂の風に揺れ、瞳の奥には静かな決意が宿っていた。
トコは登場すると同時に、躊躇なく右手をかざした。
「こい……ラスト」
その声は短く、しかし確かな命令だった。
『センエースに殺された方のラスト』を黄泉の国より召喚。
トコの足元にできた魔方陣が赤黒く輝き、空気が重く沈んだ。
魔方陣の中心から、白い指先が伸び、次の瞬間、全身が姿を現す。
美女邪神――ラストが、ゆっくりと、再びこの世に登場した。
その姿は、まるで『滅びそのもの』が人の形を取ったかのようだった。
漆黒の髪が揺れるたび、空間の縁が軋む。
肌は死人のように白く、瞳には星のような光が渦を巻く。
無数のタイムリープで鍛えに鍛えたトコの異能『ミシャンドラ』によって、爆裂にバフが乗っている今の『死者ラスト』の存在値は、驚愕の730京。
その重圧は、世界そのものを押し潰すかのようで、地平が歪み、雲が裂けた。
トコの足元からは、彼女自身の異能が波紋のように広がり、砂塵を吹き飛ばす。
トコが召喚した『死者ラスト』の方が、『生者ラスト』よりもわずかに強い。
トコは指を突き出し、鋭く命じた。
「行け、『死者ラスト』……片割れを殺せ」
命令に従い、死者ラストは、生者ラストへと殴り掛かる。
次の瞬間、閃光が世界を貫いた。




