6072話 ロキごときでは理解できない、極限をも超えた鍛錬の結晶。
6072話 ロキごときでは理解できない、極限をも超えた鍛錬の結晶。
やがて、魂魄の髄に刻まれるように、『力の輪郭』が顕れる。
名は、『グリード』。
望むものを手に入れられる力――という絶対的にチートすぎる概念が、ロキの中で実感へと変わっていった。
「センエース!! てめぇの全てを奪うぞぉおおおおおおおおお!!」
叫びとともに、ロキの周囲の闇がうねり、収束する。
だがその闇はやがて裏返るように薄く光を帯び、センの方へと向きを変えた。
センの内側から滲むように放たれた光が、ひとすじ、ロキの中へと吸い込まれていった。
吸い込まれる感覚は乾いた吸引のようであり、同時に温かく根源的なものを掴まれるような感触でもあった。
ロキの叫びが断ち切られ、力の奔流が静かに、しかし確実に回収されていった。
それがロキの中へと回収されていく。
「ぶっはぁあああああ!!」
深く息を吸うロキ。
「ははははははぁああ! 手に入れたぞぉおお! お前の全部ぅうう!!」
歓喜を叫ぶロキを見つめながら、
センは、小指で耳クソをほじりながら、
「……ロキさんよぉ……お前のスペシャルも成長型。初期状態の現状じゃあ、俺の全部は奪えねぇよ。まあ、初期値で存在値を奪えているだけ、だいぶすげぇのは事実だけどな」
「……確かに、全てを奪えているわけではなさそうだ……しかし、これなら、十分に殺せる!」
そう言って、襲い掛かってくるロキ。
それをセンは秒で返り討ちにする。
描写する必要もないほど一瞬で制圧されて蹴り飛ばされて鼻血を出しているロキは、顔をおさえながら、
「な、なぜ!」
その疑問符に、センは、あくびをしながら、
「前、お前と戦った時に、ハンデとして『数値だけ同じにしたこと』があっただろ。あの時と、現状で違いは特にねぇよ」
「違いならある! あの時はステータスが同等だったが、今は俺の方が圧倒的に数値が上だ!」
「関係ねぇんだよ、俺にとっては。俺は俺より億倍強い相手とも、何度もわたりあってきたからな」
「……転生文学センエースに、そのようなことを書いてあったが……まさか、事実だとでもいうのか」
「あれは美化しすぎだが、内容に間違いはねぇよ。数値では表現できない根本的な戦闘技術……『戦闘力』っていうんだが、戦闘力を奪われない限り……俺がお前に負けることはありえねぇ」
センは、コキっと首の骨を鳴らす。
廃墟の床を、靴音がゆっくりと刻む。
センの歩調は一定で、まるでメトロノームのように正確だった。
その一歩ごとに、空気が重く沈んでいく。




