6056話 ラストを倒すための力を、ラストは奪い取る。
6056話 ラストを倒すための力を、ラストは奪い取る。
トコの声は冷静だったが、告げる内容は容赦がなかった。
説明のたび、二人の間の空気が重く沈んでいく。
「ラストの片割れを倒すために必死に磨いている力が……そのまま丸っと奪われんのか。きついねぇ。詰んでんじゃねぇか」
センの短い呟きは、皮肉とも自嘲ともつかない響きだった。
彼は指をわずかに動かし、落ち着かぬ仕草で緊張をいなした。
「あたしには、死者を召喚して使役できる力もある。それを使って、『あんたが殺したラスト姉』を召喚して、『ラスト妹&ヴァルハラ軍団と戦ったり』もしたんやけど勝てんかった。あんたが鍛えたヴァルハラ軍団が強すぎたんや。せやから、仕方なくタイムリープして――」
トコは途切れずに続けた。
口調は淡々としていたが、背後に積み重なった苦闘の匂いは消えなかった。
「待て待て。サラッと言っているけど、だいぶイカつい内容だから。俺を置き去りにして先に進むなよ。まだ、俺、だいぶ後方にいるから。……お前、タイムリープとか死者召喚とかもできるんかい。なんか、できることが多くない?」
センは眉間に皺を寄せて問い返した。
軽口の形を取りながら、情報の重さに呑まれまいとする防波堤が見えた。
「ほかにちょっとした未来干渉もできる。未来に干渉したら変なことが起こることが多いから、なるべく、やらん方がええけど」
トコは慎重に言葉を選んだ。
そこには干渉の代償と、試行の末に得た用心深さがにじんでいた。
「えぐいこと言ってる……」
センは短く呟き、目を細めた。
指先で机の縁を軽く叩き、思考の拍を刻んだ。
「どうせ奪われるなら、ヴァルハラ軍団を使わんほうがええかと思って、あたしとあんただけでラストに挑んだこともあるけど、そしたら、あのボケ、あんたの……『センエースの力』を奪いやがった」
トコの声に苛立ちが混じった。
挑戦の結果と屈辱の残滓が、抑えた息にまとわりつく。
「……そいつはなかなかの事態だが……根本の話、俺の力を奪えるなら、最初から俺の力を奪った方がよくない? どんなにヴァルハラ軍団を鍛えても、俺より強くなることはないと思うんだが」
センは平然を装って問い返したが、そこには素の合理があった。
彼は常に効率と結末を優先し、戦略の穴を見逃さなかった。
「たぶんやけど……ラストは、本能レベルで、あんたを殺したいんやろ。なによりも、それが最優先。せやから、ヴァルハラ軍団なしで挑んだ時も、『あんたの力だけ』を奪って、あんた自身を奪うことはなかった」




