45話 センエースの大事なものは……
45話 センエースの大事なものは……
「不幸中の幸いだ……お前がいれば、どうにかなるだろう。お前のフラグメントは覚醒し始めている。お前のポテンシャルは余裕で俺を超えている」
「それはない! 仮に、あたしの中に、何かしらの潜在能力が隠されとったとしても、流石に、あんた以上ではない! それだけはありえん!」
「……ここで死ぬとは思っていなかったが……まあ、大事なものを守れて死ねるんだ。悔いはねぇ」
「あんたの大事なものってユズなん? ユズなんか、あんたからすれば、どうでもええやろ!」
「俺の大事なもの……は……」
そこで、センエースの身体は完全な粒子となって世界に溶けていった。
その直後、
ユズが、
「ぶっはぁああ!」
長い間、息を止めていた人みたいに、全身で酸素を貪っていく。
説明されるまでもなく、トコは理解した。
――『センエースが、その命を使って、ユズを蘇生させた』ということ。
「……アホちゃうか……ほんまに……なにやってんねん……」
「はぁ、はぁ……く、薬宮……これ、なに? なにがどうなったの? あ、あたし、死んだ気がするんだけど……」
「……」
「ちょっと薬宮、聞いてんの?! 教えてよ!」
「……うっさい、ぼけぇ……だまっとれ、性格ブス、殺すぞ」
そう言いながら、トコはスマホを取り出した。
画面を操作しているトコに、ユズが、ガチギレの声で、
「スマホいじるのなんか、あとにしてよ! いくらあたしが嫌いだからって、こんな時に、状況の一つも教えてくれないなんて、ありえなくない?!」
そんなことを叫んでいるユズの視線の先で、
トコは、
「どこや……エピソードはどこから消せるんや……分かりづらいUIやな……」
「ちょ! 薬宮! 聞いてんの?!」
「……あった……編集から管理か……ほんまに分かりづらい……」
ぶつぶつ言いながら、トコは、
――最新話を削除した。
★
――夕暮れ過ぎ。
トコはひたすら、パソコンの前で文章を紡いでいた。
カメラが入っていない刑務所の中のセンエース物語は、
情報に飢えている読者を大いに沸かせた。
ヒッキエスの物語に続いて、チャーリーの章も投入……しようとしたところで、
トコの中に『未来の意識』がガツンとぶち込まれる。
「ぷはぁあ!」
蘇った時のユズみたいに、
肺一杯に酸素を吸い込むトコ。
「はぁ……はぁ……」
すぐさま時間を確認していく。
時計、スマホ、PC、テレビの時刻。
間違いなく、最新話を投稿する直前に戻っていた。
「……はぁ……」
深く息を吸って、吐いてから、
センエースと視覚を共有してみた。
「……生きとる……よかった……」




