43話 現実を変えることができるが、100%じゃない。
43話 現実を変えることができるが、100%じゃない。
温度はまだ人のそれなのに、『かすかな鼓動』だけが世界から消えていた。
トコの口の中が一気に乾き、視界の端がかすむ。
(……くっ……)
倉庫の奥で、火花の匂いがまだ漂っている。
ロキはトコから距離を取りつつ、傷ついた前腕を押さえ、
呼吸を整えつつ、視線の動きだけで状況を測る。
「……どうやら、葛葉ユズは死んだようだね。……それも作戦かな? それとも事故かな?」
激痛に耐えつつ、撤退の準備をしているロキ。
トコの異能の底が見えないため、今日のところは素直に引き下がるしかないと判断した模様。
「……あたしらはケガしない……はずやったのに……そういう力のはずやのに……」
「なるほど。……君の力は『現実を変えることができる』が『100%思い通りではない』ということか。覚えておこう」
そう言って、ロキは闇に消えていった。
残されたトコは、しばらく呆けていた。
何度も確認したが、ユズは間違いなく死んでいる。
「まいったなぁ……これ、あたしが殺したことになるんかな? 絶対に、あたしが殺したわけちゃうけどなぁ……」
と、そこで、トコは、背後に気配を感じて振り返る。
そこには、
「セン……エース……」
センエースが立っていた。
彼は、まっすぐに、死んでいるユズを見つめている。
トコは、きゅっと両手を握りしめながら、
「ごめん……できたら……助けてほしい。なんとかできんかな? 葛葉が……死んでもうて……」
「やっている……だが、出来ない。なんでだ……」
「え、どういう……」
「……『反魂の神聖式(死者蘇生の魔法)』が発動しない……魂魄が見つからねぇ。薬宮トコ……説明してくれ。何がどうなって、こうなっている?」
そこで、トコはあらかたを説明した。
自分の異能が進化したこと。
その力を使ってロキを退けようとした結果、彼女が死んだこと。
全てを聞いたあとで、センは、
「……多次元への干渉……その結果、葛葉の魂魄が、別の時空をさまようことになった……と考えると合点がいく。そしてやべぇ。無限に存在する世界線のどれかに迷い込んだとなると……見つけるのは不可能。砂漠でコンタクトを探すより万倍ムズイ」
ユズの魂魄は別時空を漂流中。
時間が経つほど位置情報が散り、
追跡は指数関数的に困難となる。
「どうにか……ならんの?」
「命をけずれば……不可能じゃねぇ」
「え?」
「今の俺の出力じゃ足りねぇ……だが、生命ブーストで補えば、いける可能性が……ゼロじゃねぇ」




