40話 プチデス〇ート、起動。
40話 プチデス〇ート、起動。
――トコは、額に冷や汗が浮いた。
と、そこで、制御盤のランプが不規則に点滅する。
安全信号が干渉し、回路がループ。
数丁のマシンガンが、合図なしに駆動音を上げた。
それを見て、ロキは、
「は?!」
と心底からの驚愕を見せる。
全く逆の反応を魅せたのがトコ。
(……よし……あとは避けるだけ……)
実は、この倉庫へ突入する直前、トコは『上着に忍ばせておいたノート』に短く書いていた。
『近くの銃器が誤作動を起こす』。
――『ミシャンドラ/プロット』の効果、
――ノートに記したトコに関する事柄が現実になる。
耳を裂く連射音が倉庫を満たす。
火花が走り、弾帯が唸り、薬莢が雨のように散った。
天井の鉄骨が震え、コンクリートが白く欠ける。
「ぐぉお!」
跳弾の一群が反転し、ロキの肩を叩き抜く。
布が裂け、血が飛ぶ。
操作盤へ伸ばした指がわずかに痙攣した。
トコは『ドラフト』で弾道の線を読む。
白い軌跡が幾重にも交差する。
足をずらし、身をねじり、被弾面積を最小に削る。
だが、目的のない乱射が、数で迫ってきたため、
「うぅう!」
よけきれず、『鋭い熱』が、トコの右腕を貫いた。
皮膚が裂け、鈍い痛みが遅れて押し寄せる。
やがて、誤作動は自重で失速した。
機関部の警告灯が赤で固定され、銃身がだらりと垂れる。
散った火の粉だけが、遅れて落ちていく。
トコは、腕の痛みに耐えながら、チラっとユズを見た。
運がいいことに、ユズは被弾していない。
(……『あたしらは被害を受けない』って書いたのに……なんで、あいつだけ無傷で、あたしはケガしてんねん……)
ノートには、『誤作動』だけではなく、『自分たちは無傷』とも記しておいた。
当然の話。
巻き込まれて死にたくないから。
(……まさか、葛葉の『無傷』に『能力のリソース』を裂いてしもうたから、あたしの方の『無傷』は発動しませんでした……とかいう話やないやろな……)
などと考えていると、
そこで、ロキが、ギリっと奥歯をかみしめながら、
「ぼ……暴発だと? ばかな! 銃も制御装置も、完璧に整備してるはずだ……っ」
ロキの表情が初めて揺らいだ。
この事故は、絶対に起こりえないものではない……が、基本的には絶対に起こらない事象。
99.9999パーセント起きないはずの、
『飛行機事故よりもはるかに低い確率』が、目の前で現実になった。
トコはロキの混乱を見て、胸の奥で合図を切った。
――ドラフトの第二効果・死者召喚、起動!!




