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叫び

相変わらずの書いて出し。ちょっと閑話っぽくなってしまった。


追記:「被討伐だとしたらアルさん襲われる側」とのご意見ご尤も。

 修正しましたが、あまりしっくりこないような。

「マール、冒険者たちは移動した?」

「はい。まだ三階層内ですが、入り口の安全地帯(セーフゾーン)からは動き始めてます。案内役村人(NPC)の扇動が効いたんでしょうか」

「……どうだろ」


 考えついたのが到着ギリギリだったし、時間がなかったんで既定雛形(テンプレ)の誘導セリフしか設定できなかった。

 しかも同じセリフを十人近い使役契約者(キャラ)同時並行(パラレル)で言わせるという手抜き。距離は少しだけ離したけど同じセーフゾーンのなかだ。注意して見てる奴がいたらすぐバレる。


「多少の問題はあっても、結果が出れば同じですよ」

「それデザイナーやエンジニアの前で言うなよ。ぶっ飛ばされるぞ?」


 非クリエイターやお客さん(ユーザー)に作り手の美意識を理解しろとは言わんが、作り手本人が気にしなくなったら終わりなのだ。誰が何と言おうと譲れないものはある。

 我ながら面倒くせえとは思うが。


 ちなみに、入り口に立って最初にコメント出す第一村人は、“話す(トーク)”の機能活性化(アクティベート)設定を修正した。立たせたキャラからの距離判定だったのを、キャラへの接触で起動する方式に変えたのだ。

 距離判定の場合、いったん離れて近付いたりギリギリ距離でウロウロすると不自然な挙動になる。第一村人は最初に握手を求めて手を差し伸べるように設定したから、これで万事オッケー!

 ……と思ったら大失敗だった。

 何人めかにやってきたのが、第一村人の冒険者仲間だったのだ。

 最悪。しかも肩に手を置いてブンブン揺らすから完全に壊れたロボットみたいな挙動になっちゃった。やめろよ、もう……お前はデバッガーさんか。ふつうのひとがやらない想定外行動を取るな。

 いや、俺が悪いんだけどさ。


「三階層の草原ですが、何体か倒されてます」

「え」


 ブラザーたち……なわけないか。彼らはレベル29、冒険者で言うとAランク直前っていう強者たちだし。

 <ハーピー>も違うな。だいたい超高速で飛んでるし。それもダンジョンの外か、二階層と三階層の間の吹き抜けだ。三階層にはあまり入らない。


「まさか、<アルラウネ>じゃないだろな」

「いいえ、被害は主にケイアン・ダンジョンから移ってきた魔物たちです」


 エルマールに仲間入りしたはずの彼らには悪いが、正直それを聞いてホッとする。


「うちの生え抜きは無事なんだな?」

「はい。それに、アルラウネ(かのじょ)は既に逆討伐(カウンターキル)のカウントが十四になっています」


 冒険者を十四も返り討ちにしてんの? それはそれでスゲーな。殺しちゃったのか。まあいいや。俺は自分で勝手に縛りプレイしてるだけだ。<アルラウネ>にまでそれを強いる気はない。


「正確には、殺害(キル)ではないですね。なんと言って良いのかわかりませんが……」

「???」


 マールがコアの球面を指す。

 そこには三階層の風景が写っていた。近くに群れてる緑のゼリー集団からして、<グリーン・スライム>かなんかの視界と思われる。


「なにこれ?」


 ダンジョンの各階層は外からの採光に頼らず、ダンジョン・コアの魔力で天球を生成している。一、二階層は移動を妨げる目的で暗くしていたが、そこから下の階は魔物たちの自由にしてもらっている。三階層の空は<アルラウネ>の趣味なのか、光合成のためなのか、一日中(ほの)かに明るい。

 丈のある草花のなかに<アルラウネ>がいて、その近くにおかしな物が()けられているのが見えた。


「……スケキヨ」

「はい?」


 逆立ちした人体としか思えない。

 肌は黴びたように薄っすら緑がかってるけれども、どう見ても全裸だ。それが、十いくつ。だらりと弛緩したまま、ピクリとも動いてない。

 殺してないって、でもこれ無理だろ。上半身を土に埋められて、生きていられるわけがない。

 ……ない、よな?


“〜♪〜”

「うわあッ⁉︎」


 <アルラウネ>が歌うと、周囲のスケキヨが一斉に身悶え始めたのだ。

 まるで、ダンシングフラワー……いや、(ダンス)ッてんのはフラワーの方じゃなくフラワーに捕まった方なんだけど。


「ちょッ、マール! なにこれ怖い。ムッチャ怖い!」

「大丈夫です、生きてます」

「却って怖い! 逆に! ぜんぜん大丈夫じゃねえ!」


 それを聞いて、マールが申し訳なさそうな顔をする。


「わたしのせいです。彼女は、わたしが“殺したくない”と言ったのを聞いたから……」

「それを律儀に守ってくれたわけだ。たしかに、生死の概念が俺たちとは……少なくとも俺とは、違うからな」

「<アルラウネ>の持つ“あるべき生命”の概念は、聞いたことがあります」

「へえ……」


 簡単に、教えてもらった。ほんの出来心から。なんか途中から嫌な予感はしてたけど。

 あんまり詳しく聞きたくなかった。

 水分や栄養摂取する最重要な器官(あたま)を地中に埋め、排出・生殖器官(かふくぶ)を頂上に置く。その中間に光合成と水分調整が可能な機能補助機関(てあし)を配置。それらを有効に機能させるため、必要な器官を必要なだけ変形させてゆく。

 そらスケキヨにもなるわな。


「あ、でも<アルラウネ>自身は逆立ちしてないじゃん?」

「彼女の本体は、花弁から下です」

「え」

「人体のように見える部分は誘引・捕獲のための擬餌状体(エスカ)ですね」


 夢を壊された。

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[一言] (*ゝω・*)つ★★★★★
[良い点] 前回から続いてホラー力の高まりを感じる。 普通に怖い。 [一言] NPC無理やりつれて帰ろうとする人いないのかな。 ダンジョンからはなすとどうなるのだろうか(怖いもの見たさ)
[良い点] 現代兵器が出てこない分惨劇のスケールやバリエーションが読めなくて楽しい。 [気になる点] マールさん本当ポンコツですね、作者さんには珍しい。
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