主人公より脇役やヴィランが人気が出る理由。作者の力量は文章と構成な話。
ふしぎのくにはよくカレーを食べる。カレーは読書のお供であるという事と、作る人によって味が違うのもまた面白い。
「本日はおでんカレーですよぅ!」
セシャトの得意とするカレーライスの一つ、おでんカレー。前日におでんを作っていた時など、多めに食材を買い、大根、ちくわ、こんにゃく、ソーセージなどを細かく切って冷凍しておく。
食べ終わったおでんの汁に冷凍していたそれらとカレー粉を二種類入れるだけの簡単かつ万人受けするカレーライス。
神様とハチドリがその香りだけで涎が出そうになる。
「ではお二人ともいただきましょうか!」
ハフハフと一味唐辛子をかけて神様はペロリと一皿、二皿目に突入しながら『創造世界の道化英雄 著・帯来洞主』の話を進める。
「貴様らの好きな刑事のターンだの。実際、刑事と呼ばれる連中は真坂部のように割と勘がいいらしいけどの。大体発言を上にしても無意味な場合が多い」
「だから、真坂部刑事は後輩と二人で調べているのか? どういう事なのだ?」
「作品とは直接関係ないが、警察組織は体育会系の縦社会なのだ」
これは当方のとある筋の情報だが、警察はメンツを大事にするので、大先輩などが目星をつけた犯人像が間違っていると分かっていてもそれに従う傾向にある。また、捜査本部が変わるとそのヘッドの考えるストーリーに沿って捜査を行うので、長く続く事件の解決が芳しくない。
「相棒シリーズであるとか、少し昔だとはぐれ刑事シリーズとか組織から少し擦れた刑事という造形はそこからきておるのだ。実際に正義に従事しようする奴ほどハズレくじを引くというのも因果な話だの……真坂部達が警察組織だからなのか、世紀末からやってきたような無法者が出てきたの」
「神様、これはお巡りさんである真坂部さんに合わせたキャラクターが出てきたという事なんでしょうか?」
さて、それらは言及されてはいないが、本作の面白い部分として、世界観が作者に完全リンクしているのである。
作者が書いている作品なのだから当然だろうと言いたいかもしれないが、作品自体が、数多ある作品の創造世界と現実世界というテーマで進行しているのわけで、作者の先入観が物語の展開そのもの要するに、創造世界の仕組みと行って過言でない。
「まぁ、この作品だがの、もう一つの世界とリンクさせるという流れを作ることすら可能だという事がわかるか?」
「神様殿、一体何を言っているのだ?」
神様が言いたい事、セシャトには少しばかり理解があった。もし、いや創作者として一度は考えるかもしれない。
「作者さんの世界、という事ですか?」
「そうだの。真の現実世界、いや神々の世界とでも言った方が良いか? 貴様が主人公のスイートセシャトで行ったネタだの。要するに、必然であろうと偶然であろうとこの物語の進行は神である帯来洞主に順じている。このヤバさ分かるか?」
作品のベースが非常に珍しい世界観を持つので、何をしても何が起きてもご都合主義ではなく、必然として片付ける事ができる。
当方大人気のデカが大ピンチであるという状態で、まさかのW.Eの新キャラ三人におけるお約束のようなボケが入る。
「ここは深く読み過ぎてしまうと、ヒバチさんもつららさんも乱狐さんも自分の役回りとしての行動だと思うと、創作におけるマイナスポイントがほぼ全て評価に変わりますねぇ……ヘカさんやマフデト兄様ならどう読まれるのか実に興味深いですよぅ!」
小説においてダメ出しされるポイントとして、キャラクターが動かされているという表現がある。作品都合上や、わざとらしいキャラクターの行動において編集さんなどがよく使うのであるが……本作はそもそも登場人物の殆どがなんらかの設定を持った物語内の別作品キャラクターである。
さすれば、動かされているような行動があまりにもリアル。これは設定をもったキャラクターは作者の領域を出ないという証明。
実にこの掛け合いは面白い。
揉めている三人は主役級。
「創伍、一応主人公のハズなのに……どういうことだ?」
そう、真城創伍は主役級になれなかったような人生を送ってきたとあり、彼はジェスター・ヒーローとなった。現時点では本家本物の主役級と絡むと萎縮する。どこまで考えて展開されているのかは不明だが、後の文章から大体は作者の帯来洞主氏の考え通りに進んでいると思われる。
実に見事と言えるのではないだろうか?
「長官さんもおっしゃっていますものね! 英雄の短所と長所であると」
「実のところ、本作は核心をついている部分があっての、あらゆる作品を一つに混ぜ込んだとしよう。正義の心に熱いキャラクターの大半は人類の敵になりかねん。逆に性格や信念にもよるが、敵キャラや敵キャラクターの組織の方が単純な思考をしているので人類の味方になる可能性は極めて高い。これもアンチテーゼだの」
英雄達の我の強さから異品認定されかねないと言う一節が本編にある。よくよく考えてみると読者から愛されるキャラクターに主人公が一番。という作品は半分くらいなのではないだろうか? 大抵脇役であったり、ライバルやヴィラン側に人気が集中する傾向が強い。
それが何故かという事に関しての答えを当方はある程度持ち合わせているがあえてここでは深く語らないでおきたい。
主人公=作者のアバター、あるいはそれに順ずる存在であり、その創作傾向とあえてここでは性癖と言っておこう。それが合致した時、そのキャラクターが支持されるわけで、作者の趣向と読者のそれが噛み合っていない時、生理的に無理。という現象が起きる。
分かりやすくいうと、ラノベ表紙の美少女に嫌悪するフェミニストの方々と言えばいいだろう。
これが英雄達によってはその我の強さから異品認定されるという裏側であると考えると中々に興が深く、業も深いとは思わないだろうか?
「神様殿、主人公って一番作者が熱量を入れるものではないのか? それが不人気になるというのが吾輩、いまいちわからぬのだが?」
「問題はそれだの。その熱量がいまいち合わないという事が多いのだ。だから絶妙に力を抜いて登場させたキャラクターの方が万人ウケしやすいという感じだの」
「むむっ! 神様、それでは主人公を配置する理由がなくないですか?」
「そうでもない。ここもテクニックがあっての! 魅せる主人公、動かす主人公。本作で言えば魅せる主人公をシロ、動かす主人公を真城創伍とストレスの分散をするという方法もある。まぁ作品内の役割は逆なんだがの」
要するにダブル主人公。これも諸刃ではある。どっちかが滅茶苦茶人気が出て、もう片方が不人気という形であるが、それはそれで作者の思う壺だと思えば少し面白いだろう。
結果として主人公に人気を集中させたと。
「まぁ、身も蓋もない事を言えば、いくら良いキャラクターを造形してもある程度の文章力が伴わなければ魅せられないのだがな。書籍化作品でも残念な文章という物は散見されるであろう? その点本作は読みやすく、かつ内容も実は凄いベタな事の繰り返しで分かり易い。伏線は少なく上手く回収、そして物語は単純かつ正確というのが名作の要素なのかもしれぬの」
これに合致する日本トップクラスに売れている作品を一つあげよう。海賊という名の異能力冒険者バトル。ワンピースである。
やっている事は昭和の時代から抜けきれない程ベタかつ同じ事の繰り返しだが、魅力的なキャラクターと主人公の目的が分かりやすく一つの伏線の回収への物語。
「という事が真坂部が何故か貴様らに人気があるという事の正体だの。絶対的にこの作品内では弱者でありながら、強烈な抵抗。少年に発砲するだけあり、暴徒に対して平気で鉛玉を心臓に叩き込みよる。こやつこそ創造世界の存在ではないのか! という何かやってくれそうな感じが好かれるのであろうな」
そしてこの真坂部デカはまさかに主役級だった。
「デカ! まさかの玩具の銃が伏線だとは……凄いな! しかもシロが言った通り一番乗りだぞ!」
あくまで作品の主人公は真城創伍であり、ヒロインでありサブ主人公とも言えるシロなのだが、真坂部デカは主人公特有のご都合主義でなんとか生還する。その理由として、ジェスターヒーローの登場という形なのだが、主役になれなかった道化師という本筋をしっかりと引き継ぎている。
「ピエロさんは誰かがいなければ成り立ちませんからね! 本来引き立て役になるハズですが、真坂部さんのピンチという舞台を再公演として登場したわけです! 面白いチートの使い方ですよね。表現の違いでこうも物語に溶け込むという事に驚きです!」
多くの作品において空間転移のチートというのは使い古されたくらいメジャーな能力だろう。異世界物においても多用される。大体制約付きで、一度見知ったところじゃないと使えないなどが多い。
本作も同じく、制限ありの空間転移である。一度、玩具の銃に化かして去ったそれが伏線になっていたというのは正直面白いと感嘆する。
「刑事だから、あれか玩具と言えども何かの証拠になりそうなので肌身離さず持っているという事まで考えてあるという事か、これは吾輩も驚きしかないな」
あー、あれか! という感動体験、一重に本作の作品構成が非常に完成しているが故だろう。矛盾を矛盾として見せない世界設定、それに逃げずにしっかりとして文章表現と作品構成。
「まぁ、年代という事もあるのだろうが、ヴィランが厨二臭いのがまた新鮮だの、そういう作品が好きなのだろうな」
ここで下の句を述べるとこの厨二臭いヴィランもまた、創作物のキャラクターという事で先の矛盾や意見と相殺できる強力な仕掛けがある。
だってそういうキャラクターなんだからと。
考察も盛り上がったところで、
セシャトもあと少しだけカレーを食べようかと鍋を開ける。ご丁寧にセシャトの一杯分残してあるカレーをお皿に盛り一口食べたところで……
「ただいまなのですよ! セシャト姉様!」
当方の王子が帰還したが、もう夕餉は残っていない。
『創造世界の道化英雄 著・帯来洞主』今回は、本作を展開し分析してみましたよぅ! 元々創作をする事に関して作者の帯来洞主さんの創作の楽しみ方は非常に見ていて気持ちいものがあります。こうなれば面白いのだろう、こうすれば素敵なのだろう。主人公が道化という事で、創作面も第三者的に分析されている部分が多く散見されます。本作より矛盾とはなんなのか、物語の進行とは? 沢山学べるのではないでしょうか?




