創作物のキャラクターの造形についてもぎたてを飲みながら
「クソ女、コーラとって」
「ダンカス、僕はハイネケン」
ごろごろしながら、狭間の四畳半で寛いでいる通称システム部。そしてパシリとして使われているのは、初代古書店『ふしぎのくに』店主。
「だーん、たーり、あーん! というかなんでアタシを顎で使ってるのかなー!」
書の大悪魔ダンタリアン氏、小さな冷蔵庫からコカコーラ・ゼロと、瓶のハイネケンを取ろうとして、やめた。
「はい二人とも」
二人に渡したドリンクはロング缶。
葡萄とレモンのイラストがそれぞれ入った缶酎ハイ。
「可愛い名前でえげつないアルコールで攻めてくるやつじゃないか! ハイネケンに変えろ!」
「クソ女。テメェの息子の相手してて疲れてんだよコーラ持ってこいや!」
ダンタリアンは狭いこの部屋で銀色の鍵を見せる。そして同じく高いアルコール度数の缶酎ハイをがぶ飲みする。そして何もないところに銀色の鍵を向けると薄めの本を3冊取り出した。
「はい! このお酒でも飲みながら、面白いお話しよーよー!」
コーラを所望していた青年はチビチビ、缶チューハイを飲みながら渡された本のタイトルを読む。
「『創造世界の道化英雄 著・帯来洞主』マフガキがなんか言ってたやつか」
「師匠ちゃん、そうだね。これは中々面白いよ。ダンカスが生み出した本は真城氏が初めての戦闘を終えた後から記載されるらしい」
「ほらほらぁ! 物語と物語の繋ぎって、大体こういう主人公のキャッハウフフな展開がなされるよね? 童貞の師匠ちゃんとサタさんからしたらこういうの憧れなんでしょ?」
「「童貞じゃない!」」
「まぁあれだね。創作物の侵攻の原因が主人公にありそうという始まりで最初の仕掛け、そこから次は連載作品としてはお得意の収集系のクエストになるわけだ! 師匠ちゃんが趣味で集めているカードみたいなんじゃない?」
「ナンバーズか? それともクロウカードか? まぁ、クソ女のダンタリアンが言うように収集系クエストは話を作りやすいからな。元々この真城少年であったという事で、割とぶっ飛んだ話を入れてもギャグ路線を入れてもいいし、一種の群像劇的な展開にも転ばせられるからな」
この三人の中で唯一の人間であり書き手である師匠ちゃんは本作の構成において勉強になる部分があると語った。第一章の完結は創伍が道化英雄になるという事で終わり、以降のしばらくの道標は自分を取り戻す事というベクトルの矛先が違う物語が展開する。
章が違うという事は本題や主題が同じでも副題が違うという事な訳で、ここをしっかりと書き分けられない作品は多い。
「欠片が109個ってなんかリアルなのかもしれないけど、微妙に変な数だよね。あと、もぎたて変な回り方するんだけど……」
システム部主任のサタさんはチロチロと少し長い舌を出しながら悪酔いしているようにそう語る。そんな事を無視してダンタリアンは数について嬉しそうに語る。
「108個とかだったら煩悩の数なのにねぇ? 師匠ちゃんはどう思うの?」
「108が煩悩なら残りの一つは悟りだろうがボケぇ! まぁ、もしそうなら真城少年は結構ヤベェよな。子供時代の真城が生み出した願望器の化身としての物語の脅威であれば対処のしようもあるだろうけど、願望がない創作物が相手だった場合どうすんだろうな?」
書き手の意見として師匠ちゃんがそう呟く、とめどない願いから生まれた悟りがあるとすればどんな物だろうかとサタさんは考えていたが、そこはテラーであるダンタリアンが語る。
「はっきり言おうか? 作り手を作品世界が超える事はあり得ないね。もちろん、本作で言うと真城創伍がそれら創造世界の侵略者に負けない、殺されないという意味じゃないよ? 実際に作中では物理的に創造世界のインベーダーは存在して人も死んでいる。主人公補正だとか作品の根幹を無視すれば、それらに襲われ抗わなければ真城創伍だって当然死ぬ。そういう意味の超えられない壁ではなく、元々真城創伍の言わば、自分が主役じゃない世界なんてなくってしまえばいいという主題を持って生まれてきた存在がそれら109のインベーダーである以上、彼らの存在意義と行動理念はその主題に呪縛されている」
「要するに、スタンドアローンしているということか?」
「サタさんビンゴだよ! これってさ、よく予測されるAIの暴走に似ているよね。親に勝てる子はいないではなく、怪物を生み出してしまった親の心理だね。狙ってやっているわけではないんだろうけど、作品のレールに矛盾は感じない。このとんでも設定ですら子供の頃の創作であった以上当然、僕の考えた最強の世界崩壊システムな訳だし、ストップボタンも存在し得ない。そう考えると天才的とすら思えるよ。そして一段終わってキャラクター紹介だね!」
キャラクター紹介から何を見るのか、何を読み取るのかというところは少し意地悪な部分でもあるが、作者としては一旦、ここいらで整理して我が劇団の演者達はこんな方々ですよ。拍手でお出迎えくださいという事なわけだ。
ダンタリアンはサタと師匠ちゃんに気づく点はあるかと?
「ポリの真坂部健司の嫌いな事件背景が限定的すぎて、サイコパス感を感じるところ?」
「……いや、サタさん。まぁアタシもツッコミどころ万歳だと思ったけど、そういうの揚げ足取りだからね?」
書き手の師匠ちゃんは上から下まで読み直してパンパンと薄い本を叩く。
「まず、主人公。こいつがマシロズ・デブリの可能性。まぁオリジナルじゃないかもしれない示唆な。シロから最後の手前までは作者がしっかりとこういう人物であると書き記されてるのでここは真面目に受け取るべきだろうな。ヒューマンテス。ここ遊び欲しかったな。こいつだけマジで子供の頃に書いた情報だけにしてたら面白かったかもな。あー、これ作品の続きなんだみたいな伏線や、伏線に見せかけた遊びにできる。レシェフのアホとかなら、全キャラの紹介を子供口調のひらがなにして、全員創作物なんじゃとか思わせぶりな事するよな?」
これらは一例であるが、キャラクター紹介は大体キャラクターが多くなったので整理して再認識してもらおうと言う狙いが強いが、当方のライターはよく前書きやキャラクター紹介などで意味不明な事をして遊ぶ傾向があるのでこういう感想もあった。
第二章では当方でも大人気の真坂部刑事が、真面目に仕事をしているところから始まる。明らかに小悪党な何者かに刑事達が大規模殺害事件の手かがりを追っているところ聞き耳を立てられ、彼らも作品に関わってくるのだろうと。
「真坂部刑事フラグキャラだなぁ。こういう人、凄いいい死に方するフラグ立てたりするんだよな。絶対、死なないで欲しい」
「それだけじゃないよ。カイさんも悲しい背景があったわけで、登場時の行動はそれも踏まえてだったんだね」
物語のキャラクターの人生は濃い。なんせフラグを立てる、回収する。を繰り返さなければならないので突き詰めていけば日常系のキャラクターですら濃い人生を歩んでいる。のんびりした世界設定でもパリピかというくらい年間様々なイベントを立てる。事実は小説より奇なりというが、物語のキャラクターの人生よりも満ち足りた人生を送れる現実世界の人間の人生はほとんどないと思っていい。
何故なら、物語の中の世界や仲間達、キャラクターは憧れ、羨ましいだろう。それは本作の主題と鏡合わせの願望を書き記してあるからなわけである。
そして当方ライター達へのダメージも中々大きい。
「この作品、考察するとグサグサなんかくるな。怖いわこの作者」
「帯来洞主さんでしょ? この人、創作家としては高次のところにいるからねー! Twitterでの活動程度でしかアタシも知らないけど、創作はしたい時にする。自分が楽しいからするという行動意欲がやらされてる感満載な創作家とは違うんだよね」
マフデトさんと師匠ちゃんとレシェフさんにダイレクトアタックしたこの言葉を説明しておこう。音楽然り、イラスト然り、小説然り、やり出すと謎の強迫観念に駆られる事がある。創作なんてものは突き詰めていけば余暇の趣味なのだが、創作行動をしなければならないと創作物に支配され始める。
当方の場合はそれなりにライターに色を渡しているので、やらないといけないわけではあるのだが、本来は自分がしたいからするわけで無理矢理するような事ではない。
当方では何名かのフォロワーさんや創作家さんの名前を上げて、○○さんのように楽しんで行ってくださいと言われ、度々ダメージを受けるメンバーがいる。
「だから師匠ちゃんも帯来洞主さんみたいに楽しんでやんなきゃだめよー!」
「うるせー殺すぞ! まぁ、帯来洞主さんはいつも参考にさせてもらってます。次いくぞ次! すごい名前の子出てきたけど、これも創造世界だからと言えばリアルすぎて引くんだよなー……上手い」
「この子スコッチ飲んでるよ! 師匠ちゃんの好きなジョニー・ウォーカーか、パーかな? 第二章は駆け足で主要人物が語られるんだね」
「ダンカス、君みたいなキャラクター出てきたよ。ヒバチ氏、君の男版じゃないか? きっと彼が飲んでいる焼酎は“魔王“だろう」
「魔王おいしーよねぇ! 師匠ちゃんの家にあるんじゃなかった? 飲み行こうよ! にしてもさー、どうしてこう物語のキャラクターってお金ないんだろうね?」
創造世界のヒバチ氏にしても乱狐氏にしても支払いをしないわけだが、本当の意味でキャラ付と言う事なのだろう。本文にも記載があるが、活躍が能力やら力である創造世界の人物はいかに自分のアイデンティティを役付けするかどうかと言う事。ダンタリアン氏は紹介小説に登場するが実在する人物なのでお金の支払いは滞った事がない。
なんなら大体の支払いは彼女がしてくれる。
いつもご馳走様です。
「これで分かるよな? 実在の人物と物語の人物とではどうしてもキャラ付けが大袈裟にしないといけないわけで、名前だってそう言う意味ではキラキラネームで初めて同じ土俵に立てるわけだ」
創作というものは、ねーよ! そんな事ねーよ! という物をより多く魅力的に見せる芸術なのだ。と師匠ちゃんが三本目の“もぎたて“を飲み干してそう言った。
『創造世界の道化英雄 著・帯来洞主』皆様、読まれていますか? 程よい文章で、わかりやすい設定、そして大げさな展開と三拍子揃っていますのでWeb小説をお探しの方にはひとまず本作を読んでみられてはいかがでしょうか? 本作は、当方の現在の主力である第三世代の三人に研修としても使わせていただいている大変、読みやすい作品になっています! ゴールデンウィーク明けに少しずつ読まれてみてはいかがでしょうか?




