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セシャトのWeb小説文庫-Act Vorlesen-  作者: 古書店ふしぎのくに
第十章 『星空な瞳 〜願いの込められたヘッドホン〜 著・桜桃』
89/126

作風から作者の人となりが見える事もある

 翌日、開店準備をしているセシャトの元に……一人の少女がやってくる。


「貴女は……ナツキさんですか?」

「えぇ、そうですけど」

「リツキさんという方が御用のようでいらしてましたよ」

「えっ……そっか、困ったな」


 何かわけありらしいが、セシャトは右手の人差し指を鼻につけるとふふふのふと笑った。


「とりあえず中でお話しませんか? おそらくナツキさんは次のお話までフライングされている……と私は予想しています! どうでしょうか?」

 

 セシャトがウィンクをするので、ナツキは苦笑する。

 

「おみそれしました……そういうセシャトさんも?」

「実は……まだ読んでませんよぅ! 『おべりすく』は来店があると母屋の方でモニタリングできますので、中でお話の続きをしましょうか?」

「ここいつもお仕事中にそんなだけど大丈夫なんですか? 儲かってるんですか?」

「あらあら! まぁ、こちら風にいうと、ぼちぼちでんな! ですねぇ!」

 

 ちょいちょいこのセシャトという女性があざといなぁと思いながらもナツキは母屋に入ると用意された座布団に座る。

 

「さて、“事故“というとても不穏なタイトルから始まり、“私“は久しぶりに“男性“と久しぶりのコンタクトですが、“男性“は完全に聞き手にまわってますねぇ。今までの高圧的な反応ではなく……どこか」

「後悔を感じますよね。そして、“私“は自分の置かれている状況だけ何故か理解してないのも何かを感じますね」


 起承転結があるとすれば、ここはある種結の話である。“私“という存在についての……物語全体で言えば転じる部分なのかもしれないが……。

 

「“男性“はやはり優しい心の持ち主ですねぇ。バストさん的に言うと本作の作者さんがお優しいとも言えるようですが、ここはぶっきらぼうな“男性“が誰かの為にお花を添えて、喪に服し祈りを捧げるその姿に彼の本来の色が見えてきました。そして、やはりというべきか、悲しい告白ですねぇ」

 

 “私“は持ち前なのか、幼い少女を助けようという正義感の代償として大きな物を払う事になる。


「亡くなったのは歩道橋という事ですが、“私“は学校で最初に行動をされますよね。やはり、彼女の思い入れが強い場所。というのが、学校であり、屋上だったという事で、バストさんの語る私たちの一般的な認識外にある地縛霊的な方だったということですね」

「これって浮遊霊とかって言われているパターンじゃないんですか?」

「私もそう思ったんですが、この作品のテーマは“想い“のハズです。“男性もそしてクラスメイトの方々も“私“への強い想いを感じます。それ故に、“私“はまだ星に送られないという事なんでしょう。浮遊霊では少しその想いの強さという部分が少しブレませんか?」

 

 セシャトも言われて見て、確かになと感じた部分ではあった。物語はここより一気に加速し、そして終わりへと向かう事になる。

 それ故に……。

 

「この物語が大一番かもしれませんねぇ! その盛り上がりを楽しみましょうか?」

「“私“が死んでいる事を伝えられても意外と冷静でいるのは……心のどこかで可能性の一つとして気づいていたのかもしれないですね。“私“は自分が死んでしまったという事へ悲壮感を出すわけじゃなくて、みんなが。“男性“が自分の事を慈しんでくれている事に感動できるって……ちょっと凄いですよね?」

「これに関しては、私の想像と期待でしかないのですが、今までいない者として、自分が不要な存在だと暗い気持ちでいたところ、実際は自分は見えていないだけで、みんなにとっては必要な方だったと分かった事の方が“私“にとっては重要だったのではないでしょうか?」

 

 そう、本作のタイトル回収はまだされていないのだが、実際冒頭での“私“の気持ちは確実に昇華された。

 そして、この話にてセシャトさんが予想している事が濃厚になってきたとも言える。

 

「“私“には未練のような物はあまりないように見受けられますよね? 元々、みんなに無視をされてしまう事の悲しさと悔しさ、そして自分の言葉に反応してくれる“男性“に興味を持つというストーリーじたてです。そして、“男性“による“私“が既に他界しているお話を伺い、“私“については一旦ここで完結しているんです。“私“は何故、“男性“とだけお話をする事ができるのか?」

 

 “男性“曰く、“私“に一番近いところにいたと、そして、ヘッドフォンは‘私“からのプレゼント、そこに縁が生まれたのではないかと……。

 

 ここで、一番のポイントがあるとすれば……もちろん。

 

「“私“は思い出すんですよね。自分がプレゼントしたヘッドフォンだったと」

「そうなんです! ここはちょっと無視できませんねぇ! 今まで、彼の事も忘れていたらしい“私“が全てを理解してしまったというところが、くぅ! 続きが読みたいですねぇ!」

 

 セシャトがWeb小説を読み、泣き笑い、大袈裟に感動するその姿にナツキも笑顔が自然に漏れる。本当にセシャトはWeb小説を読むのが好きなんだなぁと、ふとセシャトの手元を見ると、綺麗に畳まれている、ブルボンのお菓子シリーズ。ホワイトロリータ、ルマンド、エリーゼ、チョコエリール、バームロール、レーズンサンドにルーベラ、母屋に置いてあるお菓子のほとんどを開けてむしゃむしゃ食べながらブラックコーヒーを嗜む彼女は、ふと気がつく。

 

「あっ! ごめんなさい! 私ばかり食べてますねぇ! ブルボンのこちら、皆さんは全ておすすめですよぅ!」

 

 古書店『ふしぎのくに』曰く。ブルボン八英雄。マフデトさんが遊びにくると全種類持ってくるのでそう語られるようになったそれ、これもおそらくマフデトさんが古書店『おべりすく』に持ってきたお土産だろう。

 

「あはは、お構いなく……見てるだけでなんかお腹いっぱいです」

「そうですか? では真ん中に置いておくので食べたくなったらどうぞ! そして物語は“私“が“男性“を思い出した事で、動き出しましたねぇ! 明らかに“男性“は拒絶していたハズなのに……いいえ、“男性“の事を覚えていなかった事が“男性“のお怒りのポイントだったのかもしれませんね? 一番近かった間柄なのに……というところでしょうか?」

「うん、いきなりなんか普通に話しかけてどこかに誘ってますもんねぇ、空は星空です……ここから物語のタイトル回収に入るという事ですよね!」

 

 そう、タイトルは“私“から見た“男性“の姿なのであろう。これからどこへ行こうというのか? それは恐らく本作の始まりの場所と言える所だと容易に想像ができる。

 二つ目の結末、“男性“と“私“との現世での縁が終わる物語が展開されるのだろう。セシャトとナツキは顔を見合わして次のお話を……。

 

 からがらんと、そして母屋にあるモニターが来客を知らせる。セシャトはナツキに伝える。

 

「あら! お客様のようですので! お店の方に出てきますねぇ!」

 

 なんて自由なお店なんだろうとナツキは思いながら、テーブルにあるルマンドを一つとってパクリと食べる。

 どんなお客さんなんだろうかと思った時、ナツキはその人物を見て食べている物を喉に詰まらせた。

 

「ケホケホ……うそ」

 

 そこには自分と同じ顔をした、女子高生。

 用意されていた紅茶で喉を潤すとセシャトが接客をしている店内に向かった。店内ではセシャトが笑顔で来客した少女と話している。

 

「えぇ! そうなんですよ! “私“さんが死を受け入れている部分。あそこをもう少し踏み込んで考えても面白いかもしれませんね。ただ、ショートショートに近いので読み取れる物は少ないと思います」

「それってでも正しいことなんですか?」

「ふふふのふ! 感想や、考察なんて物は読み手の自由ですよぅ! 物語の感じ方は千差万別です。しかし、それを楽しんでいるという事には変わりないのではないですか?」

 

 そういう事である。例えば、“私“という少女がどんな人物だったのか? これは想像の範囲をでないが、“男性“やクラスメイト達、そして彼女の言動や行動、態度からいくらか読み取ることはできるだろう。クラスの中心人物だったか? と問われれば違うだろう。だが、竹を割ったような彼女は割と人に好かれていたのだろうと……物語の中の人物でありながら、どこか友達のように思えた読者もいたかもしれない。

 

 セシャトさんがカウンターであははと女子高生と話している様子に、ナツキは声をかけた。

 

「あ、あのぉ……」

「あー! やっぱりいた!」

「うん、久しぶりだねぇ……一年ぶりかな?」

 

 セシャトはニコニコと二人の様子を見つめている。探していた人物に出会ったリツキと、なんだがナツキは気まずそうに……

 

「あなた! 早くあれ、私に渡してよ!」

「えっと、うん。でも、もう少し待ってくれないかな? ……ダメ?」

「ダメに決まってるでしょ! じゃないと私が」

 

 一体なんだろうとどう話に入ったらいいんだろうとニコニコ笑顔を絶やさないセシャト。そこにこの店の店主が蒼い髪に青い着物に身を包んで出勤してきた。

「セシャトさん、おはようさん! 今日もピシッとしてはるなぁ」

「あらあら、シアさん、おはようございます!」

「それにしても、丁度お客様も揃ってんねんなぁ。アンタらに聞かせたい話や! 二人とも、一緒に聞いていきーや! な? それからでもアンタらの用事は遅ないやろ?」

 

 袖から扇子を取り出すと口元を隠しながらにんまりと笑うシア。何かを気づいているが、セシャトには分からないのでやはり笑顔でこういった。

 

「では、10時のおやつにしましょうか?」

『星空な瞳 〜願いの込められたヘッドホン〜 著・桜桃』本作のご紹介もいよいよ後半戦ですねぇ! 三月は去る、本作における“私“はどうなったのか? とても興味が尽きないですねぇ! 短編を一ヶ月かけて読むという事は今まで多くの方から希望されていたのですが、実はこれが難しいんですよね。長編と違い読める回数が多いだけにこの考察は正しかったのか? など沼にハマりやすいです。ですが、それも新鮮で面白いですね! さて、次回ナツキさんとリツキさんが出会いますよぅ!

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