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セシャトのWeb小説文庫-Act Vorlesen-  作者: 古書店ふしぎのくに
第一章『隻眼隻腕の魔女と少年 著・麻酔』
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読者からのラブレター 魔女物は定期的に流行る

最近、少し暖かい日があるのですよ。どうでもいいのですけど、いい加減コロナによる自粛にも限界があるのです。古書店『ふしぎのくに』で色々遊びに行くというお話を聞いているのですが、私が参加したのはどっぷりコロナ禍からなのです……

 褐色のギャルと真っ白なギャルは星乃珈琲で紙袋を持って密会していた。


「シーサー、例の物は手に入れた?」

「あたいめぇね? カームー」


 そう言って悦に入った顔で紙袋の中を見せる。ショタ物の薄い本。シーサーはショタ攻め、カムイはショタ受け。趣味嗜好の違いはあれど、二人はショタ萌えの同志である。


「お待たせしました。スフレパンケーキです」


 星乃珈琲の奥義。スフレパンケーキを前にカムイとシーサーはどエロい薄い本を紙袋に戻して目の前の最高級パンケーキにチョコレートソース、黒蜜、はちみつをかける。


「まーふーちるみーぶさーん」

「シーサ、もう少し東京の言葉覚えよ?」

「あ、あきゃしゃびょー!」


 指をさして慌てるシーサー、興奮してそう言うシーサーを抑えてカムイは指をさしている方向。そこには着物を着た少女? そしてボーイッシュな少女? がお茶をしている様子……が、カムイのアホ毛がピンとそそり立つ。二人は少女ではない……ショタと美少年だ。

 

 異様な視線を向けるシーサーとカムイ。はぁはぁとヒィヒィと、変な息遣いで見つめてくるギャル二人。


「なぁ、汐緒たん。めっちゃあのギャル見てくるんだけど?」

「大友くん、無視するかや……あれは悪い者ではないけど、良い者でもないでありんす……それよりオーナーが帰ってくるので、次読む作品の話をするでありんすよ」


 ブックカフェ『ふしぎのくに』、店長であり女郎蜘蛛の大怪虫である汐緒、ちなみに雄と普段から女子の格好をしているそのブックカフェのヘルプバイト大友、めちゃくちゃじろじろ見てくるギャルをよそに話し出す。


「『隻眼隻腕の魔女と少年・麻酔』。ふーん、マフデト君がオススメするなら間違いないんだろーけどさ。魔女物って定期的に流行るよな?」


 アイスコーヒーにミルクを足しながら大友は汐緒にそう聞いた。そして支給されているiPadで画面を見ながら大友は洋生を小さく細かく切って口に運ぶ。


「何でさ、エネルギーがなくなると魔法の理論化というベースになるんだろうな?」

「大友君、それは簡単でありんす。説明不要だからかや、無から有を生み出す事は理屈を超えているでありんす。魔法の理論化は物語の造形としては一番ベターでありんす。それもカンザキの近くにいるだけで魔法力が開花する。感応実験、ほぼノーリスクでありんすな」

「なんで近づくと才能が開花するんだろうな? あれか? 感化するからとかなのかな?」


 大友と汐緒はこれらの会話、考察を働くブックカフェでまた語る必要がある。それ故に、さまざまな質問を考え、それに対して様々な回答を用意する必要がある。


「でも……実際はノーリスクじゃなかった。当然、無から有を作り出そうとすると、それは危険性を伴うんだな。原子力発電所だって、何だってそうだよな……しかもカンザキが制御できると思ってたって何つーか、今の社会見てーだな」


 汐緒は店員を呼ぶとサンドイッチ、そして大友がシチューを所望するのでそれを注文。

 古書店『ふしぎのくに』はいくつか、福利厚生があり、コメダ珈琲と星乃珈琲で少しばかりお安くいただくことができるので、よくミーティングで使われる。他にも映画が500円くらい安く見れたりするが、またこのお話は他の機会にて……


「世の中のエネルギー問題は先人のトライアンドエラーで確立した物なのでありんす。結果としてこのカンザキを使ったエネルギー解消問題は失敗でありんす。で三百年後、現在に至るわけかや」


 ウイッチ・ショックとでも表現するそんな事件がカンザキのトラウマとなる。軽く一文明が吹き飛ぶその威力や……


「これってどのくらいの威力かや? 大友君達、人類最大の火と言われた核兵器くらいでありんす?」


 コーヒーのお代わりを注文しながら大友は考える。果たして核兵器程度で文明一つ吹き飛ぶだろうかと……


「そうだな……地球規模では核兵器では文明が吹き飛ぶことはないだろうし、世界規模の最大級の自然災害。阿蘇山の噴火でも日本列島の生物が死に絶えるくらいだったらしいし、カンザキの起こした超常現象的災害の威力は想像できないな……予想だけど、一キロ四方の隕石がそのままの物量で落下するか、、マグニチュード10の地震がくれば世界は滅ぶと言われているから、そんなレベル?」


 Web小説を読んでいてこの想像をするという事は重要である。作品の情景をより鮮明に想像する。

 余談ではあるが、某宗教の宗教勧誘でマグニチュード10の地震がくると話してくる連中がいるが、地球上のどこにいても助からないので、もう少し勉強をしてからお話をしましょうと、当方のバストさんの家で語った事が懐かしい。

 要するにカンザキの喚起で引き起こされた事象は、人間にはどうする事もできないほどの衝撃、神の怒り。

 まさに魔法と呼べるのだろう。


「カンザキが起こした問題を考えると、確かに喚起させたくないというのは当然分かるでありんす。というか、普通の精神の持ち主ならカンザキと同じ気持ちになるかや……さっさとこれをカンザキも話しておけば、ややこしくはならなかったでありんすよ。実に良い筆の運びかや。あちきもついつい読み耽ってしまったかや」


 作品内のキャラクターに対して、そうじゃないだろう! と思えることはとても大事である。それは何度も繰り返し当方が言う同化という現象。作品を楽しみ、作品にはまっている証拠なのである。

 ちなみに、作品に対してこうだろう! とか、このキャラクターを死なせやがって! とか、作品に対して作者批判をする事が稀にあったりするが、作者は喜んでいい。それは読者からのラブレターなのだ。

 作者以上に作品を好きでいてくれる読者とも言える。


「喚起による寿命の変化……これは……どうなんだろうね? 汐緒たん的にはどう思う?」

「進化、あるいは先祖返りという物を生物が行う場合があるかや、その生物の本質を変える為でありんすな? そもそも生物は生存率を上げる為に進化したり先祖返りをするので少し違うでありんすが、臓器移植による拒否反応みたいな物と考えれば良いんじゃないかや?」


 生物の本質が変わる喚起。よくよく考えれば、人間というコップに魔法という異物なのか、全く新しい物が加わるのである。それはコップが溢れてしまうのか、それとも受け止めれる器なのかで変わるのだろう。


「リンフの事が大事であれば大事である程にカンザキは喚起には応じれないのでありんすよ。その気持ちはわかるのですよ。大友君からすれば神様、あちきからすればオーナー。大事な人が失われるかもしれないことは、世界の損失よりも大きでありんす」


 汐緒も大友も、そりゃあカンザキの考えや気持ちの方が圧倒的に正しいとそう理解したというのにもかかわらず。

 関わらずである。


「物語の進行上、仕方がないとはいえ……カンザキはリンフを喚起し、魔法の力を与え、そして魔法の力、その使い方を教えようと言うんだな。今までの俺たちのディベートでそれまで頑なに拒んでいたカンザキに感情移入をしていたのに、ついに折れちまうんだな……まじか」


 コーヒーのおかわりも止まり、おやつに食事も終えたところで、そろそろ店を出ようかと二人は思っている。


「汐緒たん、あのさぁ……」

「何でありんすか?」


 汐緒は『隻眼隻腕の魔女と少年・麻酔』の物語の話に夢中になっていた事で忘れていたが、二人をガン見するギャル二人。彼女らの熱い視線はいまだに二人に突き刺さっている。

 本当に困った物である。大友はチラりと見つめてみると、血走った目で白ギャルと黒ギャルがいまだに見つめている。


「こえーよ。あいつら何だよ」

「気にしなくて良いのでありんす。あれはあちきとは違って大友君達人間相手にはとても良い物なのですよ。魔除け的な連中なのですよ」


 と、汐緒の事を大妖怪とは知らない大友はまた汐緒が厨二病全開で話をしているのだなと聞き流す。


「どっちも結構可愛い子だけどな? 俺程じゃねーけどさ」

「大友君は、男の子なのに可愛さへのその大きな自信はなかなかやばいでありんすな」

「ちょっと手でも振ってみる?」

「やめておいた方がいいでありんすよ? 人間という者は自らよくない者に近づいていく癖があるかや」


 と言われたが、大友は女の子みたいな見た目だが、女の子は大好きなので、ウィンクなんかしながらガン見しているギャル二人に手を振ってみた。大体これをすると困るか、少し躊躇してからか、あるいは相談した後にこっちに来るのだが、即きた。

 そう、大友も「おおぅ」と声を出してしまう程度にはすぐにやってきた。


「いきがわらびやいびーが! チムサーサー!」

「うわっ! 何語? えっ? 外人?」


 滅茶苦茶グイグイくる褐色、巨乳のギャルが大友の顔ギリギリまで近づいてくる。それに汐緒を見て、白い方のギャルが言った。


「妖怪しょや? 男の子?」

「オスでありんすよ。大友くんも」


 それを聞いた白ギャルは汐緒を睨みつける。汐緒をよくない者をみるように、汐緒も少し警戒する。

 すると、白いギャルは親指を立てて見せた。


「メスだったら、消してたけど……男の子なら可愛いから、いい!」

 

 ひとしきり、大友と汐緒と話して、齢数百歳といえど、見た目はショタの汐緒。そして女の子と見まごう美少年。大友。そんな二人にシーサーとカムイは……


「東京ハンパねぇっしょや? ね? シーサー。てぇてぇっ」

「うすまししじーん! カームー」


 二人は妄想やいろんな感情を持ってほこほこした気持ちでこのままお気に入りのショタ。マフデトが店番をしている古書店『ふしぎのくに』へとゆっくりと向かっていく。

 そう、同じ方向を歩く、さら毛の青年。そしてぶつぶつと悪態をついている者が向かっている事を知らずに……

『隻眼隻腕の魔女と少年・麻酔』今年最初の紹介作品ですが、年末にはどこまで進んでいるのか、あるいは完結しているのか、実に楽しみなのですよ。皆さんも今月の最後の年末には一度、ゆっくり本作を読書してみてはいかがなのです?

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