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セシャトのWeb小説文庫-Act Vorlesen-  作者: 古書店ふしぎのくに
第九章 絶望の箱庭~鳥籠の姫君~ 著・神崎ライ
79/126

Web小説と文学作品は棲み分けられている話。

「このピザという食い物は何故、12ピースなのか……今、私、セシャト。マフデトのやつに、貴様、バッカス。一種類であれば一人三ピース食えばいいのだが、今回四つに分かれたピザの場合……戦争が起きるのだ」

 

 要約すると四人だと神様は全種類食べる事が不可能であるとそう言いたい。流石にあまりにも侘しい事を言うのでセシャトとマフデトは閉口する。

 そして、当然バッカスはこう言った。

 

「どうやらお邪魔だったかな、私の分も神君が食べるといいよ」

「安心するのですよ! そのクソ馬鹿な神を名乗る奴がそう言うと思って、四枚頼んでいるのですよ。安心して食っていくのですよ!」

 

 宅配ピザを古書店『ふしぎのくに』で注文する時、大体4、5枚頼む事が多い。神様のこの言い分だけでなく、冷凍してオヤツや翌日の朝食などに使われる事が多い。


 ペパロニの乗ったピザにさらに乾燥唐辛子を乗せてバッカスが上品にナイフで切り分けて食べる。神様がお酒を飲めないので、それに合わせてバッカスもトニックウォーターを飲み物語の続きを話し出した。

 

「さて、冬夜くん。巻き込まれ型の主人公の典型だね。素晴らしい事にもういきなり大ピンチだ。しかし、冬夜くん、自らの隠し持っていた力なのか咄嗟の馬鹿力なのか、フェイくんに不意打ちをしたわけだが、ここで私は一つ面白いなと思う事があるわけだけど、みんなは分かるかな?」

 

 皆ピザに舌鼓を打っている中で、神様は分かっているようだが、他二人に回答を任せる気なのか、タバスコを親の仇かというくらいぶっかけてコーラと共に食している。

 それにマフデトは指をペロリと舐めて、自分の考えを答えた。

 

「このフェイは魔女モルガン・フェイを意識してるんじゃねーのですか? 人間を小馬鹿にしているのといい、物凄い力を持っているのですよ。魔女といいながら神の領域に片足っ混んでいるって設定が物語上のモルガン・フェイなので完全一致ではねーのですけど」

 

 口元を拭いて、レモン水を一口飲んでセシャトもこの話に参戦した。

 

「フェイさんが何者なのか、突然現れては不吉な事をして行きますからねぇ! 名前の通り、蜃気楼のような方という事でしょうか?」

 

 セシャトとマフデトはキャラクターの造形を名前と、行動や性格などから読み取ってみたのだが、二人はバッカスの反応を待つ。本来、お店にやってくるお客さんにWeb小説を読みかせ、独自の解釈から紹介していく生業をしているのだが、やはり今日は聞き手に回る。

 

 エビとカニの乗ったピザを避けて、パイナップルの乗ったピザを一枚皿に乗せるとナイフを動かしてからバッカスは話し出した。

 

「なるほどなるほど、二人はそういう方面から作品を抑えていくわけだね。いいと思うよ。うん、面白い。でも少し硬いね。名前から予測するというのは全くの空振りする事も多いと思うし、もっとお分かりやすい、部分を攻めてみても良くないかな? 私は、このフェイくん。学習能力が絶望的に悪いところに着眼する。これは極めて韻を踏んでいて面白いんだよ」

 

 バッカスが語るのは、妖怪や妖精、要するに人外の存在という者の行動理念についてであった。それらは物事の理や自然現象のような物、あるいは理解できない現象について人間が勝手に考えシステム化されたことを言う。


 例えば、口裂け女という都市伝説がある。彼女は私は綺麗かと聞いて綺麗だと言えば、同じように口を鎌で裂き、ブスだと言えば殺す。べっこう飴を渡せば喜び帰っていき、ポマードを塗っていれば逃げていく。


 それを出会う連中に毎回行う言わばNPCみたいな行動をとる。

 本作のフェイも例に倣いというか、人間を下に見すぎているからか、プライドが高いというのに一度受けた屈辱を再び受ける事になる。

 

 これらは今も昔も変わらない物語の韻である。この後、なんやかんやあり冬夜はなんとか生還する事ができて、フェイは憎悪を持って撤退及び、また現れますよというフラグも残してくれるわけだ。

 

「そんなところを読むんですか?」

「私やセシャト姉様じゃ、まず着眼点にならねーところなのですよ。やっぱりてめーは作品の作り方の方が強く見えるのですね」

 

 現在、物語の考察において最も主導権を握っているバッカス。古書店『ふしぎのくに』のメンバーは喜んで食べるパイナップルの乗ったピザを一口食べて、少し怪訝な顔をする。

 自分で取った物なので、バッカスはそのハワイアンをなんとか処理して、流し込むように食べ終える。

 

「バッカスよ! ハワイアンはまたらんであろう? 甘いピザとは最近は種類が増えよったが、昔はこいつしかなかったからの! 遠慮せずに食べるといい! 貴様は客だからな!」

 

 そう言ってやっとこさ食べ終えたハワイアンピザが皿に乗せられる。二ピースも食べればお腹は一杯。なのに、あまり口に合わないそれを見て静かにこう返す。

 

「あ、あぁ」

 

 神様の食欲は異常と言えるが若いセシャトとマフデトも良く食べる。Lサイズのピザが二枚消費されつつある中で、コーラを飲み干した神様が次のピザを選びながら神様は続きの話を三人に語りかけた。

 

「リーゼとフェイ、こやつら顔馴染みという事にやや違和感を覚える部分もあるが、リーゼ、結局チャンスではないのだよの」

 

 本作が若い作品であるという事。面白い表現がたまに見られる。昨今の作品はそういう構成部分はデリケートである為、中々見られなくなった。

 携帯小説から第一次ネット小説ブーム、そして現在の第二次ネット小説ブーム、Web小説ブームにおいて新規参入組より、元々上記や長年書かれていた方が多いからだろう。

 ノンプロの創作物において、新鮮でかつあって然るべきな個性とも当方は考えている。

 

 さて、それを踏まえた上で、神様の指摘について説明しよう。

 恐らく描写から読み取れる部分として平手であれば、フェイの方がリーゼよりも脅威度が高いのだろう。この場面では冬夜の思わぬ一撃に大きな痛手を受けたフェイ、この時点でリーゼはタイマンであれば全力を出さずとも撃退が可能だと判断した。

 そこから考えると平手の環境下でタイマンであれば全力を持ってすればリーゼはフェイを撃退することが可能かもしれないという戦力差なのかもしれない

 ならば負傷しているフェイ相手であれば全力を出せば言わずもがなである。冬夜を守りながらである為、攻め手に出られない。

 絶好のチャンスと表現されているのだが、実質チャンスではない。残念ながら絶望的な状況が、フェイの負傷で大ピンチになっているくらいである。

 

「説明したい描写は分かるのですよ!」

「そうですねぇ! 冬夜さんの未知の力をここで垣間見て、そんな冬夜さんを守らなければならないリーゼさんのハラハラした場面ですねぇ!」

 

 読者は大抵この二通りである。セシャトやマフデト、表現をあまり気にせずに作品世界を読む者と、作品を一つの文学芸術として構成や描写と表現を同時に評価して楽しむバッカスのように読む者。

 そして両方同時に楽しむ事ができる神様。今回は良い経験だろうと神様はあえてバッカスに寄せた。

 そして神様はこう言う。

 

「これは永遠の問題でもあるのだがな。Web小説は基本的に文学作品を好む読者といつも対極のところにいる。これを否定する奴もおるが、ほぼ間違いなくそうなっておってな。要するに音楽のコンクールを楽しむのがバッカス、アイドルのライブのように楽しめるのがセシャトとマフデトだの」

 

 Web小説は作品の更新頻度もライブ感が割と物を言うが、実際読者の方もライブを楽しむ閲覧者である部分も大きい。作品の知り合い同士がお互いの作品を読み楽しむことが多いわけで、作者がどう読んで欲しいかという部分を読み取りつつ、合いの手という名の評価を行う。


 これがWeb小説における一連の流れである。音楽やスポーツ、ホビーは流行に敏感であるように、その文学ジャンルがWeb小説だと思えばいいだろうか?

 

 本来であれば、そこに批評、批判をする文学ファンが入ってくれば、これらライトノベルの進化や変化も著しい物になるのだが、これが難しい。

 

「私は、別に作品を批判するつもりはないんだけどね。何を持ってして作品を作られているか? という部分を重きをおいているだけだよ。だからこそ、ベタな展開は好きだし、評価したいと思う。しっかりとわかりやすい伏線を貼って一話が終わるじゃないか」

 

 バッカスはハワイアンピザをとうとう完食できないのか食べるのを辞めてそう言った。

 

 二心抱いているような学長、強い力を持っているが、学園相当であろうリーゼ、そして主人公補正のかかった冬夜。役者はあと少しで揃い、フェイというエネミーのご紹介も終わったわけである。

 これから、冬夜の介抱と学園生活が始まり、そして表紙の少女の謎が同時進行していくのだろう。

 

 そんなところで古書店『ふしぎのくに』の休憩時間が終わる。セシャトとマフデトは奥から出してきた古本の陳列に目玉商品であるレアな本を一、二冊その中に忍ばせる。


「全く、どれもおもしれぇ本なのに、せどらーって連中は本を金の価値でしか見てねーのですよ」

「ふふふのふ! まぁ、でもそれも古本の醍醐味ですからねぇ! 古書店とせどりの方々は切ってもきれない間柄でもありますから、持ちつ持たれつですねぇ!」


 時折、古書店『ふしぎのくに』はせどりの方々のもつ蔵書を譲ってもらう事もある。転売を目的にしている昨今の人々と違って古書のせどりをされる方々はコレクター要素が強く、比較的安価な本も何冊も所有していたりする。お店にきたお客さんが所望した古本の在庫がない時などはセシャトたちもお世話になるのだ。

 

「本日の開店はどうするのです?」

「そうですねぇ! もう少しあの二人がいる間に『絶望の箱庭~鳥籠の姫君~ 著・神崎ライ』のお話をしたいですから、16時開店の19時クローズにしましょうか?」

『絶望の箱庭~鳥籠の姫君~ 著・神崎ライ』さて、今回、当方恒例の作品の粗探し回という事で、少し意地悪な部分を入れさせていただきました。もちろん、ご紹介をさせていただいているので、非常に楽しませていただいていますし! 実際に清々しいライトノベルであると言えます! 当方も何度も読み込ませていただいていますが、どうしても個人個人の感想となりますし、作品をどのように楽しむか! というのは読者の自由でもあるのかなと思います。作品は書き始めた頃でないと輝かない部分もありますし、書き慣れた時に輝く部分もあると思います。当方と長いお付き合いの方々であれば、またまた古書店『ふしぎのくに』が、お遊び回を行なっているなと思われるかもしれません。それでも声を大にして言いたいです! 作品の長所も、短所も! その作品と作者さんの魅力ですから! 元気よく、楽しく書いていただき! 読み手の私達は全力で楽しみ、考察し、時には批評すればいいと思いますよう! さぁ、次回もお楽しみに!

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