作者は演者である。ヘカ姉様の来店
師匠ちゃんが失踪を繰り返し、私は何らかの結果を残さねーと降板という状況で、メインライターの一人であるレシェフさんはそういう制約がねーので、高みの見物をしてやがるのですよ。セシャト姉様が近々覚醒するのですよ……
マフデトは、くだらねーですと言ったものの……ダンタリアンが置いていった学生服をまじまじと見つめて、マフデトは表情が緩む。
秋文と並んで登校する様子を考えていたらドンドンと古書店『ふしぎのくに』に誰かがやってきた。またダンタリアンかと思ってガラガラと強く開ける。そこには……
「遊びに来てやったんよ! マフデトさん」
「へ、ヘカ姉様……いらっしゃいませ。入ってくださいなのです」
ヘカはもてなしてくれるマフデトにうんうんと頷き、そして牛乳瓶がいっぱい入った袋を見せた。
「蘭ちゃん、これがヘカの可愛い弟分。マフデトさんなん」
ヘカがそう言って読んだグラマラスな女性。国際的犯罪者・蘭。されど、そんな事よりもヘカと同棲しているこの女に激しく嫉妬した。
「あー、噂の紐なのですね……チッ、仕方ねーから入れてやるですよ」
「ヘカ先生、スッゲー攻撃的な子っすね……」
そうは言うが、マフデトはヘカと蘭を母屋に招いてからコーヒーを出した。
自分はお土産の牛乳を……
「マフデトさんが『隻眼隻腕の魔女と少年・麻酔』を読んでるのは知ってるんよ! フジノはいい魔女なんな! 本来物語の魔女はいたずら好きの、小悪魔なんな! ヘカみたいな感じなん!」
ヘカは小悪魔系美少女と自分で言いたいのだろうが、ない胸を突き出していうので蘭は吹き出しそうになるが……
「さすがヘカ姉様なのです! 美しいだけでなく、聡明なのです。このカンザキに師匠を合わせるというイタズラに全力になれるところ、フジノはいいキャラクターなのですよ! それにしても魔女といえばヘカ姉様なのです!」
めちゃくちゃヘカをよいしょしてくれるマフデトにヘカはどんどん調子に乗る。エナジードリンクを取り出すとそれを飲みながらうんうんと頷く。
「いやぁ、カンザキさんの住処とそっくりというか、そこを模してカンザキさんの住処を作られていた。これってクラフトは同じ設備を持つ必要があるからっすかね? 要するに同じ流派というか? 学部?」
理系脳の欄の話にマフデトは不愉快そうな顔を見せる。ヘカと二人っきりで話したいところ、このヘカと同棲している女はおじゃま虫以外の何者でもないのだ。
「まぁ、それもあるかもしれねーのですけど、大体。子は親の真似をするんですよ。つーか、もうクリスから命狙われてねーなら、ヘカ姉様と同棲する必要なくねーですか?」
魔女の住処、ヴェルデとカンザキが住んでいる場所が似ている話をしていたのだが、マフデトは超、ヤキモチを焼いてそう言う。Web小説の作品の話どころではなくなったところ……
プシュっとエナジードリンクのプルトップを開ける虚な瞳、おかっぱの黒髪。そして大きな隈のヘカ。
「マフデトさん、ヘカがランちゃんに取られると思ってヤキモチ妬かなくていいん! ヘカはみんなのヘカなん!」
普段、やや邪険に扱われるヘカだが、マフデトはめちゃくちゃヨイショしてくれるので機嫌が頗るいい。
そして極め付けの……
「さすがはヘカ姉様なのです! 素敵なだけではなく、私とこのヘカ姉様に色目を使う女に対してでもそのお優しさ。まさに聖女なのです!」
ふんふんとヘカはどんどん調子に乗る。無い胸を張って、腰に手を置いて何度も頷く。
「十四、五で180は、平均的に見てもリンフはくそでかいんな! 女性で平均的に海外のモデルが175以上が美人の象徴とか言われてたんな? ちなみにヘカは144センチなんけど、超美人なん」
「当然です! ヘカ姉様は超美人なのです! それにしても乳ばかりでけー、欄はいらねーのですよ。牛さんで間に合ってるのです!」
欄は笑うしかない。
「いやー、自分にここまで言ってくるのはマフデトさんくらいっすね……セシャトさんに似ているのに全然違う子何すね」
「子とか言うんじゃねーですよ! 欄、てめーはモデルみたいな体型しやがってうぜーのですよ」
「まぁまぁ、牛乳で悪酔いしてるっすよ? そう、牛乳は成長にいいっすよね? この作品世界の食事体制がどうなっているのかわからねーですけど、リンフ君はカンザキさんの下で成長したおかげで、食事、生活環境共に自分達の現在よりもいいのかもしれねーっすね? だから、リンフくんの成長も発育ステータスが高いなんてどうすか?」
それにマフデトが何か物申そうとしたが、ヘカがビスケットをバリバリとかじりながらマフデトの用意したビールジョッキに入った牛乳をガブガブと煽る。
「さすがは欄ちゃんなんな! それにヴェルデの魔法。明らかに上位種の、まさに魔法なんな? リンフの事をみてヴェルデも悪くない反応なん……そして結……カンザキがやってきたんな? 面白くなってきたんよ!」
マフデトはプクーっと頬を膨らませてあからさまに機嫌を悪くする。今はマフデトが古書店『ふしぎのくに』の店主なのだ。セシャトさんのレプリカであったとしても、ここで主導権を握れないというこの虚無感。
「マフデトさん、そんなに拗ねないん! 作品の読み方、楽しみ方は人それぞれなんな! カンザキの短所、師匠に指摘されてるように、マフデトさんもまだまだ発展途上なん。ヘカはヴェルデとは違う考えなんな。本音と建前、言葉にして伝えない事の気遣い……そんな物は永遠に伝わらないん! もっとガツンと言ってやればいん!」
ヘカはよくも悪くも真っ直ぐな存在である。自信過剰で自意識過剰、そして異様なまでに我が強いヘカ。それ故に欄は突っ込んだ。
「もし、ヴェルデさんがいれば、ヘカ先生。絶対怒られるやつっすよ! ……ヘカ先生なら喧嘩になるかもしれねーっすね」
ヘカは自分を生み出した神様とですら喧嘩を始める。自由であり勝手なのだ。カンザキは自分の間違いや問題を受け止める度量があるが、ヘカにはそんな物はない。
「欄ちゃん、カンザキはわかっていて、臆病な、作中通りであれば卑怯な方法でリンフとの関係を現状維持にしようとしたんな? これは正直、女々しいん。でも、女の子らしい健気さも感じるんな。人間らしいんよ」
人間らしいと述べた。実はこの母屋には今、人間は欄しかいない。ヘカもマフデトも神様が作ったか、ダンタリアンが作ったかの違いはあれど、人間に似て非ざる者。
「要するに、カンザキは不器用な女の子なんですよ。健さんなのです!」
「マフデトさん、それもうわかる人あんまいねーっすよ」
カンザキが名俳優高倉健かはさておき、あまり役を演じている時は多くを語ろうとしない健さんとの共通点はあるかもしれない。
「ちなみに、俳優・女優、後は声優もなんな? を研究することは役作りには重要なファクターなんよ。どちらも一役演じているんよ」
私は演技なんてできませんよ。という小説家はすぐに筆を置きなさい。超巨匠に弟子である師匠ちゃんが言われたセリフ。彼はそんな超巨匠にも死ねと一言返すのだから大物である。
「へぇ一役演じるんすか?」
「そうなんな! 声優、俳優・女優で一人何役も演じる人もいるん。作者も何人ものキャラクターを描き、それを動かすん。その演技力は作者の腕にかかってるんな?」
いや顔にも思い出されないだろうか? シェイクスピアである。誰しもが、舞台に云々カンヌンだ。
ちなみに、声優は自らを俳優や女優と考えている方も(特に昔の声優は売れない俳優や女優の仕事だったので、声優というのは下位の仕事と感じている方が超有名声優の方でおっしゃっておりました)いるが、分かりやすい表現の為に分けて記載しているご容赦願いたい。
「どういうことなんです?」
「正解に近いということなんよ! よく絵の依頼をする時、○○のキャラクターみたいな。とかの依頼がくるんな? あれは絵師としては考えものの依頼なんけど、依頼側としてはそれは完成した形状なん。さっき、マフデトさんが健さんを名だししたんけど、それは健さんみたいな要素をカンザキがら見つけ出したん。さすがは健さん、という点と、カンザキというキャラクターがより鮮明に見えてくるようになったんな?」
創作という物に終わりがあるとすれば我々の文明が終わる時だろう。事、日本においてはWeb小説の発展により、小説文学の崩壊と再生が始まっている。
「本作に限った事じゃないん。だけど、本作のカンザキって良いキャラをしてるんな? 後多分ここまで読んだ読者はヴェルデに浮気をしたかもしれないん。まぁヘカに比べれば二人とも魅力は落ちるんけどな。Web作家の情景するキャラクターっていうのは、はっきりと魅力が見て取れるん。あれに似ている、これに似ている。そんな物がハイブリットされていくん。後進になればなる程、それは劣化して、強化して、進化して……新しい物開花するん。そういう意味では愛を注いだキャラクターはオンリーワンのブランドを確立するんよ。ヘカが言うんから間違いないんな!」
そう、何度も言うが、このヘカ、一回きりの登場からレギュラーに上り詰め、ヴィジュアルを与えられ、そして今や古書店「ふしぎのくに」のライターの一人として活躍している。
「感無量なのですよ! さすがはヘカ姉様なのです! どこの馬の骨か分からねー、欄とは大違いなのです」
「あはは、いやー、手厳しいっすね……これでも自分。秋文くんには欄お姉さんって言われてるんすよ?」
地雷。
地雷であった。マフデトは例に漏れず秋文が大好きだ。その秋文に目の前の……
「このクソビッチは、誰でもかれでも手を出しやがりまして……二度と秋文くんに近づくんじゃねーですよ!」
「いや、無理っすよ! たまに、ヘカ先生と秋文くんとランチミーティングしてるんすから」
衝撃であった……
「こ、今度秋文くんを呼ぶ時は私を必ず参加させるですよ! 何を食べさせられているか……」
「大体ボンディーかスマトラか、カレーっすね」
「カレー! 私、カレー大好きなのです!」
欄は目の前の王冠を乗せたマフデトをみて、笑いながらガキだなーと思っていた。そんなマフデトにヘカはニヤリと笑う。
「マフデトさん、最近、ヘカは甘口を卒業したんよ」
こっちにもガキがいたと欄は黙って牛乳を啜った。
『隻眼隻腕の魔女と少年・麻酔』伏線の付け方はわかりやすく、無駄はありませんね。今回のお話ですが、俳優の動きや演じ方、上手さ、下手さそういう物を学び、文章を形作るという事を練習していた時の事を記載した物になります。文章書くならいろんなインプットは必要なのですよね




