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セシャトのWeb小説文庫-Act Vorlesen-  作者: 古書店ふしぎのくに
第八章 『machine head 著・伊勢周』
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物語は読み終えるまでが物語です

 次世代超クオン型、試作二号機トワ。

 彼女は兄貴分か姉貴分である後期型クオンの整備中、暇を持て余して街を探索していた。


「クレームあるじゃない! フルーツとか何も入っていない生クリームだけのが実は通なのよね。ネニ様とマリナはきっとフルーツやチョコーレートがふんだんに使われたの頼みそう! ん? 大きな迷子かしらお嬢さん」


 紺色髪の女の子がキョロキョロとしているのでトワは話しかけてみた。この辺の国の女の子じゃなさそうだなと思いながら話しかけてみると彼女はこういった。


「あの、この辺に古書店『ふしぎのくに』ってご存知じゃないですか?」

「ううん、聞いた事ないわよ……そうだ! 古書店ならあるから、一緒にいきましょう! このクレープ、お近づきの印に」

「いいんですか? でも貴女の」

「人型機械端末、元ウォ・ボットのトワよ。人型機械端末の保護や生活支援のNPO団体会長。だから、それは嗜好品であって食べなくても死なないわ」


 少女はトワが人間ではない事に驚いた。こんな精巧な機械が存在する事。それにトワは笑って、何人かの街の人を指さした。あれは人間、あれは人型機械端末。なんなら人と人型機械端末のカップルまでいる。


 古書店にたどり着くも、どうやら少女の探している古書店ではないらしい。だが、少女は持ち帰り自由と書かれた古い小説の中から一冊トワにオススメの小説を教えてくれた。トワは受け取ると手を振る。


「会えるといいわね。そのご友人、何か困った事があったら私か、ネニ様……じゃなくて、後期型のラストナンバー、クオンを頼ってきてね」


 そろそろ整備も終わる頃かとトワは帰路につく。

 旅人ば不思議な町にきたもんだなと思った。


「さて、完全に機能停止するまでは、美味しい物を食べながら、旅を続けてみようと思ってましたが、ここでデッドストック()の旅の終着ですね」


 唯一の武装解除されていない左手の振動兵器はもう失われた。敵性兵器の能力は未だ未知数。かたや武器一つない。戦闘行為は今まで限りなく避けて通ってきた。人間に寿命あるように、機械にも使用期限というものがあるのだ。

 どちらも大事に大事に使ってやれば長く使える物。なんにでも使い時いう物がある。人間と違い機械迷わない。そして間違わない。今が自分を使用限界まで消費する時なんだろうとまっすぐに走る。


全機能抜錨(リミッター解除)


 消えるという程の速度で対象の前へと立つ旅人。


「これより、先には行かせません! できれば同じ機械として争いたくはないのですが、宗助さん達の幸せを奪おうというのであれば、僕が相手になります!」


 二度目の会敵で分かった事がある。

 この対象は融解した金属の体を持っている。

 推定3000度の高温で液状金属の身体を持つ怪物。マシンヘッド、捕まり取り込まれでもすれば旅人の身体も五分と持たない。


「こんなの本編出てきたら大変でしたね」

「ブカタ、#$宗……助%」


 あぁ、最悪だ。

 旅人はこの怪物が何の模造品(レプリカ)か瞬時に理解した。彼のアルゴリズムは旅人と同じ量産機として生成された。この怪物の目的は最初から旅人が守ろうとしている人物一択なのだ。

 あらゆる戦術計算を張り巡らすも自分に待っているのはデットエンドしかなさそうだと判断したとき、先ほどまで話していた金髪の子供。神様がアホ面で駄菓子をもって歩いてくる。


「ビックチョコとはあれですか……」


 クオンは咄嗟に神様を抱きかかえる。


「貴様なんぞ……ぬぉおお、速い!」


 瞬時に2000メートルは距離を取った。神様を下すと旅人はうまい棒差し出した。

 

「神様、約束は守りましたよ。これ、未来の神様から」

「うまい棒か……くっ、しかたない。これをもってゆけぃ!」


 旅人に神様が手渡したものはビックチョコ。

 これでどうしろとと思ったが、神様は語る。

 

「貴様、うまい棒エフェクトを知っておるか?」

「いえ、バタフライエフェクトなら」

「このうまい棒は未来より過去に来た。貴様もそうであろう。ならば今はもう貴様の知る未来へと通じる過去ではないという事だの、何をしに来たか知らんが、お前のような奴を放っておけない馬鹿がここにそろそろ来るからの、私はあの馬鹿と今日は話す気がないので、帰ってペヤングでも食うとする」


 そう言って手を振る神様に旅人は聞き忘れていた事があった。

 

「そういえば、あの子はなんの神様なんでしょうか……」


 そんな旅人の思考を遮る。

 甲高い声、小さな少女が二人に、大人の女性が一人。旅人は名前を呼んだ。

 

「ヘカさんに、一文字いろはさんに、欄先生?」

「いやぁー。自分はこんなアンドロイド的な知り合いは、ルーラーさんとクリス社長のところのメジェドさんくらいしか知らねーですけど……その手重症っすね」

「クオンなんな! というか本当にロボットだったん……とりあえずこれを飲むん」

 

 渡された物はモンスターエナジーなる清涼飲料水。

 とんでもないケミカルな味がするそれを飲んでクオンはどうしろというのかと思ったが、


「これでクオンもモンエナ部なんな! あのマシンヘッド・ニゲーターを一緒にやっつけるんよ!」


 そう言ってスマホを開く。まさか、こんなところで?


「マシンヘッド 読むんな! ジィーナは恥じらいがあるん。欄ちゃんは裸で男を前にしても、慌てないんな!」

「いや、自分そんな痴女じゃねーっすよ。まぁでも生方宗助くんなら見られても悪くねーかもしれねーっすね。にしても並行世界側ってあんがいまともに正義が執行されるんすね。上級国民のマオさん捕まっちまったっすね」


 正直、ここまでの事をしでかしたのであれば、秘密裏に処刑してやってもよかったんじゃないかと欄といろはは同時に思ったが、ヘカとクオンは満足した顔をしているので、黙っておく事にした。

 それにしてもこれから怪物との命の奪いあいをしようというのに、悠長に読書を始めた。肝が据わっているというレベルじゃない。彼女らはおおよそ人間としての反応を逸脱している。

 だからこそクオンはにんまりと微笑んで見せる。クオンには到底理解できない事を質問してみせた。


「リルさんと思わしき方が、ハイスクールの図書室にいらっしゃるのですが、これは一体なんなんでしょうか? 作中でも言及されていませんし」


 クオンがそう言うと、信じられない情景をまのあたりにする。

 可愛らしいウサギのリュックからいろはが取り出したのは、30cm四方の大型地雷。ドライバーを取り出して、それに何かを細工を施している。その隣では知的そうな欄という女性が巨大な水筒のような筒に何かをつめている。


「あの、欄さん、それって」

「ジャベリンっすよ。作品の内容だけで聞くと、マシンヘッドって殺戮兵器は対戦車くらいを仮想的にしないとダメだといろはさんと話し合ったっすよ。いろはさんのカスタムM19と自分のジャベリンでも果たして通用するのかわかんねーっすけどね」

 

 そんな普通に戦争準備をはじめようとしている二人の横で仁王立ちする黒髪おかっぱの少女ヘカ、二人の指揮官的な立ち位置であるのだろうが、実質なにもしていない。


「クオン。このリルが幽霊なのか、あるいは思念、概念の一種なのか、もしかするとこれこそが、リルの発現したドライブ能力なのか、あるいはリルなのかも誰にも分からないん。多分、そこに答えはないんな。読者の思う結果がこそが、あのリルなん」


 いくらか考察のしようもあるだろうが、おそらくそこに深い意味はないように思われる。

 この演出はその後の宗助と岬のお祭りデートへの伏線だろう。


「なるほど、よく分かりました。リルさんは幸せだった。そして宗助さんも多くの痛みの中でも幸せを感じてます。であれば、このエンディングは僕が望むべきものです。皆さん、力を貸してください。あの、識別コード不明。マシンヘッド・ニゲーター。あれは、どういう原理なのか、超高熱で融解している金属の身体を持っています。多分、ロケット砲や大型地雷程度の火力じゃ消しきれません。ですが僕を動かしている縮退炉、ガイスト機関による自爆。これであれば瞬間的に局所的なブラックホール現象・重力場を生み出します。それならばあるいは」


 その為にマシンヘッドをロケット弾と大型地雷でポイントに追い込んで一番被害の少ない場所で自爆。クオンがそう言うとモンエナのプルトップを開けたヘカがクオンの前まで来てぱちーんと頭を叩いた。


「えっ?」

「クオンは馬鹿なんな! あのマシンヘッドは誰一人欠けることなくやっつけるん! そして、セシャトさんとマフデトさんのパーティーにヘカ達も飛び入りするんよ!」


 その作戦は? と聞くもヘカはとんでもない事を言ってのけた。


「クオン、奇跡は起こらないから奇跡というんじゃないん! 奇跡は、ヘカみたいな主役が引き起こすから奇跡っていうん! クオンはあの偽物にトドメを刺すん」


 そうは言われてもなんの対抗手段もない。唯一の超振動も。


「ヘカさん、ぼくはもう左腕も切り離して……あれ……」

「クオン、クオンの腕はもうあるんよ」


 クオンの前には先ほどまでの目の下に隈がある小さな少女ではなく、前髪ぱっつん以外は長い髪に高身長、グラマラスな女性。そしてやや低い声となったヘカの姿。

 その両手にはモンスターエナジー、そして激狂打破。


「ハイパー・モンスターエンジンなんな。クオン! |фцумновн《Web小説擬似書き出し》。超振動・エアロドライブを使うん」


 この光景にはじめてのクオンといろはは開いた口がふさがらない。一度、この光景を目の当たりにした事がある欄は飽きれ、苦笑しながら対象に向けてジャベリンを構えた。同時にいろははうさぎの形をしたドローンを使って対象が移動しそうなところに地雷を設置する計算を始める。


「ヘカさん、そのお姿は? それにその力は……」

「クオン、どうしてもというならしかたないんな! ある時は謎の美少女なん。そしてある時は大人気美少女Web作家なん。またある時はモンエナ部、美少女部長なん。でもそれは世をはばかる仮の姿なんな! ヘカは……」


 いろはのごくりという唾を飲む音と、クオンは絶対に永久記録しようと集中する。


「古書店『ふしぎのくに』の美少女ヘカなんな!」

「……ふむ、成程。謎が深まるばかりです」


 結局なんなのか分からないが、クオンの腕は確かにそこにある。そしてヘカは羽ペンを振ると。クオンの服装がアーセナル職員の物に代わり、ヘカの身長が少し小さくなる。

 ヘカは三人に命令を下した。


「偽物マシンヘッドをやっつけるん!」

 

 街に誰一人いないのは神様の力なのか、それともヘカの謎パワーなのか分からないが、クオン、いろは、欄はお互い見合って頷く。一流に言葉はいらない、自分が今何を成すべきか理解し、そして即席で連携が生まれる。

 

「じゃあ、いくっすよ! フラウアさん、割と自分は好きでしたっす! そのしつこさはもしかすると届いたかもしれねーっすね! 機械に頼らなければ」

 

 ドンと一発目、欄は直撃コースを狙ったが、クオンの言う通りロケット弾の爆発では一部液状金属のボディーを散らしたに過ぎない。欄はあまり好きではないモンスターエナジーを一口飲んで、最後の二発目。


「しゃーねっすね。アスファルト、あんたの熱で脆くなってるっすよ?」

 

 マシンヘッドの足元を狙い着弾させる。穴が開き足元が取られるマシンヘッドの頭上から降り注がれる大きな対戦車地雷。

 そもそも質量があるのかも分からない相手の為、遠隔起爆させる細工がなされたそれを完璧なタイミングをいろはは狙う。

 

「今日はあの忌々しい男が邪魔しないから、私の芸術見せてあげるわ。足元がお留守よ」

 

 カチリと起爆。完全に地面に埋まったマシンヘッド。その周囲が赤く溶け始める。その瞬間、欄といろはは一陣の風が通り過ぎるのを感じた。

 

 機械のパープルアイが光る。身動きの取れない執念と金属の塊相手にクオンは自身の知るカタログスペックを超えた動きで自身の超振動兵器を発動。そして、本来備わっていない能力。

 

「僕の戦術計算ではあり得ないんですが……不思議なくらい使用可能だと感じます。コウスケさん。力を貸してください。エアロドライブ! 皆さん、耳を塞いでください!」

 

 超振動では削りきれなかったマシンヘッドの身体、きっとエアロドライブだけでもこの液状金属には効果的ではなかっただろう。が、超振動と合わさったエアロドライブ。強烈な音響兵器として液体金属の形状記憶を阻害する。そして剥き出しになったマシンヘッドを構成するコアと呼ばれる陰陽の球体、それをクオンは引き抜いた。

 

 発動からわずか五秒。

 コアを握り潰すと熱源を失った金属は急激に固まり始め、原型を留めてはいない。

 

「やったんな! さすがはヘカの作戦なん!」

 

 遠くからそんな声が聞こえる。エアロドライブ、作中では幾度となく宗助を守ったその力。クオンはたった一回の使用で全身の機能が悲鳴を上げている事を理解した。まさにオーバードライブである音響兵器はクオンにも取り返しのつかないダメージを与えていた。

 

「クオンさん、お疲れっす! 立てますか?」

「えぇ」

「クオンやるじゃない! 今度私の仕事手伝いなさいよ!」

「いえ、僕は犯罪を犯せないようになってるんです」


 ヘカが走ってきてクオンの手を引く。


「さっさとパーティーに突入なん! 四人だけでご馳走食べるなんてあり得ないんよ!」


 クオンは思った。

 そういえば、物語のキャラクターである宗助やリルがどうしてここにいるんだろう? それを聞けばヘカは「細かい事は気にしないん」とか言うんだろうかと思いながら……古書店『ふしぎのくに』へ。

 

 自分の家のようにヘカは欄といろはを連れて古書店『ふしぎのくに』へ入っていく。母屋の方から確かに声が聞こえる。自分はそういえばお菓子好きなこの店の店主に会いに来たんだったなとか……

 クオンのスキャンで奥に四人の人物が確認される。

 とても楽しそうだった。

 でももう会えそうにないなとか思ってクオンの思考は停止した。

 






 

 

 

 

 

 

 

 

「ネニ様、ネニ様! 整備終わったよ」


 瞬時に覚醒、同時に身体の全機能のチェック。どこにも問題はない。起き上がるとよく知る後継機の少女。


「トワ、僕はトウキョウシティでマシンヘッドと戦って……」

「ネニ様、何を言っているの? この前山岳地方に旅に行ったから念のための定期検診だったんだけど、どこか記憶域の以上かな。それにトウキョウシティって……私たちの滅んだ帝都よりも何万年も前の古代都市でしょ。もっかい検査する?」


 クオンは記憶を急激に戻す。

 自分がここにいる理由。確かにそうだ。雨風の多い山岳に出向いた後の整備だった。

 

「トワ、すみません。大丈夫です。それよりお昼にしませんか? ケーキとオムライス……それにクレープなんかもいいですね。マリナも呼んでお聞かせしたいお話があるんです。『machine head 著・伊勢周』って物語なんですが」

「そうなんだ。私もさ、さっきこの本を古本屋さんで出会った紺色髪の人間の女の子にもらったから一緒にお話しよっか?」


 クオンは妹分であるトワが持つ小説を見て深く考えない事にした。

 それが誰かのか、どうなのかは関係ない。この特別なメンバーと、特別な物語を語る事が今やるべき事なんだろうと。

『machine head 著・伊勢周』今回をもちまして、一旦本作の紹介を終了としたいと思います。その年の最後紹介作品はだいたい長編という縛りがありましたが、本作は40万文字程なので複数回マラソンするのにはちょうど良い長さだったと思います。また、色々と考察できるところもあり、バトルも人間ドラマもどこか刺さるところがあったんじゃないでしょうか?

 あまりネタバレをしない紹介小説ですが、量産型フラウアの模造品マシンヘッド・二ゲーター。フラウア君が固執と永遠に対して、否定と瞬きという事で真逆の存在という事ですね。余談ではありますが、フラウア君と同じ魂を在り方をしているのが、実はクオンだったという没案があったりしました。本作は一人のキャラクターにスポットライトを当てても魅力も広がりもありまだまだ楽しめそうですね。名残惜しいですが、いかがでしたでしょうか? また、一ヶ月間紹介させていただきました、伊勢周さん、本当にありがとうございました。この場を持ってお礼を申し上げます。

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