勝手に題名をつける物語の読み方
猫カフェに行った時の話をしよう。
メンバーは猫が苦手なセシャトさん、猫が好きなヘカさん、猫が好きなマフデトさん。
猫を見ながら癒されるをコンセプトとしたそんなカフェで飲み物を選び、猫が寄ってくれば撫でたり玩具で遊んであげたりするそんな普通のお店。
「ぬこー! ぬこーがいっぱいいるのです! クソかわええのですよ!」
「癒されるんな! この獣共、たまらんのな!」
二人は猫じゃらしを動かしながら猫とスキンシップを取ろうと躍起になるが、一人真顔でコーヒーを嗜む少女。我らがセシャトさん。
「あらあら、想像以上に放し飼いにされているんですねぇ。可愛いですが、とても苦手です」
動物というのは猫に限ったことではないが、予想できない行動を起こす。不思議なことにセシャトさんの周りに集まりだし、腹を見せるのです。
「むむっ、威嚇でしょうか? 困りました……あの、ヘカさん、マフデト兄様。お膝に猫さんが乗られているのですが、取ってはもらえないでしょうか?」
驚く事に、セシャトさんを止まり木か何かと勘違いしているのか、膝に二匹、周囲に四匹、一匹はずっとセシャトさんに擦り寄り、一緒に来た二人の嫉妬を買う。
「セシャトさんはそういう、可愛い猫が苦手な自分あざと可愛い感出すんな?」
「セシャト姉様はそういうところあるのですよ!」
セシャトさんは猫に限ったことではないが、犬でも触れ合える距離までが苦手なのである。時間一杯猫にもみくちゃにされたセシャトさんが一日放心状態になり
マフデトさんとヘカさんは大勢の方々からセシャトさんイジメの罰を受ける事になる。
それはまた別の機会に……
クオンは少しおかしな点を感じた。
この神保町は完全に自分の知っている神保町じゃない。まず、バスの形状が明らかに変わった。廃れ整備が行き届いていないように見える。
「ついには古書店『ふしぎのくに』が無くなってしまいましたね」
BAR‘ふしぎのくに“ クオンはノックをするのは逆に失礼かと扉を開いた。
そこには澄ました顔をした一見ショートカットに見える。後ろ髪をバレッタで止めたの桃色の髪の女性がバーメイドとして立つ雰囲気の良い店だった。
「えっと……」
「いらっしゃい。ロボット君。この店に来るという事は何かに迷ってるのかな? ねぇロボット君」
クオンは今までのことを語るとバーメイドはクオンにミルクを差し出した。
「なるほど、読み終えれば脱出できるかもしれないと仮定してみようか? 申し遅れだったね? 私はバッカスと、そちらはウェルカムドリンクの蒜山のゴールンミルクだよ」
うっすらを金色の牛乳。
こんな物は見たことがない。クオンはそれを飲んで驚く。
「世界で一番人気のある日本のミルクだよ。じゃあ話そうか?」
二人して同じ作品を黙々と読む。バーならではの静けさ。そこで静かにバッカスは聞いた。
「ブラックボックスからの脱出。実に最終回のようじゃないか、強いて言えば! 大脱出!」
「えぇ、憧れます。僕達機械には成功か失敗は最初から決まってます。ですが、人間は成功できますし、失敗できますからね。ここはワクワクしました。バッカスさん。宗助さんと岬さんの関係。こういうのいいですね?」
「まぁ、そうだね。魅力的な男女が揃っているのもあるけど、同じ困難に向かい、一緒に過ごす時間も多い。吊り橋的な効果もあるんだろうけど、要するにアオハルだね」
「アオハル……実に興味深い響きです。それにしても僕でもパスタはハーフサイズで十分なんですが、宗助さんはエンゲル指数がちょっと高いですね」
「ロボット君、物語に出てくるキャラクターは基本超がつくほど大食いか小食なんだよ。宗助君は食べ盛りだし、能力者として、今回のミッションで相当なカロリーを消費したんだろうね。にしても……稲葉君のリル君への助言、クソみたいな助言だね」
「辛辣ですね……クソとまでは言いませんが、なんというか知能指数と作戦成功率の極めて低い作戦だとは思います。それらの低さと低さが競い合うように相乗して僕は絶対提案しませんね。作戦遂行時の稲葉さんは優秀な戦士でありますが、これに関しては閉口せざるおえませんね」
稲葉氏、作中でも遊び半分での言動だったのかもしれないが、二人は牛乳を飲みながら真顔で考察するのだ。そしてバーの空気所以か……一瞬の間を楽しんだ後に牛乳にウィスキーを足してバッカスはラム風味を楽しむと話を進めた。
「最初の頃に少し示唆があった不破君の過去回想の回収が始まるみたいだね。にしても破れ不な名前なのに物を実質破損させる能力は実にアンチテーゼだね」
クオンは少しばかり自問自答するが、人間ではない自分には理解が届かない部分をバッカスに尋ねてみる。
「バッカスさん、お尋ねしたいのですが、復讐する事はダメなんでしょうか? 一般的に政治判断でも報復は当然かと思うのですが」
復讐が生きる証である美雪とそれをよく思わない不破の会話に疑問を投げかけるクオン。
さて、創作のというか、人間の心理的矛盾について語ろう。復讐をしても殺された奴はうかばれない、望んでいないという方や、仇は必ず取るという考え方もある。自分が対象になった場合、もし理不尽に殺されようなら復讐してもらいたいし、大事な人が奪われれば全身全霊をかけて復讐したいと思うのが人間的には妥当だろう。
「俗に言う倫理観の説明だね。所謂死人に口なしなわけだけど、冷静に判断できる人間の良心を表現する方法が実は選択が少ないんだよ。これは定番、要するにテンプレートってやつさ、端的に言えば不破君は大事な人である美雪君が魔導に堕ちるのをよくは思っていないという事だね。さらに深い意味で言えばツンデレの亜種だよ。ただし、現実だと美雪君みたいなタイプは復讐がなくなると自殺しちゃうから、対象を撃滅しても生きている事にして生涯それを生き甲斐にさせてる方が良かったりするんだけどね」
飲み干したグラスを横にワイングラスを取り出すとシェリーのボトルを開けるバッカス。
そして続けた。
「ガニエというマッドサイエンティスをロボット君はどう思う?」
「非人道的ゆえに僕は認められないですね」
「うんうん。まぁね。ただし文明の科学の前進にはこれくらいぶっ飛んだ実験をしないと進まないのも確かなんだけどね。この科学者、驚く程に頭は悪いよね? というか目的と手段が入れ替わるの典型かな? 形のない物、生物だったら人間使わなくてもいくらでもやれると思わないかな? それも結果作ったのは人間爆弾とサイボーグ戦士だよ!」
これは当方でもガニエどうした!
とミーティングで話題になった。マシンヘッド・カレイドスコープを作る人物がいる中、何故彼はこんな茨の道を行くのか、しかも人間を使った物に拘る技術者思考でありながら、不破攻略はなんでもありの爆殺、不破要の破壊方法が嫌いなんじゃなくて不破要という人間が嫌いなだけだろうとしか思えない。
そして、絶対不破要殺すマンである天才科学者ガニエ氏が生み出した最強サイボーグ・ファウスト。
「このサイボーグは、僕の天敵ですね! 人間である以上、僕は戦う事すらできません……けど、他のアーセナルの方々なら瞬殺ですね!」
という事なのだ。
クソみたいな悪党だったガニエ氏、たった一人の能力者を超えたいが為の猪突猛進な研究の末に生み出した物が彼の理念そのもののようなサイボーグであった事、そしてその最終兵器によって自らの命に幕を閉じた彼……バッカスさんがこの章をこう例えた。
「人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまえって! 事かな? 不破君、そこは責任を取るところだと私は思うけどな……さてロボット君。何か飲むかい? もちろん、酒場だよ。お酒をね」
嗜好品としてのお酒、酔うと言う感覚は生涯分からない為、好んで呑む事はないが、確かにバーに来たのだ。お酒を飲むべきだろうとクオンは一つカクテルを頼んでみた。
「では、僕を作ったメイカーが好きだったエナジードリンクを使ったカクテルを」
ふむとバッカスは考え、缶の酎ハイ・ストロングゼロとモンスターエナジーを取り出した。ジョッキにロックアイスとそれらを雑に注いでクオンに差し出す。
「はい、確か名前は……ブルーアイズ・アルティメットドラゴン」
「なんか、メイカーが好きそうな名前です。いただきます。うわっ、凄い味ですね。独特な味というか、強いて言えばまずいですね」
「まぁ、アーセナルのみんなにはちょうどいいかもね」
「と、言いますと?」
バッカスは無表情だったのに初めて悪戯っぽく笑った。
そしてクオンのジョッキにグラスをコンと合わせてからこう言った。
「みーんなアオハルだから! それくらい飲めばみんな自分に正直になるんじゃない? じゃあ聞くよ? ロボット君、君に欠けている物は?」
「僕に欠けている物は、武装解除された内部兵器ですね。あと帝都陥落時に失われた設計図あたりでしょうか?」
「そういうとこ! そういうのがダメだね! 大体答えがあってないような物に迷うとかした方がいいよロボット君! じゃないとこの章は楽しめないよ。じゃあさ、不良のバイクの修理費についてはどう思う?」
「妥当なラインではないでしょうか? もし、塗装剥げだとすればそれ以上かかりますし、保険適用しても自損自己扱いなので、保険料を使っても半額は出さないといけませんし、来年の保険料は上がるのでむしろ良心的かと……」
「そういうとこ! そういうとこね! ロボット君はある意味、全ての作家の天敵になりえるね。まぁ、この場合は50万くらいふっかけて表現されてた方がよかったかもしれないけどね」
まぁ、珍しく指摘をしよう。
この暴走族グループ、びっくりするくらい優しいのである。逆に言えば素っ裸にしなければ彼らは警察に捕まる事は何もしていないインテリ暴走族でもある。本章はそんな暴走族の単車にボールをぶつけた不幸な少年とその一家、そして彼らに手を差し伸べる事で白神氏が成長するという流れである。
彼はどちらかと言えば実戦部隊ではないので、徒手格闘の訓練をしても中々スランプに陥っているというそんな導入からだった。
「本作は外伝的な物を伏線回収や、本編内で分かり易いように時間を割いて作ってあるんだろうね。一般人とはいえ五十人僕殺とか、白神君、相当強いね」
「殺してはいませんけどね。通報したんでしょうか? したら、白神さん過剰防衛と暴力行為処罰受けますからね。ではバッカスさん的にこの章は?」
バッカスはふむと空になったグラスにシェリーを注ぐ。
「正義の味方! かな? じゃあ当店の閉店間近だけど、この温泉回、水着回のような時期限定の花火回の話を最後にしようか? 実際読んでも読まなくても本編にはあまり差し支えないタイプのお話だね」
「センダイシティのお話ですね!」
「そうだね! 北海道と沖縄から五百台ずつ車が進んだ先で合流した場所を仙台って名付けたのさ」
「へぇ、そうなんですね。トウホク・チホウ、屈指の栄えた街だと聞いたので一度行ってみたいですね!」
「ごめん、ロボット君。さっきの嘘。後、やめてあげて。うん、仙台はいいところだと思うけどね。花火回の話しよ! 外伝二回目ってところかな? しかし、警察組織と連携とかできんのかねこの組織は」
バッカスはついには空になったシェリーの瓶をしまうと、次はテキーラーのボトルに口付けした。
クオンは明らかに彼女の反応がおかしい事に気づき始める。
「酔ってますか?」
「酔ってませんよ」
判断・酔っていないという人は大体酔っている。
「今回は、ドライブ能力者が犯罪者として出てくるんですね。そして作品のキャラクターの事がここまでくると大体分かるから読めるオマケ要素のお話ですね。うん、花火大会中止をなんとか阻止しようと奮闘する物語に隠されたもう一つのストーリー展開って完全に外伝的扱いですし、ここで持ってくるのは誰が誰なのか納得できるので読みやすいです。しかしバッカスさん、今回僕に選んでここまで一緒に読んだのは全部ラブストーリーですか?」
クオンが流石に気付いてそう言うとショットグラスでテキーラーを楽しんでいるバッカスは赤い顔でじとりと見る。
そしてバレッタを外すと長い桃色の髪がばさりとなびく。
「バッカス? だりそれ? アタシはーだーん! たーりー! あーん! そうそ、君には永遠にわかりゃない……愛についてだよ。クオン」
愛か、確かに愛という概念は分かるが自分には永遠に課題となりそうな心のあり方だと、手元の口当たりが最低なカクテルを飲み干して目を開ける。
「まぁ……そうでしょうね。そうだと思ってました」
バスの中、次はどんなところなのか、逆に楽しみですらある。
そして鼻歌まじりにクオンはバスを降りた。
『machine head 著・伊勢周』作品の核心も興味深いですが、各キャラクターの恋愛相関も実に興味深いとは思い今回は恋愛要素いっぱいの部分を特に紹介してみました。恋愛という感情は人間のみに存在する物でしょうし、それゆえに人間は恋愛に関することが好きで、時には毒にもなり、時には生きる糧ともなるんでしょう。
いよいよ紹介も終盤に入りましたが、皆さんはどう楽しまれているでしょうか? 今月も残り1/3となりますが、まだ頭から最後まで読めると思いますよ!




