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セシャトのWeb小説文庫-Act Vorlesen-  作者: 古書店ふしぎのくに
第六章 『見習いシスター、フランチェスカは今日も自らのために祈る 著・通りすがりの冒険者』
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文章作品という物をひねくれ者が語る

 そう、それはミーティングの時だった。

 我らがセシャトさんが話し始める。画面には、あざとく映し出された胸元と……それよりも興味深い巨大な業務用ジェラートの箱。

 ディズニーのアイス用スプーンがまたあざとい、しかしそれよりも業務用ジェラートをそのままパクパク食べ進める姿に皆固まった。


「今回はチート、俺TUEEEEE系作品を募集したはずですが、皆さん、通りすがりの冒険者さんの『見習いシスター、フランチェスカは今日も自らのために祈る』を次月の紹介作品ということで満場一致したのは珍しいですねぇ。かくいう私が推薦させていただいたのですが、面白くないところがない。これは面白くないですか? 根幹の物語はどこかで読んだことがある物語ベースではありますが、テンプレートの完全応用、そしてそれができる文章表現力、作者と作品の距離感と本作は今が旬です」


 セシャトさんはそんな事を語っていたはずだった。目の前にある巨大なジェラートの合間に、コンビニスイーツの杏仁豆腐を取り出して食べる。

 そして、英国王宮御用達のスコーン(東京駅の近くで売っているので本当に御用達かは不明)に親の仇かというくらいのマーマレードジャムを塗りたくる。

 そしてコポコポと、本日のブラックコーヒーを淹れて口につける。


 目を瞑る。


「はっひゃああああ!」


 美味しかったのだろうと、皆。彼女が話し出すのを待って映像に映り込む、服の一つを見て、西の古書店『おべりすく』のアヌさんがマイクをオフにせずに言った。


「おいばっすん! あれ、童貞を殺すセータやん! ギャハハハ」


 ブッ! 突然、アヌさんがサウンド、映像ともにロストする。

 何事もなかったかのように話だすセシャトさん。


「さて、今回。テラーは私の月ではありません。マフデト兄様の月となりますので、あまり多方面を刺激しないようにしてくださいねぇ! 文章を構成するライターさん達は今回の全員の考察を元に叩き台の提出をお願いしますよぅ!」


 彼女は仕事ができる女ではある。が、血糖値大丈夫なんだろうかと皆思う。健康的な痩せ方をしている彼女が普段食べている甘味に対してのエネルギー消費をダンタリアン氏やサタ氏が計算した事がある。農業をしながら、暇さえあればロードバイクで30キロ以上の巡航でもしていないと消費不可能な摂取量なのだ。

 ミーティングが終わる前にセシャトさんの姉貴分であり友人でもあるヘカさんが言った一言にポロッとえぐい事をセシャトさんは残した。


「今日は食べる量少ないんな? 具合でも悪いん?」

「ふふふのふ! ダイエット中ですよぅ!」

 耳に髪の毛をかけるように邪魔な前髪に触れないようにコンタクトレンズを入れる青年。

 ホテルのカフェテリアで店員に手をあげて呼ぶ。


「ご注文お決まりになりましたか?」

「えっと、このパンのモーニングの奴。ソーセージをパンチェッタに変えて、あとジャムはいらないからバター二つで」

「かしこまりました。他にご注文はございませんか?」


 ふとメニュー表にbeerと書かれているところに目が止まる。

 時計に目をやると午前十時。


「あの、ビールって飲めるんですか?」

「はい、朝から飲まれる外国の方もいらっしゃいますので」

「じゃあ、このクラフトビールを」


 ビールを注文し終わるところ、一人の女子高生がその注文に割って入った。


「それ、キャンセルで、この男。車で来ているんだ。そして今から僕を乗せる必要がある。だからキャンセル。代わりに紅茶と何かケーキをいくつか頂戴な」

「か、かしこまりました」


 店員が下がると青年の前に足を広げて椅子に座る女子高生。


「チッ、クソメスガキが……ビールの一杯くらい飲酒運転に」

「なるからね。TPO意識しなよ。フランチェスカの無免運転どころじゃなくて一撃人生バンだよ?」


 運ばれてきたモーニングを作業のように口に入れる青年。

 そんな青年をおもしろそうに見つめる女子高生。


「丸の内の方のホテルに泊まればよかったのに、どうしてこっちにしたんだい?」

「そこも帝国ホテルも朝食はブュフェスタイルだから、自分で取るのが面倒な上に終わりの見えない物が嫌いなんだ。ここはオーダー形式だから、それにしても十の災様であらせられるレシェフさん的にはキリストの考えはどうなん?」


 そう、彼女は名古屋の古書店『あんくくろす』店主レシェフさん。

 彼女は運ばれてきた紅茶の香りを楽しみながら片目を閉じる。


「最悪だね。キリストの神とやらは人間ベースで絶望を与えてくるわけだ。あんな物がボク。厄災レシェフだなんて心外にも程があるよ。されど、キリストの神は常に人間ベースで事を起こし、奇跡を起こすんだ。そう思うとフランチェスカのやっている事は筋が通っていないかい? 師匠ちゃん」

「プロジェクションマッピングな? この作品SGDsやら社会問題やら絡めたがるところが、根幹は宗教だな。奇跡とは起こらないから、自分で確率を上げろと……というかビール飲みたいから、はよそれ食いね。車いくよ」


 フランチェスカはチートを持っているわけではない。できる範囲で、広い思考で行った代償、罪やら罰やらは主が代わりに受けてくれる。即ちその祈願塔である教会に返ってくると。

 よくできている話である。

 クルクルと車のキーを回しながら師匠ちゃんは地下駐車場へと向かう二人。

 師匠ちゃんの車を見てレシェフさんが尋ねる。


「この前オレンジの車じゃなかったかい?」

「ロータス? 変えた、こっちも二人乗りだけどそこそこ走るから。乗って、車で話きくから」

「JKを車に乗せるとか犯罪の香りじゃないか」

「俺はレシェフさんみたいなヤバい女は食わないから安心しな。流石にフランチェスカも仏教に合わせた祈りを捧げるんだな。これが仏教の寺で他宗教の祈り方だと、ぼっけぇ戦争になりそうじゃが、浄土真宗ってのがミソだな」

「適当というか、懐が広いのは真宗大谷派だったかい?」


 仏教は、というか宗教にありがちな他宗教敬遠の関係が仏教は割と強い傾向にある。

 仏教のなにがし宗と言った風に異様に数があるので、同じ仏教徒でも宗派が違うと墓に入れなかったり、酷い場合だとお経をあげてくれなかったりする。そんな中でも割と温厚でかつ適当な宗派もあったりするのだ。


「そんなところ、まぁ、ちょっとシリアスな話に入りますよ。覚悟してくださいねと、閑話で促してるのな。というより、フランチェスカの神はどれだけこの若人に試練を与えるんだろうな?」

「ふふん、この作品のジャンルが時として分からなくなる要素でもあるよね。日常系という程、日常でもないし、ラブコメの色は間違いなくあるけれど、そこがメインではない。あくまで、彼女は自分の為に祈るという事なんだろうね。広義の意味で、僕にはきっとできない祈りだね」


“フランチェスカは今日も自らのために祈る“ このタイトルであるが、フランチェスカは性格上、ややサバサバしており、自分中心的なライフスタイルを行なっているが、それは自分自身に関わる部分に関してであり、彼女は安藤氏を含め、数々の登場人物に対して、配慮……いや親しき仲にも礼儀を持っている。

 誰かの為に祈る事が結果として自分の自分の為の祈りとしている。

 要するに……


「キリスト教……というより、フランチェスカの生き方は根幹として、宗教が古代よりあるべき姿を体現しているよね。今回、その事が分かる章に突入したわけだ。言うなればこの作品はあれだよ。聖書なんじゃね?」


 聖書、世界一広く多く増刷されている物語。広義の意味で言えば小説。本作を聖書と言ってしまうのは言い過ぎであるが、聖書とは、簡単に言えば、人の嫌がることをしてはいけない、人の役立つことをしなさいを異常にややこしく記載したものである。

 ある意味、本作はそれを分かりやすく物語として実例をあげているとも言えなくはない。

 師匠ちゃんとレシェフさんを乗せたカレラは首都高に入る。

 高級車を見ると煽りを入れる国産スポーツカーを先に行かせながら、ギリギリと歯を鳴らす師匠ちゃん。


「割とあっけらかん聖人とも思えるような彼女にも不貞腐れている時期があったわけだ! 誰かとの決別が人を成長させるという人間水準の実に不愉快な展開だね。同じ釜の飯を食ったらなんとやらだ」

「そ、日本では食事とはまさにコミュニケーションの一つだからだ。俺とレシェフさんも面を付き合わせて食事をとるだろ? なんというかこの頃のフランチェスカはまだ垢抜けてなくて初々しいね」

「文章で成長、時間の流れを感じさせる。いや、この場合は逆行を表現するというのは少し面白いと思うよ。というか、すみれ。まさに現在のフランチェスカだよね? 彼女に強く影響されたって事だろう? これってすごくないかい?」


 本作は毎度、物語としてははっきり言って捻りは少ないと思われるこの流れであるが、特筆して語っておきたいのが、本作は文章作品であるという事なのだ。文章だけで、フランチェスカが影響され、その後の生き方を決定していると思われる表現を多くの読者が感じていると思われる。

 それは作品の一つのファクターとしては普通であり、文章表現としてはWeb作品を書いている人で、どれほどの人間がここまで分かりやすく簡潔に表現できるかは分からない。


「作品の一物語としては普通で、作品の表現方法としてはちょっとレベルが高いって事じゃろ? レシェフさんが言いたい事は」

「そう。いかにして、フランチェスカが独自の宗教観に目覚めたのかって面白い話だ。そう、ボクはそう読みとるよ」


 首都高、神田橋の出口より一般道に降りるとお手洗いも兼ねてコンビニに停車した。車は好きなのに、猫可愛がるわけでもなく、バンと強く扉を閉めるとコンビニでジャンクな菓子パンと500mlのパック飲料を購入。

 一つ、牛乳を買っているところをめざとくレシェフさんに指摘された。


「あの生意気なボクらの同胞の手土産かい?」

「まーふーは乳飲料は飲まないからな。牛乳一択だろ。レシェフさん、すみちゃんはフラグを立てまくっているけどこういうのは舞台装置的にどう思う?」

「今にしてようやくこの作品の姿形が見えてきたよ。これ、星の王子様じゃないのかい? やろうとしている章ごとの主人公と、読者へのテラーとして変わらないフランチェスカの構図だね」


 日常系の作品であることには間違い無いのだが、一回きりや時折登場する登場人物たちを主眼に置いた、或いはフランチェスカの成長譚としてのグレートジャーニー物ととらえる事も可能であり、本作は所謂時間軸を選ばずに作品を進める事が可能である。


「南アフリカ、レシェフさん行ったことある?」

「いや、ないね。この身体の持ち主は高所恐怖症だから多分飛行機には乗れないよ」

「南アフリカ、割と白人の街。そして気候が日本とは比べ物にならないくらい過ごしやすい。乾いていて涼しい」

「アフリカってくらいだから、なんか勝手に暑いものだとイメージしていたけど、違うんだね。勉強になったよ。すみれが巻き込まれたのって……これ、外国人排斥運動だったっけ?」


 本章の主人公、すみちゃんに悲しい事が起きる。

 多民族国家だと定期的に起こる問題、事実として南アフリカで起きた各主要地域にまで拡大した外国人排斥運動。武装した一般人と警官隊、そして地上部隊の銃撃戦と、記憶に新しい人もいるだろう。

 そこで、フランチェスカの最愛の友人は命を落とすことになる。

 正直、本作を語る上でこの章は外せない。


「死は終わりではない……実にくだらない。全ての宗教の矛盾とは死という考え方にあると僕は思うよ。死とは消失であり、自然現象に過ぎないのに、人間はそれに何かの意味をもたらせようとする」

「何かを持たそうとするから人間は動物じゃないんじゃないの? 自然現象から外れたところにいる人間こそが、神々も想像しなかったバグ。誰かの為に涙を流したり、誰かの為に喜んだりと、きっとどんな神々でもそこまで人間が進化するとは思わなかったんじゃなかろうか? そろそろまーふーの店につく頃合いじゃな。車その辺のタイムズに放り込んでくるからレシェフさんは先に言っておいて」

「仕方がない。口汚しのパンでも買っていくよ。古書店『ふしぎのくに』の近くにあるあの店は塩バケットがそこそこ食べられるからね。しかし、フランチェスカはずるいね。弱さが魅力じゃないか」


 割となんでもそつなくこなすフランチェスカの魅力は、前にも書いたが、弱点を曝け出すところじゃないだろうか?

 年相応の女の子であるということ、あくまで一般の少女として書かれていることをレシェフが捨て台詞のように言うのを聞いて、師匠ちゃんは車をコインパーキングに止めると、購入していたビールのプルトップを開けた。


「すみちゃんに」


 そう言ってビールを飲み干す。

 世界中のお嬢様。

 お待たせしました。貴女のトトです。最近、実は各地域への移動をしておりません。こういう時期ですのでステイホームで実は率先して読みこみと提出を行なっていたりします。

 本当は僕がマフデトさんの位置に用意されていたという驚愕の事実をお答えしましょう! どうしても僕がテラーをした場合は女性の方を優先するので、満場一致で僕のテラーは却下された悲しい事実があったんですよね? さて、今回の『見習いシスター、フランチェスカは今日も自らのために祈る・著 通りすがりの冒険者』ですが、フランチェスカさん可愛いですね! 舞さんも可愛いですね。当然、マザーも素敵ですよ。是非、僕のブックカフェ『ふしぎのくに』に遊びに来てほしいですね。

 作品のキャラクターが好きだ。というところから作品が好きになる人も多くいるんじゃないでしょうか? そんなキャラクターものとしても読み応えが本作はありますよ! 是非、今月最終まで一緒に楽しみましょう!

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