中学生達の読み方と、ふしぎのくにの魔女登場
私の執筆時間がどんどん削られていくのですよ。ちょっと、このふしぎのくに、どうなってるんです?
お茶会だ、ランチミーティングだっていろんなところに連れ回しやがり下さって……私もそんなに暇じゃねーんですよ! それなのに、他作品の読み込みもしてるんですよ! セシャト姉様はこんな事を三年間も延々と……やべーのですよ!
中学において、倉田秋文は同じクラスの知的な少年・一二三にどうしても話したい事があった。
「一二三くん、あけましておめでとう」
「あけましておめでとう秋文君。今年もよろしくお願いします」
お互いに頭を下げ合う二人の少年。年末に少し太ったとか、シャンプー変えた? とかそんな話の後にお互いおすすめのWeb小説を話し合う。二人の至福のひと時話しかけづらい雰囲気を出しているので、彼ら二人に話しかけたい女子はただ二人を見つめるだけ……
「古書店『ふしぎのくに』なんだけどね?」
「またセシャトさん? 秋文くん。そろそろ告白したら?」
いきなりの事に秋文は顔を真っ赤にする。そしてセシャトの話をしようとしたわけじゃないことを言って話を戻した。
「じゃなくて、今。古書店『ふしぎのくに』マフデトくんって男の子が店主代理なんだ。そのマフデト君に教わったお話『隻眼隻腕の魔女と少年・麻酔』。面白いんだ」
「へぇ、それはとても興味深いけど、とりあえう授業が終わってから、ね?」
一二三は手帳を秋文の額にトンとつけておあずけされる。仕方がないので秋文は一人で一二三と話をする為の情報をまとめておこうかなと、理科の授業を聞きながらながらで考える。
「カンザキさんのクローン、フェーレンさん……でもこの娘はなぜか魔法が使えない……」
秋文は悶々と若らないまま放課後を待った。そこは学園内のカフェ。そこでアイスコーヒーを前に一二三と……もう一人、巻毛の美少女。
「そうだね……これは推測の域になるけれど、遺伝子レベルで同じ生物を作る事は僕らの世界でも可能だよ。だけれど、センスやスキルが継承できるか……はその個人の経験によるところなんじゃないかな? あるいは、魔法という物を使える条件が違うとかね」
一二三の考察に秋文はなるほどなぁと思っていると、同席している巻毛の美少女。
「私はもう一つ考える事があるわよ」
「アリアちゃんも?」
棚田アリア。中学生になった彼女は学校の男子達だけでなく周囲の高校生からも嫌になる程告白をされる日々にいつもイラだつ日々を送っていた。イギリスの女学校から編入し、日本の私立中学に戻ってきた重工棚田の姫。
「このカンザキさんのクローン、フェーレン。そしてこの作品。ドイツ名が多いわよね? 作中では足りない物として書かれているフェーレンはファーレンの訛り、エアファーレンの略語だとすれば?」
秋文は何を言っているのか全然分からない。一、中学生は英語だってマスターしてはないのんだ。なのに、この一二三とアリアは主要言語四ヵ国語だけでなく、ラテン語やフィンランド語まで精通している。
「あー。なるほど。さすがはアリアお嬢様だ」
「そのアリアお嬢様っていうのやめてくれない? 一二三君。まぁいいわ。ファーレンなら経験とかそんな意味があるの。要するに試作品よ。この子は私と同じで」
「えっ?」「アリアちゃん」
「なんでもないわ」
そう言って上品にレモンティーを飲む。アリアについては詳しくは去年以前の紹介小説を参照。
「実際魔法を使えないフェーレンに対して、カンザキと戦わせる事で実験をしている。やはり試験体として使われてますね」
アリアと一二三がお互いの考えの答え合わせをして笑い合っている中、秋文だけが聞き手に回っている。この二人は頭が良すぎるので、悔しいというよりは感心してしまうのだ。
「ねぇ、二人に聞きたいんだけどカンザキさんのクローンっていつ作られたのかな?」
秋文は一般的な読者である。欠損しているカンザキの体から遺伝情報を手に入れて作ったのか? という疑問を持っていたが、やはりと言うべきかこの二人は違った。
「秋文君、僕もこれに関しては少し疑問に思うんだ。カンザキの過去が分からない以上何があったかは明言されていないからね……」
おや? と秋文は思う。そしてアリアは少しばかり恥ずかしそうに俯きながら、
「えぇ、これに関してはいくつか考えられるわね。カンザキが、研究者だったか……その……何か大人の……」
「ん?」
そう、これは完全に一二三少年とアリアの暴走である。ほぼ間違いなく秋文の想像通り欠損した腕か瞳を使っているのだろう……だが二人は違う。そんな二人の代わりに第三者が答える。
「クローンは卵子より作られるのが一般的なんすよ! 少年少女。未来の研究者の卵の邪魔をするつもりはないっすけど、君たちはこれはクローンではなく、ホムンクルスじゃないすか? と言いたいのかもしれないが、君たちが読んでいる作品。ちゃんと書いてあるっすよ、同じ遺伝子情報と構造だってね。よってクローンだね。以上。そろそろ暗くなるから早く帰りなさいね?」
理科系の非常勤としてやってきた。欄先生。
三人は帰るように促されたので、続きはファミレスという事になった。秋文は親に晩御飯はいらないと連絡し、三人で入ったファミレス。
「……秋文君と、一二三君と、アリア……お嬢様」
三人を出迎えたのは、神保町においてあらゆる場所でバイトをしているバイト戦士・木人。
「ちょっと、木人さん。お嬢様はやめて」
木人と重工棚田の関係は去年以前の以下略。
三人はフリードリンクとフードメニューを選ぶと続きを語る。
「欄先生はあー言っていたけど、一緒にいるフードの男。これらが完全いホムンクルスなんだよね。これは某作品の対・ドラゴン種族用の生物や、コピーホムンクルスそのものじゃないかと」
三人はフリードリンクのドンペリと言われた人工的なメロン味。蛍光グリーンのメロンソーダーを前に読み合いを再開。
「魔女・カンザキはそもそもが大魔女である示唆はされていたけれど、どうやら魔法の根源的な物を扱えるらしい。さて、リンフは魔法を使えるようになるという事は彼そのものの本質が変わる事なんだろうか?」
喚起という単語。それを三人は考える。言葉通り呼び起こす事。喚起。その言葉は……
「何を呼び起こすのか……という事でしょう? 自らの生まれ持った何かを呼び起こすのか、それとも自然信仰らしく何か力の根源のようなものを呼び起こすのか……魔女というのであれば後者であると少しだけ期待してしまわない?」
秋文は小学生の頃から何度となくこのアリアとは話をしてきたが、さすがは同じく古書店『ふしぎのくに』に通っていただけはある。
「僕は、喚起は継承という方式だとちょっと熱いなって思っちゃうよ。リンフ君は人間だから、魔法を使うためにはカンザキさんからそういう力の継承をうける必要があるんだ。それを喚起……とか?」
よくある展開。よくある設定。されど、継承物は古来から現在に至るまで存在している。
「秋文くんはファンタジーの中でも少年向きの作品が好きなんだね! でもそれじゃあ秋文くんの好きなカンザキさん、死亡フラグ立てちゃいますよ。でも残念。リンフ君はどうやら魔法資質を持っているんだって、僕らのこの議論は無駄に終わった……とは思わないのが秋文君にアリアお嬢様だよね?」
「一二三さん、次お嬢っていったらお兄様に言いつけて一二三さんのお父様との取引やめさせるわよ!」
そんな脅しには屈しない一二三少年。アリアの事を面白い物でも見つめるようにふふんと笑う。
「アリアちゃん、君の聡明なお兄様は僕ら子供の遊びに関わる程暇じゃないでしょ? もちろん、僕のお父さんもね。おっと、そろそろ僕らティーンの時間が終わりそうだね」
十八時半。店員に注意される前に三人は各々の家へと帰路につく。秋文は山手線に乗り自宅へと帰ろうとした時、そこには原宿帰りの一人の少女と出会った。
「あっ、秋文君なんな! あけましておめでとうなんな!」
「ヘカさん、こんばんわ! あけましておめでとうございます!」
「つーん!」
ヘカが秋文を睨みつける。秋文はヘカの身長を越え、なんならヘカの方が妹のように見える。
「えっと……えっと……え? ヘカさん」
「つーん! ヘカはトトさんとセシャトさんのお姉ちゃんなんよ? じゃあ秋文君はなんて言うのが正解なん? 少し考えればわかるんよ!」
ヘカは精神的マウントをとりたがるのである。やや幼く見える事で秋文はヘカをどうしても同い年くらいの扱いをしてしまう。
「えっと、ヘカお姉ちゃん」
ヘカはその呼ばれ方をして腕を組むとうんうんと頷く。そして秋文のiPadを見て語り始める。
「ふむ。秋文君。『隻眼隻腕の魔女と少年・麻酔』を読んでるんな? ヘカが書く作品程じゃないけど。とぉーっても面白いん! ヘカ程じゃないんよ?」
ヘカが自分の方が凄い作品を書くと言う時はそれだけ面白く、素晴らしい作品であると言う事なのだ。
「そういえば、ヘカさんってちょっと魔女っぽいですよね?」
ヘカは寝不足の大きな隈、そして虚な瞳で秋文を見つめる。ヘカは神様が生み出した存在の中で唯一のイレギュラー黒髪に白い肌。そしてゴスロリにぱっつんのおかっぱときた。とんがり帽子に杖でも持たせればまさに魔女。
「ヘカは魔女じゃないん! ヘカなんな!」
「じゃあ、ヘカさんは魔女について詳しくないんですか?」
ヘカは見栄っ張りであり、自信過剰であり、そして作品を執筆者として読みこむ事ができる古書店『ふしぎのくに』自称エースのヘカ。
「詳しいん! 詳しすぎるん! ヘカ以上に魔女を知る者はいないん! ヘカは最後の魔女のファミリア……まぁこの話はどうでもいいん。ちょっと秋文君、少し古書店『ふしぎのくに』に寄っていくん! ヘカの舎弟・マフデトを紹介するん!」
「あっ! マフデト君ならもう会いましたよ。それに僕もう家に帰らないといけないので、ヘカさん、また今度お話ししましょう!」
ヘカは「それは仕方がないんな」と呟くと、秋文に手を振って別れる。そしてヘカはようやくそこで思い出した。
「ヘカお姉ちゃんなん! 秋文君はリンフみたいにヘカの事をカンザキみたいに敬うん!」
『隻眼隻腕の魔女と少年・麻酔』1月ももう半分おわったのですよ!皆さんは本作を読み終えたのですか?
私ですか? も7ループ目なんですよ! 紹介小説はある意味、そんなところ気にする? と言うところまで掘り下げていくのですよ。まぁ……私もふしぎのくにに参加して、やべー奴らの溜まり場だって知ったんですけどね……




