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セシャトのWeb小説文庫-Act Vorlesen-  作者: 古書店ふしぎのくに
第六章 『見習いシスター、フランチェスカは今日も自らのために祈る 著・通りすがりの冒険者』
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親しみのあるキャラクター性とは

 神はいるのか?

 神はいないと彼は言った。翌日に彼は神はいると言った。


 どっちなんだ?


 世界が明日終わるとしたらどうしたい? なんでもできる彼はこう答えた。

 

 みんなで昔話でもしたいな。


 彼のおかげで、人よりも多くの創作物に触れ、彼のおかげで人よりも多くの知性や価値観を知った。

 多分、彼はこんな作品が好きだったろう。子供の頃に描いた、夢物語のような楽しいやつら、今回は俺TUEEEEEEを募集したんだぜ? なぁ、あんたも読んでるか?


 きっとあんたは、最後まで読み終えて、こう言ってるんだろうな?


「続きはもうないのか?」


 数十年待っててくれよな? またシステム部の連中と、酒盛りしようぜ、ポールジロー、一番いいやつ持っていくからさ


 フランチェスカさん、彼の魂と願わくば俺たちがまた会えるように導いてください。


 キリエ、エレイソン。

「マフデトさんいらっしゃいでありんす」

「こんにちはわ! なのですよ汐緒兄様」

「姐様でもいいでありんすよ?」


 そう、ブックカフェ『ふしぎのくに』店長代理の汐緒が淹れるアイスフルーツティーをご馳走にマフデトはやってきた。


「何か読むでありんすか?」


 何か飲むではない、というかもうマフデトはフルーツティーを飲んでいる。そう、ブックカフェ『ふしぎのくに』は美味しいお茶とお茶菓子と共に、Web小説を楽しむ場である。マフデトやセシャトさんが店主をする古書店『ふしぎのくに』の系列店で一番の売り上げを叩き出す。


「なんかスカっとする作品のオススメはねーのですか? 汐緒兄様や大友みたいなど素人じゃなくて、トト兄様がオススメの作品がいいのですよ!」


 マフデトさんは古書店『ふしぎのくに』の店主である。店長代理である汐緒を相手にど素人と啖呵を切った。

 汐緒としては愛するオーナーであるトトの可愛い弟分のマフデトであるが……流石に怒りで頭が沸騰しそうだった。店長代理として数年、四桁以上のWeb小説は読んできたのだ。

 そこで笑顔を引き攣らせながら一作を提示する。


「そ、そう言わずに、今月の当店のおすすめ作品を読んでもらいたいでありんすな! 手元のiPadを見てほしいかや! もし面白くなければ、なんでも言う事を聞くでありんすよ」

「はん、なら私もクソおもしれぇと思えばなんでも言う事聞いてやるのです!」


 マフデトはiPadに触れると表示されている作品に目を通した。


「あぁ『見習いシスター、フランチェスカは今日も自らのために祈る 著・通りすがりの冒険者』なのですね。まぁいいのですよ。これを読むのです。それにしてもザビエルってスペイン人だったのですか? フランス人だと思ってたのですよ」


 さっと汐緒はレモン薫るレアチーズケーキをそっと置く。

 ストローでズルズルと音を立てるマフデトに汐緒はうんちくを語った。


「まぁ、難しい話でありんすな。ポルトガルのイエスズ会から派遣されてこの日本にやってきているのですが、一応エスパニア、今でいうスペイン人というのがほぼ確定なのかや。ただし、生まれの国がフランス領なのか、スペイン領なのか微妙なところなのでたまにマフデトさんと同じ疑問に陥る人がいるのでありんす。ちなみに、本作の主人公の一人であるフランチェスカの名前はイタリア語源かや。ここは語呂の良さを選択したんでありんすね! まぁ、あちきはこの生臭シスター、嫌いじゃなんし。ある意味の真理でありんすな?」


 汐緒は自分が飲む抹茶ラテを淹れると一息ついて、抹茶ラテのラム酒を入れてゆっくりと飲む。


「汐緒兄様、その心は?」

「実際にザビエルの末裔は一人、日本で生活している人がいるかや、その事実を持ってして、ザビエルは子孫を残していた事になるでありんす。一応あのカッパ野郎は男子修道院、イエスズ会なのです……独身守ってないでありんす。まぁ日本に来た時もスパイ活動みたいな事してなんし、その末裔であるフランチェスカが不良シスターってのも頷けるでありんす」

「一応、教会って治外法権みてーなところあるのですよね。本来、神の巫女として規律正しく、不浄が認められないシスターは日本でも当然、実際に海外でも萌の体現者なのです。そんなシスターがヤンチャだったり、罰当たりそうなギャップ萌の造形は時代を選ばずに好まれるタイプのキャラクターなのですよ」


 フランチェスカの可愛らしいところは、小悪魔的ではなく小悪党的な思考回路を持っているところである。

 そして、Wi-Fiを教会設備に導入しようという考えは案外間違っていない。昨今の教会は礼拝堂の撮影などは当然NGだが、実際にWi-Fi完備されているところが数多くある。


「神という存在は己の中にあるというかや! そういう意味ではフランチェスカの行っている事はまさに布教活動なのでありんすよ。それが、どう考えも宗教的思考でないところ、ドタバタ系のギャグとして掴みも上々でありんすな?」


 そう、このフランチェスカに似ているキャラクター、一名あげるとすれば? 

 という質問を当方、古書店『ふしぎのくに』ミーティングにて質問をしたところ、ブラックラグーンのエダという完全な不良シスターが上がるかと予測されていたが、思いの外、というか、言われてみれば似ているというキャラクターが一名いた。


「汐緒兄様、フランチェスカ、属性が完全にこち亀の両津勘吉なのですよ!」


 そう! 案外なんでもできてだらしなく、街の人々からの覚えもいい。ある意味国民的キャラクター、両さん的な面白さが彼女から伝わる。

 強烈なキャラクター性というものがいかに作品にとって大事かを感じさせてくれる。


「おや? マフデトさん、面白いことを言うでありんすな? その心は?」

「両津勘吉はクソお巡りなのですよ。でも職務は全うしてるのです。それと同じで、やり方や考え方はどうあれ、フランチェスカは人々を愉し、導く教会の職務を全うしているのです」


 例えば、これが本当に不良シスターとして見た目以外は聖職者でなければ彼女はシスターとは言い難い。

 シスターにはならないと言っている割に彼女は実のところ真っ当な聖職者である。


「しかし、フランチェスカのやつ、寝るの早すぎやしねーですか?」


 本作の通りすがりの冒険者さんの作風としてなんでもない日常、のような空気感の演出が実に巧みである。

 当然、主役の一人であるフランチェスカを作者として愛で、気に入っているであろうが、所謂うちの子という猫可愛がりせずに作者と作品内キャラクターとの距離感を保っている。

 故に最初のエクストラ、閑話の最後の一文は読ませてくれる。


 さて、話はマフデトさんの疑問に戻る。


「マフデトさん、実はフランチェスカのお嬢さん、三十分ほど夜更かしでありんすよ?」


 片目を瞑りウィンクする汐緒。マフデトはもったいぶるなという目でじとりと見つめるので、汐緒は冷蔵庫から一本のボトルを取り出し、ボトルクーラーに氷を重ねながら語る。


「日本の子供は寝るの遅すぎるかや、実は海外の不良でも二十二時には寝るでありんすよ? 海外の人々が陽気で幸福度が高いのは早寝のおかげでありんすな! フランチェスカつよい子、元気な子。でありんす」


 本作を読み進め大抵感じる部分として、気がつけば話数を重ねている点ではないだろうか? 

 フランチェスカのコミカルさと、彼女は作中で割と欠点を晒す。それが実に生き生きと、動かされているキャラクターではなく錯覚する。コミック要素が強く、読みやすく、飽きさせない。本作はラノベとしての完成度は極めて高いと言える。


「これ、携帯小説の流れを持ってるのですね。私もあまり読んだ事はねーのですけど……読み足りないを、飽きさせる前に続きを読ませにきてやがるです。なまら文章が読みやすくて上手なので、私もハマっちまうのですよ!」


 本作を二十話程まで読むと話数のルールが割と自由に掲載されている事に気づく。推敲の結果であると思うが、ちょうど面白いところで切ってあるのだ。一般的に携帯小説と違いWeb小説は単行本程ではないが一話を4000から10000文字程度に纏めると読まれやすい傾向がある。

 方や携帯小説はあのガラケーで読まれていた為、とにかく文字数は少なめで書かれていた。本作は携帯小説ほど短くはないが、Web小説の読まれやすいと一般的に言われる文字量の時もあれば若干少なめに掲載されている。


「まぁあれなのですね。文章を書くことも好きなんでしょうけど、本当の意味で読者を楽しませる事に特化されていると言えるのです……実際に読み直して、クソおもしれぇーのですよ」


 汐緒はにんまりと口元が緩む。最初、このマフデトは汐緒の事をど素人と言ってのけたのだ。マフデトさんを満足させるにたる作品を選択できないと……汐緒は完全勝利したわけで、入店時のマフデトの言葉を尋ねる。


「マフデトさん、なんでも言う事を聞いてくれるでありんすな?」

「…………し、しゃーねーのですよ。なんですか? 聞いてやるですよ汐緒兄様」


 汐緒は少し氷に雫がついたボトルクーラーに一本のボトルを突っ込んだ。


「じゃあ、マフデトさん。今日一晩当店のボーイをしてもらうでありんす! 大友くんが風邪を引いて出られなくなったのでお願いしたいかや」


 そう言って汐緒はこの店の制服をマフデトに渡そうとするのでマフデトさんはそれをお断りする。


「私は、古書店『ふしぎのくに』の店主なのですよ! この制服で働くのですよ!」

「軍服って……コンセプトカフェみたいでありんすな……あぁ、大友くんもメイド服で働いてるかや、まぁいいでありんすよ。こちらを準備お願いするかや」


 ブックカフェ『ふしぎのくに』は昼間は中高生をターゲットとしたカフェだが、夜はお酒を出すカフェバーに変わる。


「酒を飲んでWeb小説の話をするなんて、『おべりすく』の兄様や姉様……あとクソ母様やクソ神様達みてーですね……なんですかこれ? シャンパンです?」

「違うかや。同じスパークリングワインでもフランチャコルタでありんすな! 本作を楽しみながら飲むのにフランチェスカに名前も似ているのでいいネタになるかや」


 マフデトさんは今から飲食に関わるわけで、前髪にピンを三本つけると軽くメイクをしてカウンターに入った。


「本作の話をしながら酒を飲ませるなら、スペインのワイン。シェリーでも出せばいいんじゃねーですか?」


 お酒なんて飲まない未成年のマフデトさんが適当な事を言っていると、夜のお客さんが来店した。


「こんばんちわっす! 汐緒さん」

「こんばんわなんな! 汐緒たん」


 夜の帳と共に、アンダーグラウンドな二人が席につき……おっと今回はお時間のようです。

 今月の紹介作品は『見習いシスター、フランチェスカは今日も自らのために祈る 著・通りすがりの冒険者』なんな! 沢山募集のあった中で、ジャンルとしてはもっと俺TUEEEEEE的な作品が実はあったんな? でもこちらを選んだ理由は、単純に面白かったん。今回の選ぶ基準が、当方の単純明快な作品が好きな元メンバーの為に選んだ中で多分、彼が一番ハマるなと思ったんな! と言うか、普通にヘカ達もハマったんな! どこから読んでも割と楽しめる作りに、嫌味のないキャラクター、そして完璧ではないけれど、こんな友達いが欲しいと思えるフランチェスカ、物語としての完成度は本当に高いんな! まぁ、天才美少女作家(自称)のヘカ程ではないんけどな!


 今月は夏休みも終わったり、継続したり、自粛で暇してるみんなと一緒に読みたいんよ!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 読んでいただき、また作品紹介ありがとうございます! こんな風にストーリー仕立てで紹介してもらうの初めてなので新鮮な気持ちです。 亡きご友人のご冥福をお祈りします。
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