作品に大事な事“面白い“と言う事
さて始まりました! ラムネ競走。
1周400M、今回はどんなドラマを私たちに見せてくれるでしょうか?
走者は、一番神様、銭湯で鍛えたラムネの早飲みには定評があります。小さい割に足も速いですね。いち早く平均台コースに突入です。
続いて、神様の動向を落ち着いて観察している黒い稲妻こと、二番ブラックサンダー好きのヘカさん。ゴスロリは走りにくいのではないか? そんな我々を嘲笑うかのように素晴らしフットワークです。
遅れて三番、我らがセシャトさん。今回の為に用意したスポーツウェアにあざとさが滲み出ている。格好から入るが二番ヘカさんとの距離は縮まらない。さらに後方、四番トトさん、コースアウトをして女性客に楽しそうに話しかけている。これは作戦でしょうか?
最後に五番、ダンタリアンさん、赤いワインの瓶を抱えてスタート地点で酔いつぶれている。前日相当飲んだんでしょうか? 迎え酒でパワーアップを図ろうとして自爆したようです。ですがあられもない姿、男性の観客はこう思ったんじゃないでしょうか? 一言、ありがとうございます!
レースに動きがあったようです。一番、神様が平均台で滑って脛を強打、泣き喚めいています。大丈夫でしょうか?
その横をヘカさんが神様を馬鹿にしながら華麗にスルーです。
ヘカさん、独走状態で網抜け地点へとジョイント。三番手、セシャトさん、神様の手を引いて一緒に平均台。四番トトさんは女性たちに囲まれて紅茶を淹れている。何をしにきたんでしょうね? 五番ダンタリアンさん、ありがとうございます!
おっとアクシデントです! 一番、ヘカさん、存在意味のないゴスロリが網に絡まって抜けられなくなりました。
その隙に神様とセシャトさんが追い上げる。
そう、この先はラムネがあります! これを飲んで残り100M全力ダッシュ、誰が考えついたかラムネ競争。素人にはおすすめできない故、オリンピックの競技にもなり得なかった。
ここで現在の順位を再度報告します! 一番、神様。二番、セシャトさん。腰に手を当ててラムネを飲んでいます。三番、ヘカさん。スタッフに手伝ってもらって網をようやく抜けた。炭酸飲料を飲ませたら彼女は怖いぞ! 急げ! 神様、セシャトさん! 四番トトさん、もう会場にすらいませんね。作戦でしょうか? 五番、ダンタリアンさん、ありがとうございます!
ついにヘカさんがラムネ地点に到着、神様、セシャトさんはビー玉に苦戦している中、ヘカさんはシュッポッとビー玉を落とすとしばらく目を瞑り、ビー玉を内部にひっかけて一気に行った! これはまさしくラムネの飲み方における至高の一つ、天城越えだぁああ!
速い! 速い! ヘカさんは、わずか数秒でラムネを飲み干すと走り出した。
これは勝負が決まったか?
いや、後ろから、来た! 銀髪の我らが王子! マフデトさんだ! しかし、ヘカさん譲らない、どっちだ?
ゴール直前、写真判定に持ち込まれます。
結果が出ました! 1着はヘカさん、2着は遅れて神様、3着セシャトさん。マフデトさんは参加すらしていなかったなぁ、何故王子はやってきた?
「林檎転生、書籍版、絶賛発売中なのですよ!」
「うぉおお何故だ! 五日分のお小遣いが500円になりよったぁああ!」
五日分前借りして神様はスクラッチを引いた。フレッサたちのように下から二番目くらいの当たりをひければくらいの気持ちで引いた結果5等が五枚、軍資金を十分の一に減らした神様。
「神様、気が済みましたか? お金というのものはせっせと稼いで増やすものなんですよぅ! しかしながら、このガチャを沢山フレッサさんが行うという展開はなんとも、チュートリアルが終わった後のボーナスガチャみたいですよねぇ!」
セシャトが傷心の神様にそう言うと、神様は100円玉を五枚握りしめてから話し出した。
「実際そうであろ? 大輔とグレダ、フレッサとダティル。本作における主人公達がようやく認識し今より本格的に物語が助走を始めるのだからな。ここまでは序章と言っても過言はなかろう?」
神様が健康的な足を伸ばしてそう言う姿は、先ほどまで五日分のお小遣いを失って泣きべそをかいていたちんちくりんには到底思えない程の説得力があった。
「ふむふむ、やはり神様もそうお読みになられますか、中編や長編に入る前の閑話代わりのコミカルなお話を挿入されるのか実にいいですねぇ!」
「そうだの。今は最も自由な創作があるとすればWeb創作があげられるからの、どうしてもこれらの話は尺の問題で省かれやすいから、こういう疲れた時に読めるような作品は大事だの、世界設定においてSランク冒険者になれる者は殆どいないというのもドラゴンの設定のくだりと同様非常に悪くないの!」
神様はポケットからうまい棒とあんず棒を取り出すと封を破って同時にパクリと食べる。この奇妙な組み合わせに関してセシャトは真似する事はないなと思いながら神様の話の続きを伺う。
「と、言いますと?」
「あんず棒は凍らせて焼酎と一緒に飲むとこれまた絶品なのだがな……まぁセシャトよ。貴様、Web小説読みすぎて逆に視野が狭くなったか? 物理法則を越えたキャラクター達、因果すらもねじ曲げる設定。だが、その根幹にある世界が変わっているわけではない。分かるか? 作者によるところも多いが、物語にはルールがある。こればかりは独自ルールだがの、ドラゴンは規格外、S級冒険者になる為の狭き門、物語の中心部を楽しむのも良いが、どんな基準がある世界なのか、それを理解して始めて中心部がより深みを増すものぞ?」
神様はそう言いながら、出目金の形をした大きながま口からワンカップの宝焼酎を自然に取り出したが、それをセシャトに自然に取り上げられる。
「何故だぁあ……」
「神様、盗賊を行なっていた人が、病気の女の子を連れてその日暮らし、中々に演目のようですねぇ。あと禁酒ですよぅ!」
「ミイラ取りがミイラになっとるだけだろ? まぁ、人間ってのは案外生悪説が正しいのかもしれんの、心を育てる、道徳なんて言葉があるくらいだしの、それ故に人間というのは美しいのかもの」
犯罪心理学の話になるので割愛するが、自責の念にかられ善行を積もうとする人間は救いがある。しかし犯罪者が犯罪という方法でしかそれを行えないのは、学もなければ人脈もなく何かを成すべく実績もない。
要するに、代わろうとする事に対して世界は優しくなく手遅れであるが故。
「なるほど、現実では犯罪を行う方が同じ犯罪を繰り返すのにも理由があるといことですね。ですが、本作は物語。ということですね?」
セシャトがそう言うと神様はあんず棒を向いて食べる。
甘ったるい、チープな匂いがかおる。
「そういうことだの。お人好しの大輔がおる。こういう、お約束が嫌いな奴はそうはいまい。しかしあれだの、この盗賊の“兄貴“もう少しまともな人生もあったろうにの、馬鹿と何とかの使い方を知らんのだろうな」
異様なまでに、有能な“兄貴“これも器用貧乏と思えば、一連の人生から少女ベリィとの出逢いに繋がるわけで……
即ち。
「ですが、だからベリィさんと出会い、大輔さんと関わる運命にあったのかもですねぇ!」
実に気持ちよくまとめられる。善行と犯罪を秤にかけ、大輔は大岡越前よろしくな名裁きを行う。このドロンジョ一味のような小悪党キャラというものは時代を選ばない。
「セシャトよ。大輔が取り込んだシラター。造語だろうの。おそらくシラとターで分けて、知識や叡智の集約みたいな意味で付けたのかもの、知っとるか? 寄生生物というものはなぜ他者依存するか? 広い意味でいえば托卵も寄生生物だの」
「どうでしょう? 効率がいいからでしょうか?」
「うむ、びっくりするくらいダメダメな答えだの! 生命体としては新しいと思うべきだの。外敵が多すぎて、寄生して生きていくという生存戦略をとっているとも言えなくはないが、シラターは無尽蔵に増えていく、かつ強力な魔物らしい、即ち。次世代の万物の頂点、要するに人間あるいは宿主になり得る生物を淘汰し次の時代を生み出そうとするシステムの一つだの。粘菌などがそうだの、村一つ食ってしまう化け物なら国、世界くらいは喰らうだろうの。要するに、大輔の次のクエストは、小規模ながら人類とシラターとの代理戦争だの。まぁ大輔は林檎だがの」
ここまで作品を勝手に想像して読むことができれば実に楽しいだろう。
こちらの意見は某生物学の方の意見を参考に古書店『ふしぎのくに』解釈にて再編集させていただいている。その人物からすれば、食べられる為に存在するリンゴが意思を持ち、行動しているというのは、飽食へのアンチテーゼであると語っていた。
どこのお話かは知らないが、贅沢はリンゴを沢山食べられる事らしい。
「しかし、ダティルさん。実に悟ってますよねぇ……いくら年齢が言っていても自分の葬式をして過去との訣別。中々できるものでもないですね」
「まぁ、待たせる者が少ないという部分が良かったのかもの。これが妻に子でもいたら、ダティルはホルマーとしてその人生を送ったろうし、そして大輔がおるとしても危なっかしい一応命の恩人フレッサもおるしな。言っておるだろ? チートがあるので大抵の魔物に襲われても大丈夫だというやつに指摘をしとる」
この手のアンチテーゼは最近流行りではないが、かつてのファンタジー作品で一時期お約束的にメインキャラクターが死亡する展開があった。それもかなりどうでもいい死に方をする。強力な魔物を単独で狩れるような冒険者が、遅効性の毒で死んだり、身内に刺し殺されたりと多岐にわたるが、あんな凄い奴が、最も簡単にといった展開である。
今の読者はストレスへの耐性が極めて低いのでこの手の展開は嫌われる。
大抵主要メンバーが死亡しても何らかのイベントによって復活したりする流れをあらかじめ用意しておく必要があったりするのだ。
「と言う事はあれですか? 注意勧告をすると言う事で、予防線を張っているとかそう言う感じですか? いくら何でもそこまでいくと何とも言えない気分になってきますねぇ」
「本作はギャグ要素が大きいからの、そこまでの大きな意味はなかろう。一つのいちゃつきであろう。本作はなんせ主人公がリンゴだからの、ダティルとフレッサは本作においての舞台装置的な意味はあるかの」
大輔とグリダだけで話が延々と続けばある種のシュールさで一部の特殊思考を持つ人々には沸くかもしれないが、作品を読んでいるのは万物の霊長であり、経験を想像できる文化を持つ人間なわけだ。
フレッサとダティルの行動や反応はすっと入ってくるだろうし、リンゴと杖の会話というよく考えると理解を超えた部分、人間は不明な事にストレスを覚えるが、それを受容できるようになる。
「フレッサさんとダティルさんがいる事で、世界と繋がりクエストが生まれる事はわかるのですが、そうなると大輔さんとグリダさんは一体……」
「語り部であり、観客であり……大小道具、内部要員ってとこかの、大輔とフレッサは読者目線で語り、時にフレッサとダティルのサポートとして道具やスキルで手助け、そしてことの顛末を見守るわけだの」
本作のような形式であると一人称という文章表現は実に映える。
説明が過ぎると読み疲れると一般的には言われるが、本作に関して言えば大輔は説明をし続ける必要があり、それこそが本作の小説の体を成す黄金パターンと言えるだろう。
「実に面白い作品だのぉ。ひとつ間違えると扱いに困りそうだが、ガトーの奴はうまく進めておるよな」
「ガトーさんはこのあたりのテクニックは非常に上手ですからねぇ。面白いというのは古の時代から作品において大事なファクターです!」
二人は作品に想いを馳せていたが、神様のお腹に住まう巨大な魔物がその雄叫びを上げた。
ぐぅおおおおと。
「セシャトよ、腹が減らんか? せっかく金沢まできたのだ。カレーでも食いにいかんか?」
「むむっ! 金沢カレーですか? いいですねぇ! では続きはカレーを食べながら……という事で」
古書店『ふしぎのくに』のメンバーはカレーが好きである。本を読みながら食べても唯一行儀が悪いと言われない食べ物カレーライス。
各地でご当地カレーライスを食べ歩くのもまたセシャトさんの趣味のひとつであもあった。
「どこにいくのだ? ゴーゴーか?」
「ふふふのふ、そうですねぇ! ここはチャンピョンでどうでしょうか?」
神様とセシャトさんは手を繋いで、金沢カレーのお店に向かった。
さて、皆様 久しぶりの紹介小説は楽しめていますでしょうか? そして紹介作品の方もお楽しみ中でしょうか? ガトーさんの作品テクニックは、とにかく面白いと言う創作物にとっては最もたる強みがありますよね? 今回、私たちはどういう面から作品を楽しもうか? と考えた時、邪推せずに思った通りのことをブレインストーミングして、それをあとはライターさんに丸なげしよう! と言うとんでもないダンタリアンさんの提案でした! もちろん識者の意見も取り入れて形にしていきましたが、いい感じに進んでいるんじゃないでしょうか? 私はこの8月、アイスクリームに関するものをどうやら8月15日時点で30個程食べており、ヘカさんはエナジードリンクを1ケース、システム部の方はビールを200本程消費したそうです! えぇ、これはよくない生活だと私は思います! みなさま、まだまだ暑い日が続きますが、体調を崩さないように!
ガトーさんの作品を楽しんで、新学期を迎えましょうね!




