ラノベのテクニックを語る神様とセシャトさん
王が座るような豪華な椅子を背もたれに、マフデトさんはワイングラスに注いだリンゴジュースに舌鼓をうつ。
「私の出番がねーのですよ!」
そう言うマフデトさんにモップ掛けをしながら話しかける美少女、もといメイド服をきた少年・大友。
「いや、開店前の店に椅子持ち込んで何してんのお前?」
「大友! これは由々しき事態なのですよ! 私が今月の作品紹介のアポイント取りに行ったのに、私がいねーのですよ! きっと作者の奴も悲しみに打ちひしがれているに違いねーのです!」
ゴシゴシと床のモップ掛けを続ける大友。女子の服を着るのは自分の方が可愛くて似合うから、でも女の子好きという一番ダメな大友にマフデトさんは声を上げる。
「てめっ! 話聞いてるですか? リンゴジュースおかわりで! チェイサーに牛乳!」
「……面倒くさいなぁ……こういうとアレだけど絶対セシャトさんに紹介された方がみんな嬉しいって! だって、“セシャト“のWeb小説文庫だからな? マフデトのWeb小説文庫じゃねーじゃん!」
それを言われてマフデトさんはガシャん! とグラスを割ってしまった。
「大友、それ言ったらダメなのですよ! ……一応、本来はセシャトのWeb小説文庫はクリスのやつを救って完結してるのです。今はエンディングのその先なのです!だから今はAct Vorlesen。読み始める! なのですよ! って何しやがるです!」
大友はマフデトさんの髪の毛をいじって盛った。頭に林檎の木を乗せて見て、その上に小さな地球儀を……
「今のマフデトならマリー・アントワネットといい勝負すんじゃね!」
「うるせー! せっかく持ってきてやった書籍版てめーには貸してやらねーのです!」
現場からは以上です。本編をお楽しみください
「うむぅ、まさか卓球で優勝するとはのぉ!」
セシャトがぜひ行きたいと金沢城へとやってきたが神様はベンチに座ってで携帯ラジオでオリンピックを視聴していた。スマホでパシャパシャと写真を撮り、テンションを上げるセシャトが金鍔を購入して神様の元へと戻ってくる。
「ほぉ、この作者。必殺シリーズが好きなのか。藤田まこと。実は主役じゃなかったのに、人気がありすぎて主役に格上げされた最初のパターンかもしれんの」
実は中村主水さん初登場時は主役は念仏の鉄だったりする。あの普段のコミカルさと虎の会における二面性。昼行灯が恐ろしく人気を博し、作中で死亡するまで(平成版にも登場していたり、死亡確認が劇場版の為、パラレルワールド扱いとも言える)長い事主役を務めていた不動のドラマである。
「ふふふのふ! 時代劇とラノベは似通ったところがありますからねぇ! 私は死神派です」
「私は、仕事人のキャラなら俺TUEEEEEの体現者。全覚かの……にしてもフレッサはある種、お決まりの感じが時代劇キャラっぽいの」
神様はセシャトから金鍔と缶のお茶を受け取りズズズとすする。城を眺めながら茶菓子とお茶。ロケーションとしては十分だろう。
「アリの女王様。レイドボスみたいでワクワクしますねぇ! 私はこういうファンタジーのボス戦って結構好きですよぅ!」
あーんと金鍔を食べるセシャト。大きな紙袋一杯購入しているのである。彼女は一年に一回の旅行の時の為にお小遣いを積み立てこうして散財するときは思いっきりお金を使う。
そう、貯金できる人間のお金の使い方である。
「しかし、本作の女王。万策尽きたのか、少しばかりあれだの感慨深いの。雄のアリ五匹が最後の砦だ。蟻の巣が滅びる時をしっかり再現しておるのかもな。ガトーのやつ」
アリというか、昆虫は基本雌の方が大きい。
生存戦略によるところであり、結果として戦闘部隊は基本的にメスなのだ。世界最強の昆虫の一角であるスズメバチもメスしか毒針は持たない。雄は働き蟻、働き蜂としてコロニーのサポートに徹する。
が、それらが戦闘を行う時というのは、どうしょうもない緊急事態の時であり、大抵コロニーが滅ぶ時だ。
「なるほどですねぇ! それにガトーさんはしっかり回復魔法の脅威について書かれていますねぇ!」
度々当方で異世界ものを紹介する際、回復魔法は割と危険なものであると説明することが多い。色々パターンはあるのだが、生物である以上細胞分裂には限界があり、それを動かすのには少なからず生命エネルギー、寿命を削っているという事である。
「まぁ、攻撃魔法が効かないというだけという設定が面白いの。無効化の範囲にもよるがただの脳筋バーサーカーでしかないなら、最悪攻撃魔法無効化しててもその攻撃魔法の付与効果で殲滅できなくもなかろう。実際強いようで攻略方法はいくらでもある面白い設定だの。最初のボスキャラの調整としては花丸だの」
補足すると、昆虫らしい群での制圧に向いたスキルであるとも言える。命令形フェロモンというものを女王アリは出すのだが、それと絡めてあるのかもしれない。
「無双ものなのに、女王アリさんは大輔さんと互角に渡り合ってますもんね! そしてピンチになった時のお助け、悪くないですねぇ」
「あれだの……その時、不思議なことが起こった。だの」
神様は四つ目、セシャトは七つ目の金鍔に手を伸ばし、二人で笑い合う。この手の無双系や人外転生系は多かれ少なかれジョーカー、要するにご都合主義が存在する。それをねーよ! と思うのか、訳のわからない物に転生している時点でなんでもありだろ! と思うかでこの手の作品を好きか嫌いかが分かれる指標でもある。次次回に説明するが、認識のジレンマと当方が呼んでいる現象である。
「神様がチートを把握していないってなんだかみょうにリアルですねぇ!」
「貴様、私のことを遠回しに馬鹿にしておるのか? よかろう。聞こうではないか! 一年でも百年でもの!」
「ふふふのふ! ほらほら神様物凄い呪縛のカードさんがご説明してくれていますよ! 私はこういう全体的に説明してくれる作品はわかりやすくて好きですよぅ!」
神様はお茶の缶を揺らしてもう入っていないという事をセシャトに見せる。するとセシャトはバッグからもう一本お茶缶を取り出してそのプルトップを開けて渡した。
「呪縛のカードのぉ、絆と呪いは紙一重という事かの? 絆も深まれば愛となるし、離れれば哀になるものの。そういう意味では私と貴様、ヘカの奴。そしてトトは切っても切れぬ縁で結ばれておるの! まさに呪縛のカードだの」
「…………」
微笑んだままセシャトはうんともすんとも言わないので、神様はとりあえずお茶を飲んでから目を瞑ってもう一度セシャトをみる。
「…………」
「やめんか、3年越しの思春期か? 最近貴様。マフデトのやつに似てきおったの! まぁ元々のベースが同じだからの……」
ちなみに神様が作った店番がセシャトさんで、ダンタリアン氏が作ったのがマフデトさん。携帯小説時代に古書店『ふしぎのくに』店主であったダンタリアン氏が後釜にと用意したマフデトさんが現在のマフデトさんとどのくらい似ているのかは実装されなかった為、初期ダンタリアン氏しか知らない事実だったりする。
「それにしても神様……生きたまま火葬するというのは中々スプラッターですねぇ……昆虫は痛覚がないと言いますが、女王アリさんは知性がおありなのでなんとも言えないですね……」
「まぁ、描写まではされておらんからの。最近は妙に表現が厳しいから、“タオルケットをもう一度“的なカルト的人気のアマチュア作品が出にくい時代でもあるよの。この虫けらに関しては狩ろうとしたわけだからの、狩られる覚悟くらいはあろうよ。ちなみに女王アリが死んだ蟻のコロニーは大体壊滅するぞ。この前アリジェルで確認済みだ。時たま、メスのアリが女王になったりする事あるらしいがの」
指揮系統が完全に混乱し、さらにはコロニーの中核のスーパーコンピューターである女王アリが没した際、本作のように全滅することが多い。本作は異世界もので知性のある魔物、生存戦略が昆虫のそれよりも弱いと思うと実に悲しい性である。
本作はソシャゲ要素も入れてきて、テンションのベクトルも中々凄まじい。そんな心地よい支離滅裂なギミックを前にノンストップで読み進められるのはやはり魅力的だからなのだろう。
「このSSRの鎧。昔のロープレとかは、この類の不思議アイテムが多かったからの、作者の年齢を感じるの! ラスボスから手に入る最強装備とか、実際どこで使うのだ! みたいなの。まぁ一部のゲーム会社はクリア後のナイトメアモードみたいな方が本編だったりするがの、イセリアクイーンとか私は倒したことないぞっ!」
「…………なんの話ですか神様?」
「いや、気にするな。それにしても大輔の涙は林檎ジュースか、うむ。茶も良いが、リンゴジュースを飲みたくなってくるの! 私も若返ってしまうかもしれんの! かっかっか!」
目の前の神様はどう見てもちんちくりんである。そんな神様が若返ったらどうなってしまうのかと思いながらセシャトは金鍔をパクリと食べる。
「神様、亜竜ってなんでしょうね」
「竜の定義にもよるからのぉ、そもそも竜のイメージは日本や中国のあれがシルクロードからその他の国に言っておるのだ。ドラゴンという言葉もドラクル。よく分からない化け物という意味だからの、ドラキュラもドラクルからだから、怪物全般を言うのだ。本作においては前後関係から、ワイバーンやサラマンドラみたいなドラゴンの親戚みたいな連中を亜竜としておるの、一応ドラゴンは異世界物最強生物だからの」
本作においても竜、ドラゴンは魔物としての等級が別格である事が述べられる。物申したい読者もいるかもしれないが、やはりドラゴンは特別である事が嬉しいし好ましい。かの有名なドラゴンクエストも、日本版ウィザードリーとして竜王を探す旅という名目で作られ、我々は竜、あるいは龍。そしてドラゴンという生物に並々ならぬ憧れと畏怖を持っているのだ。
「のぉ、知っておるか? セシャトよ。ギルマスのパステークみたいなキャラっておるだろ? 剣を合わせれば人となりが分かるというキャラクター、あらゆる作品においてこの手の師匠キャラみたいなやつっておろう? 某歴史小説家が恐らく最初にこの手のキャラクターを造形してから日本ではあるあるネタになっておるのだ」
我々に歴史的曲解をさせてくれる作風の大先生というべきか、彼は不思議と説得力のある書き方をしてさも真実かのように筆を滑らせる天才である。現実では、長らく同じ窯の飯を食った間柄ならまだしも、親兄弟でもない限り武や芸才の良し悪しで人となりは絶対に分からない。
がしかし、武道や騎士道、その他芸才のよ何かを重んじる人たちのエキスパートを表現するのにこれらの表現は花形的であり、時代を跨いでも使われる手法である。
「あらあら、歌舞伎のお話ですか? 私はこういう年の功みたいな設定大好きですよぅ! この類の作品はどうしても主人公に匹敵する規格外のキャラクターが何名か必要になってきます。まずこのパステークさんのような師匠キャラですね。続いて、敵ではなく味方でもない友達くらいに位置するキャラクター、そして目的として倒すべきエネミーでしょうか?」
注目したいのはセシャトの言うヴィランではなくエネミーである。
一概には言えないが、ストーリー展開において主人公は自ら進んで問題に首を突っ込むか、巻き込まれていくかの二択になる。どちらかといえば大輔は巻き込まれ型の主人公なので、巻き込まれるフラグが必要になる。実際にはセシャトが語るプラス二人くらい登場する事になるのだろうが、排他的、あるいは同じ矛先で各キャラクターを動かせればある時は共闘や協力、ある時はお互いの目的の為に対立、また困った時の助力などに歌舞伎の演目のように使い回しと潰しが効きやすい。
「まぁ、私はこの作品の面白いところは異世界の子供も、ソシャゲのガチャ依存になるかもしれないという警鐘を鳴らしておるところなんだがの」
あらかた金鍔を食べたところで、死蔵抽選について神様はそう呟いた。日本人は遺伝的に世界でも有数な不安因子を多く持つ民族であり、ギャンブルにおける脳の報酬系とのシナジーが異常に強い。
知らない人もいるかもしれないが、日本は世界一のギャンブル依存症が社会問題になっている国である。
これほど自由に作品を書けるのもこの脳の報酬系がバグっている日本の土壌があってのことなんだろうと神様は宝くじ売り場を指差してセシャトに言った。
「私たちもスクラッチでひと勝負してみるかの?」
「……構いませんが、神様のお小遣いから引かせて頂きますね」
そう言ってセシャトが真顔で宝くじ売り場に歩いていくので、神様は顔面蒼白でこうつぶやく。
「……それはいかにであろ? のぉ?」
皆さん、8月も半分過ぎ去りましたが、いかがお過ごしでしょうか? コロナで暇ですか? じゃあどうでしょう。ガトラジとか聞いてみては!
今回の紹介作品の林檎転生とプラネット・アースの作者さんであるガトーさんはラジオ放送を行われていたりします。今回後書きを書いている僕は発足当初からいるメンバーになりますが、多分同時期くらいなんでしょうか? 同じく紹介系を行っていて、よく聞かせてもらっています。
今月、当方の紹介もラジオを行っていただきました。
その節は、ふしぎのくにを代表してお礼申し上げます。
当方は、紹介をしている側の為、極力。
前へ前へ、読んで読んで、紹介して紹介して!
とは言えないルールと言いますか、決め事がありまして、静かにしていましたが実際はかなり全員嬉しかったです。
僕個人としては……おっと申し遅れました! エンティティが“ふしぎのくに“内でも謎と言われています。トトです!
紹介している人たちで、何かイベントなんかできれば面白いなと思っています。
それでは、まだまだ林檎転生✖️プラネットアースの紹介は続きます!
次回も、どうぞいらっしゃいませ! ご主人様にお嬢様。




