最終決戦3
階段をおりた先でツノが生えている緑の長髪青年がこちらを見ていた。
機械の配線はまだそのままだ。
「オーナー……お疲れ様ですー」
ヤモリが小さな声で青年に声をかけた。袖無しの着物から鱗が所々混ざるたくましい腕が見える。
「家之守、来たか。後は……」
オーナーはヤモリを見た後にヒメちゃんに目を向ける。
「……流史記姫。内容はどれだけ聞いている?」
「……まあ。ほとんどじゃな。パァパ……龍雷水天は?」
「封印を解くために神力の提供をしてもらっている」
オーナーが指を指した方を見ると電子数字が変動する機械につながれた青年の姿が見えた。意識はない。
「パァパ! 天津よ、パァパは大丈夫なのかの?」
ヒメちゃんが心配そうにオーナーを仰いだ。
「彼の意思だ」
「なんと……?」
「龍雷が封印を解くと言った。同じ神力故、龍雷がヤツの神力を逆流させれば実は簡単に封印が解ける仕組みだ。ヤツの神力はだいぶん、竜宮に流した。龍雷はこの長い時間で神力を上げた。釣り合う。おそらく大丈夫だ」
「そうかの……」
不安になったヒメちゃんがわずかに神力を出した。無意識に神力が出てしまった。
その神力はなぜか配線に入り、イドさんの神力と混ざってしまった。
「か、勝手に吸い込まれてしもうた!」
「……流史記姫……まさかまだ……」
「な、なんじゃ?」
ヒメちゃんがオーナーに尋ねた刹那、地響きと共に床にヒビが入った。
「わあ! な、なに?」
ヤモリが悲鳴を上げ、おはぎは栄次に飛び付いた。
「下から凄まじい神力が……」
栄次がつぶやいた時、さらに床のヒビが広がり、その中から神力が吹き出した。
「……結界を張る」
オーナーが栄次達を守り、結界を張った。神力は少しだけ弱まった。
「これはなに?」
「ヤツの封印が解けた。まだ蛭子様がいらしていない……」
オーナーの発言で予期しないことが起こったのだとヤモリは思った。
「……栄次……来るよ」
ヤモリが栄次を軽く仰ぐ。
「ああ、来る」
栄次はもうすでに鋭い眼差しで刀に手をかけていた。




